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新思潮
ゆめうつつ
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「…え」
漸く声に出てきた言葉は、たった一文字だった。
信じたくない、信じられない、これは嘘で、もしくは夢で。
朝起きたら普段通りだって知っている、だからどうか早く夢から醒めてくれ。
「久米」
「ああ、寛。夢の中でも君は君なんだね、彼女は違うのに」
「…久米」
「『貴方を想いながら眠りについたから夢で貴方に会えたのでしょうか。夢だと分かっていたら醒めなかったでしょうに』なんて誰が言っていた気がする。
確かに僕は彼女を想いながら眠りについたのかもしれないけれど、こんな夢なら早く醒めたいよ」
隣に立つ友人は、苦虫を噛み潰したような顔をして僕を見る。
「…最期のお別れだ、みんな順番に彼女に花を」
よく通る声で館長さんがみんなに伝える。
僕の手にある花は、彼女が好きだと言った花だ。僕の身に着けている紫のような色の可憐な花。
「司書さん、貴女はこんな真っ白な着物ではなくもっと似合う洋服があるでしょうに。
以前着ていた薄紫のワンピースなんて素敵でしたよ」
司書さんの前に立って話し掛けても、彼女は何も答えない。おかしい。彼女が僕を無視したことなんて一度もないのに。おかしい。彼女はこんなにも大勢の前で眠らないのに。
「…起きて下さい」
「久米、やめろ」
「何をするんだ、寛。邪魔しないで。彼女を起こさなきゃ」
何故か寛が僕の腕を掴んで動きを封じようとするけれど、それを振り切ろうと身をよじる。
「久米!目を逸らすな!司書は死んだんだよ!」
「嘘だ!彼女は生きている!それにこれは夢だろう!?僕は信じない!」
そうだ、司書さんが死ぬわけがない。
僕を無視するはずがない。
だって、こんなにも綺麗な顔をしているじゃないか。
「夢なんかじゃない!」
「どうして!」
みんなが僕を見ているのは分かっている。
でも、誰も止めようとはしない。ほら、みんな彼女が生きていると思っているから止めないんじゃないの?
「久米、落ち着くんだ」
「館長さんまで何を!?言ってよ、彼女は寝ているだけだって!」
館長さんが僕の両肩を押さえた。体格に見合った強い力で押さえられるけれど、僕だって生前は野球やゴルフをしていたし、今は普段から武器を持って戦っている。館長さんだって振りほどけ…
バチーンッ
そんな音が響いた。
「いい加減にしろ!」
「…あくたがわ、くん…」
「これは嘘でも夢でもない。本当は君だって分かっているだろう。
司書さんは、死んだんだ。僕達が理解出来ないくらいにアッサリと」
「…死ん、だ?」
「そうだよ、死んだんだ。それに、彼女は僕らみたいに世に名を残した文士じゃない、だから転生は出来ない」
「…嘘、だ」
彼女が死ぬわけがない。だって、まだあんなに若いのに。だって、まだ僕は彼女に伝えていない言葉がたくさんある。死ぬのはおかしい、迎えが早すぎる。
芥川くんに引っ叩かれたらしい頬を押さえる。
熱を帯びた頬はジリジリと痛む。どうしてここは夢なのに嘘なのに、僕の頬は痛いのだろう。痛覚がある夢なんて、現実みたいで不愉快だ。
「…ほら、花を持って。君の持つその花は、彼女が好きだと言っていた花じゃないか」
寛が僕の落とした帽子とペニチュアの小さな花束を拾う。
「…挨拶、してこい」
「…寛、わかったよ」
彼女は死ぬわけがない。けれど、芥川くんを見たらこれが本当に最期の別れなんだって嫌でも思わされた。
勿論、いま見ている世界は夢だからもう少ししたら僕は目覚めて、眩しい笑顔を振りまく司書さんに会えるわけだけれど。
そして、司書さんの好きな紅茶を2人で飲みながら談笑するんだ。
「…司書さん、貴女が好きだと言ってくれたこの花の花言葉はご存知ですか?
