尚が異世界から来たという話には、風影も我愛羅も、夜叉丸も、大して驚いた風では無かった。

時空間忍術と似通った物なのだろうと、大体想像がついたからだ。

世界そのものを超えるのは珍しいため、ある程度体調が回復した尚は、

風影と暗部数名に入念に取り調べられて、害が無いと判断された。

夜叉丸に、伸びた髪を切り揃えてもらっていると、風影に呼び出しを受けた。

「この里と、家に滞在する件については、要望に応えよう」

「ありがとうございます」

我愛羅の父であり、風影の羅砂（らさ）の言葉に尚はほっとした。

「ですが、ただで置いて頂くわけにもいきませんので、これを…」

羅砂の座る机に、コツンっと三つの清泪石を置くと羅砂が腕を組んだまま石を一瞥する。

「コレは…？」

不思議そうにしている羅砂に、尚は自分が持つ能力と、石について説明した。

「ほぅ…一種の血継限界、晶遁（しょうとん）と似通った能力というわけか…」

興味深そうに、それでいて珍獣を見る様な視線を向けられたが、

その手の視線には慣れているので動じる事は無いが。

「せめてもの気持ちです。お納めください」

深々と頭を下げる尚に、羅砂は満足気に頷いた。

「うむ、恥ずかしい話だが　この里はあまり裕福とは言えん状況にある。
正直この石は今の里の資金難を救ってくれるだろう。感謝する」

「そう言ってもらえると嬉しいです」

「…だが、少々貰い過ぎだ。これでは釣り合いが悪いな」

羅砂が席を立ち、窓から外を眺めながら思案して。

「何か必要な物があれば言いなさい。可能な限り揃えよう」

「ありがとうございます」

「いや　こちらこそ。こんな高価な物をもらって挙句に息子の世話までしてもらうのだから、
滞在ぐらい安いものだ」

話は終わり、部屋に戻るとずっと待ちかねていたらしい我愛羅が駆け寄って来た。