僕は貴女が以前この花を僕にくれたとき、期待してしまいましたよ。僕も同じ気持ちです、だから今日は僕が司書さんにこの花を贈ります」
僕は彼女の顔を見て言ったのに、彼女の瞳は閉ざされている。何も言わない司書さんは珍しい、いや、見たことがない。
僕は、ペニチュアの花を彼女の顔の近くに置いた。
「ただいまから故人との最期のお別れになります…」
暫くすると、見知らぬ女がそんなことを言った。見知らぬ男が彼女の眠る箱を動かしていった。ボタンを押した。
最期の別れなんてあるものか。
×××
いつになったらこの悪夢は終わるのだろう。
醒めることを願えど、何も変わらない目の前の世界。相変わらずみんなは司書さんを想って泣く。悲しむ。
気付けば彼女はその肉体を失っていたし、見られるのは写真に写った姿だけになっていた。
「南吉、大丈夫?」
「ダメ…でも賢ちゃんも大丈夫なんかじゃないでしょ?」
顔を覆って泣き出す2人を見ると胸が痛い。
「…秋声」
「なんだよ鏡花」
「コレ、使いなさい」
「…有難く使わせて貰うよ」
徳田さんの目元をハンケチで抑えた泉さんも目元が赤かった。
「アイツは何が好きだったかな…」
「志賀、僕にも手伝わせてよ」
「ああ、いいぜ」
普段通りの会話をしている様にしか見えない白樺派の顔に笑顔はない。
おかしい。夢が醒めない。寧ろ現実味を帯びてきている。
「新しい司書を迎えるかどうか等のこの図書館の今後については政府と相談するから暫く待ってくれ。その間、有碍書は別の図書館に任せるから君達は潜書しなくていい」
「わかった。何かしておくことはあるか?」
「特にないな。心の傷を癒すのに時間を使ってくれ。館外への外出も許可されているが、問題を起こさないようには注意してくれよ」
「勿論そのつもりですよ」
「人間とは脆い者だニャ。…暫く図書館を任せた、吾輩達は行ってくる」
「ああ、我らに任せよ」
館長さんと猫が、夏目先生と幸田さん尾崎さん森さんと話していた。
…司書は彼女だけだから、新しい司書なんていらないのにね。
食欲はなくても食堂に姿を見せないと心配されるので渋々食堂に向かうと、そこに司書さんの姿がなかった。
ご飯の時間を大切にする彼女がいないことを不審に思い、自分の夕飯も取らずに司書室へ向かう。
もし、彼女も夕飯を食べていなかったら一緒に食べられるからね。
コンコン
「…失礼します、久米です」
ノックをしても珍しく返事がないので勝手に部屋に入る。
「…あれ、おかしい」
いつもここにいるのに。
もう日が暮れたから中庭には居ないだろうし、談話室の電気も点いていなかった。彼女はいつも夜まで自室には帰らない筈だから、絶対に司書室にいる筈なのに何故かいない。
お手洗いにでも行っているのだろうか?
ふと机上の花瓶に目がいった。花が好きな彼女はいつも机上に綺麗な花を飾っていたのに何故かいまある花は萎れていた。不思議に思いつつも花瓶の水を変える。
そんなことをしながら彼女の帰還を待っていても、彼女はいつまで経っても帰ってこない。
コンコン
ノックの音がした。きっと彼女だ。
「おかえりなさい、司書さ…」
「…司書じゃなくて悪かったな、やっぱり此処に居たのか」
「…寛、司書さんを見ていない?」
「…だから言ったろ、アイツは死んだって」
「なんで…」
僕はそんな嘘を信じない、そう反論しようとしたのに。
寛の頬に流れた涙を見たら何も言えなくなくってしまった。
「…寛?」
僕は転生してから寛の涙を見たことがあっただろうか。
「…悪い、今はお前に手を差し伸べられそうにない。すまん、また後でな」
「…寛…?」
くるりと背を向けて去ってしまった友人の背は追えなかった。
脚が動かなかった。脚は動かない癖に、心は酷く動揺して、僕の目からも涙が溢れてきてしまった。
困る、泣いて仕舞えば彼女が死んでしまったことを認めている様じゃないか。
だから泣きたくなんてないのに、脳裏に浮かぶ芥川くんと寛の辛い表情で僕の涙腺が緩んでしまった。
いままでこの世界は夢だと信じ切っていたから、涙なんて出なかったのに。
「…置いて行かないでください。必要と、してください…頼ってください…どうして、どうして」
溢れ出した涙は引かなくて、視界は一気に歪んでいった。彼女が愛用していたソファに身を委ねると、彼女の香りがして余計に涙が溢れた。
僕は確実に頼られていた。甘えられていた。必要とされていた。それなのに、彼女が居なくなるとその事実は簡単に信じられないものとなってしまった。
『久米先生といると心がやわらぎます』
ふわっと笑ったときの笑顔が素敵で、そう言いながらくれたペニチュアの花を僕は嬉しさのあまり押し花にした。
花言葉を調べ、期待で胸をいっぱいにして、行動には移さなかった後悔。
他には何も要りません。
名声も傑作もお金も何も要らない。ただ、彼女と幸せになりたかっただけなんです。許してください、彼女を返してください。
締め付けられる様な胸の痛みと、溢れる涙で呼吸が苦しい。
好きなんです、彼女のことが。
でも僕が行動に移さなかったせいで、僕と司書さん2人だけの思い出なんて何もない。
自分の臆病さも存在も全部嫌になるのに、僕はこれからも侵蝕者の脅威から文学が守られる日まで生きて行かなくちゃならない。
ごめんね、司書さん。
.
漸く声に出てきた言葉は、たった一文字だった。
信じたくない、信じられない、これは嘘で、もしくは夢で。
朝起きたら普段通りだって知っている、だからどうか早く夢から醒めてくれ。
「久米」
「ああ、寛。夢の中でも君は君なんだね、彼女は違うのに」
「…久米」
「『貴方を想いながら眠りについたから夢で貴方に会えたのでしょうか。夢だと分かっていたら醒めなかったでしょうに』なんて誰が言っていた気がする。
確かに僕は彼女を想いながら眠りについたのかもしれないけれど、こんな夢なら早く醒めたいよ」
隣に立つ友人は、苦虫を噛み潰したような顔をして僕を見る。
「…最期のお別れだ、みんな順番に彼女に花を」
よく通る声で館長さんがみんなに伝える。
僕の手にある花は、彼女が好きだと言った花だ。僕の身に着けている紫のような色の可憐な花。
「司書さん、貴女はこんな真っ白な着物ではなくもっと似合う洋服があるでしょうに。
以前着ていた薄紫のワンピースなんて素敵でしたよ」
司書さんの前に立って話し掛けても、彼女は何も答えない。おかしい。彼女が僕を無視したことなんて一度もないのに。おかしい。彼女はこんなにも大勢の前で眠らないのに。
「…起きて下さい」
「久米、やめろ」
「何をするんだ、寛。邪魔しないで。彼女を起こさなきゃ」
何故か寛が僕の腕を掴んで動きを封じようとするけれど、それを振り切ろうと身をよじる。
「久米!目を逸らすな!司書は死んだんだよ!」
「嘘だ!彼女は生きている!それにこれは夢だろう!?僕は信じない!」
そうだ、司書さんが死ぬわけがない。
僕を無視するはずがない。
だって、こんなにも綺麗な顔をしているじゃないか。
「夢なんかじゃない!」
「どうして!」
みんなが僕を見ているのは分かっている。
でも、誰も止めようとはしない。ほら、みんな彼女が生きていると思っているから止めないんじゃないの?
「久米、落ち着くんだ」
「館長さんまで何を!?言ってよ、彼女は寝ているだけだって!」
館長さんが僕の両肩を押さえた。体格に見合った強い力で押さえられるけれど、僕だって生前は野球やゴルフをしていたし、今は普段から武器を持って戦っている。館長さんだって振りほどけ…
バチーンッ
そんな音が響いた。
「いい加減にしろ!」
「…あくたがわ、くん…」
「これは嘘でも夢でもない。本当は君だって分かっているだろう。
司書さんは、死んだんだ。僕達が理解出来ないくらいにアッサリと」
「…死ん、だ?」
「そうだよ、死んだんだ。それに、彼女は僕らみたいに世に名を残した文士じゃない、だから転生は出来ない」
「…嘘、だ」
彼女が死ぬわけがない。だって、まだあんなに若いのに。だって、まだ僕は彼女に伝えていない言葉がたくさんある。死ぬのはおかしい、迎えが早すぎる。
芥川くんに引っ叩かれたらしい頬を押さえる。
熱を帯びた頬はジリジリと痛む。どうしてここは夢なのに嘘なのに、僕の頬は痛いのだろう。痛覚がある夢なんて、現実みたいで不愉快だ。
「…ほら、花を持って。君の持つその花は、彼女が好きだと言っていた花じゃないか」
寛が僕の落とした帽子とペニチュアの小さな花束を拾う。
「…挨拶、してこい」
「…寛、わかったよ」
彼女は死ぬわけがない。けれど、芥川くんを見たらこれが本当に最期の別れなんだって嫌でも思わされた。
勿論、いま見ている世界は夢だからもう少ししたら僕は目覚めて、眩しい笑顔を振りまく司書さんに会えるわけだけれど。
そして、司書さんの好きな紅茶を2人で飲みながら談笑するんだ。
「…司書さん、貴女が好きだと言ってくれたこの花の花言葉はご存知ですか?
僕は貴女が以前この花を僕にくれたとき、期待してしまいましたよ。僕も同じ気持ちです、だから今日は僕が司書さんにこの花を贈ります」
僕は彼女の顔を見て言ったのに、彼女の瞳は閉ざされている。何も言わない司書さんは珍しい、いや、見たことがない。
僕は、ペニチュアの花を彼女の顔の近くに置いた。
「ただいまから故人との最期のお別れになります…」
暫くすると、見知らぬ女がそんなことを言った。見知らぬ男が彼女の眠る箱を動かしていった。ボタンを押した。
最期の別れなんてあるものか。
×××
いつになったらこの悪夢は終わるのだろう。
醒めることを願えど、何も変わらない目の前の世界。相変わらずみんなは司書さんを想って泣く。悲しむ。
気付けば彼女はその肉体を失っていたし、見られるのは写真に写った姿だけになっていた。
「南吉、大丈夫?」
「ダメ…でも賢ちゃんも大丈夫なんかじゃないでしょ?」
顔を覆って泣き出す2人を見ると胸が痛い。
「…秋声」
「なんだよ鏡花」
「コレ、使いなさい」
「…有難く使わせて貰うよ」
徳田さんの目元をハンケチで抑えた泉さんも目元が赤かった。
「アイツは何が好きだったかな…」
「志賀、僕にも手伝わせてよ」
「ああ、いいぜ」
普段通りの会話をしている様にしか見えない白樺派の顔に笑顔はない。
おかしい。夢が醒めない。寧ろ現実味を帯びてきている。
「新しい司書を迎えるかどうか等のこの図書館の今後については政府と相談するから暫く待ってくれ。その間、有碍書は別の図書館に任せるから君達は潜書しなくていい」
「わかった。何かしておくことはあるか?」
「特にないな。心の傷を癒すのに時間を使ってくれ。館外への外出も許可されているが、問題を起こさないようには注意してくれよ」
「勿論そのつもりですよ」
「人間とは脆い者だニャ。…暫く図書館を任せた、吾輩達は行ってくる」
「ああ、我らに任せよ」
館長さんと猫が、夏目先生と幸田さん尾崎さん森さんと話していた。
…司書は彼女だけだから、新しい司書なんていらないのにね。
食欲はなくても食堂に姿を見せないと心配されるので渋々食堂に向かうと、そこに司書さんの姿がなかった。
ご飯の時間を大切にする彼女がいないことを不審に思い、自分の夕飯も取らずに司書室へ向かう。
もし、彼女も夕飯を食べていなかったら一緒に食べられるからね。
コンコン
「…失礼します、久米です」
ノックをしても珍しく返事がないので勝手に部屋に入る。
「…あれ、おかしい」
いつもここにいるのに。
もう日が暮れたから中庭には居ないだろうし、談話室の電気も点いていなかった。彼女はいつも夜まで自室には帰らない筈だから、絶対に司書室にいる筈なのに何故かいない。
お手洗いにでも行っているのだろうか?
ふと机上の花瓶に目がいった。花が好きな彼女はいつも机上に綺麗な花を飾っていたのに何故かいまある花は萎れていた。不思議に思いつつも花瓶の水を変える。
そんなことをしながら彼女の帰還を待っていても、彼女はいつまで経っても帰ってこない。
コンコン
ノックの音がした。きっと彼女だ。
「おかえりなさい、司書さ…」
「…司書じゃなくて悪かったな、やっぱり此処に居たのか」
「…寛、司書さんを見ていない?」
「…だから言ったろ、アイツは死んだって」
「なんで…」
僕はそんな嘘を信じない、そう反論しようとしたのに。
寛の頬に流れた涙を見たら何も言えなくなくってしまった。
「…寛?」
僕は転生してから寛の涙を見たことがあっただろうか。
「…悪い、今はお前に手を差し伸べられそうにない。すまん、また後でな」
「…寛…?」
くるりと背を向けて去ってしまった友人の背は追えなかった。
脚が動かなかった。脚は動かない癖に、心は酷く動揺して、僕の目からも涙が溢れてきてしまった。
困る、泣いて仕舞えば彼女が死んでしまったことを認めている様じゃないか。
だから泣きたくなんてないのに、脳裏に浮かぶ芥川くんと寛の辛い表情で僕の涙腺が緩んでしまった。
いままでこの世界は夢だと信じ切っていたから、涙なんて出なかったのに。
「…置いて行かないでください。必要と、してください…頼ってください…どうして、どうして」
溢れ出した涙は引かなくて、視界は一気に歪んでいった。彼女が愛用していたソファに身を委ねると、彼女の香りがして余計に涙が溢れた。
僕は確実に頼られていた。甘えられていた。必要とされていた。それなのに、彼女が居なくなるとその事実は簡単に信じられないものとなってしまった。
『久米先生といると心がやわらぎます』
ふわっと笑ったときの笑顔が素敵で、そう言いながらくれたペニチュアの花を僕は嬉しさのあまり押し花にした。
花言葉を調べ、期待で胸をいっぱいにして、行動には移さなかった後悔。
他には何も要りません。
名声も傑作もお金も何も要らない。ただ、彼女と幸せになりたかっただけなんです。許してください、彼女を返してください。
締め付けられる様な胸の痛みと、溢れる涙で呼吸が苦しい。
好きなんです、彼女のことが。
でも僕が行動に移さなかったせいで、僕と司書さん2人だけの思い出なんて何もない。
自分の臆病さも存在も全部嫌になるのに、僕はこれからも侵蝕者の脅威から文学が守られる日まで生きて行かなくちゃならない。
ごめんね、司書さん。
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