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白樺派

ゆめうつつ

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みょうじ
なまえ
一人称

✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄

没日会イベントを元に妄想したものです。

文豪の「志賀直哉」は居ません。
白い本の中にいる、「吸血鬼 志賀直哉」に目を付けられた夢主の物語だと思って頂ければ・・(設定ガバガバ)。

致してはいないものの、生々しいシーンがあるためR18にさせて頂きました。
流血シーンもあります。

苦手な方はご注意ください。
読了後の苦情には対応致しません。

大丈夫な方のみ本編へどうぞ↓

✄--------------- キ リ ト リ ---------------✄



「今日も疲れた…」

とっくに日も暮れた夜の9時。街灯のない暗い夜道を一人で歩く女が居た。閑静な住宅街、カーテンの隙間から溢れる電気と輝く満月だけが夜道を照らす。そう、今日は満月の日。しかし、下を見て歩く女は満月などには気付かない。
下しか見ないから、背後から音もなく近付く男に気が付かない。

「…はぁ、遅くなっちゃったから晩御飯は抜こうかな…」
「きちんと飯は食わねえと体調崩すぞ?」
「そうですよね。でも作る気力がないんです…」
「そうか、冷蔵庫には何か食材はあるか?」
「ええと…お豆腐とお肉、あとは卵ときのこ類、牛乳…?この前お買い物したので結構あると思いま…え?」

女は振り返る。1人で帰宅していた筈なのに、いつの間にか誰かと喋っている。
聞いたことのない声。一瞬で血の気が引くのを感じながら、ここで死ぬことを悟って思わずしゃがみ込みそうになった。

「うお、大丈夫か!?」

男はしゃがみ込みそうになった女の腕を引いて、なんとか倒れない様に引きずり上げる。

「む、ちゃんと飯食ってるか?とにかく帰るぞ、飯作ってやるから」
「は…」

殺されるとばかり思っていた女は頭が真っ白になった。自分を殺すところか、晩御飯を作ることを申し出たのだから。

いや、若しかしたら家に上がった瞬間に首を絞めて来るかもしれない。隠し持った刃物で刺されるかもしれない。若くは金銭を要求されるかもしれない。いや、無理やり身体を求められるかもしれない。

嫌な予感がして、男に掴まれた腕を振り解こうとしても力で勝てる訳がなかった。

「んー…家、どっちだ?」
「…左」

自分の腕を引いて歩き出した男が交差点で道を聞く為に振り返った。

交差点にある信号と小さなコンビニ、そして満月に照らされた男の顔があまりにも整っていて、あまりにも好みで、あまりにも人の良さそうな雰囲気だったがゆえに、思わず素直に道を答えてしまった。

『どうせ貯金もないし彼氏もいない。殺されるならいっそタイプの男に殺されたい』そんなことを考えてしまった女は、自分の浅はかさに嫌気がさしたものの、整い過ぎた男の横顔を改めて見つめると全てどうでもよくなり、大人しく男に連れられて自宅までの道を歩いた。

男は自分のストーカーであったのかと考えたが、交差点がある度に道を尋ねるのでそうではないらしい。

「なんだ、結構良いところに住んでるじゃねぇか」

自宅マンションに着けば、男はマンションを見上げながらそう言った。
マンションの側にある街灯に照らされた男の着ている洋服はとても立派な作りで、女は少し驚いた。
恐らく、男は自分が住むこのマンションよりもずっといい所に住んでいるに違いないと確信した。

女の住むこのマンションは、社会人になり一人暮らしをする娘を心配した両親が選んだセキリュティのしっかりしたものだ。
防犯・防音設備は勿論、24時間対応してくれるセキュリティシステムもある。
最悪の事態が起こりそうになれば、部屋に備え付けられてある内線を使ってセキュリティ会社の人を呼べば良い、そんなことをぼんやりと考えながら女は鞄から部屋の鍵を取り出す。

「アンタの部屋は何処なんだ?」
「…12階」

エレベーターに乗り込めば、男は12階のボタンを押した。他に誰も居なくて、エレベーターの中は2人きり。
明るいマンションの中は、男の顔の良さがよく分かる。はっきりとした目鼻立ちに、艶のある髪。長過ぎる脚は上等な衣服と靴に覆われている。

無言のまま12階に着き、女は躊躇うことなく部屋の鍵を開けて中に入った。男も続いて部屋に入る。そして、鍵を掛けた。ご丁寧にチェーンまで。

ガチャリと鳴る音に不安が過ぎる。
脅される、殺される、犯される。
女の頭の中は警報がガンガンと鳴り響くけれど、疲れと男に対する好奇心でそれを無視した。

まず脱衣所に行って雑にスーツを脱ぎ捨て、ブラウスやストッキングを洗濯機に放り込む。手洗いうがいを済ませてコンタクトレンズを外し、洗浄液に漬ける。
そのまま濃いアイメイクをコットンに浸したポイントメイクリムーバーで落として、部屋着に着替えた。

女がリビングに行くと、男はキッチンを漁っていた。

「…そんなとこに何も隠してないですよ」
「は?何言ってんだ、飯作ってんだよ」
「本当に作る気?」
「当たり前だろ、アンタお腹空いてるじゃねぇか」
「…」
「とにかく待ってろ、作るから」

男はそう言うと、再び冷蔵庫を開けて中を漁る。女はよく分からない現状に軽い頭痛を覚えたものの、考えないようにしてソファに身を沈めた。

『殺すなら早くすれば良いのに』そんなことを思いながら、テレビを点けた。

「ほら、出来たぜ」
「…美味しそう」
「だろ?」

15分程して、男がトレーに乗った料理を持って女の元へ来た。ニカッと笑った男はやはり目が眩む程に綺麗で、あまりの眩しさに女は目を逸らした。

「ほら、食え食え」

机に料理を乗せた男は、スプーンを女に渡す。

「そんなに警戒しなくたって、毒なんて入れてねえよ」
「…頂きます」

男のその言葉を信用して、湯気の立つオムレツにスプーンを刺す。ふわふわのオムレツは、中からトロットロの卵が溢れて来て、きのこと牛乳で作られたホワイトソースに絡む。

「…美味しい!」
「だろ?ほら、スープとサラダも作ったから」
「こんなに美味しいの初めて…」

今まで食べたどんなお店のものよりも美味しいオムレツに感動した女の顔からは、労働による疲労は消えていた。
ただ目をキラキラと輝かせながら、男が作った野菜たっぷりのスープとサラダも口にしていた。そして、男は笑顔で食事をする女のことを黙って見ていた。

×××

「ご馳走さまでした!すっごく美味しかったです、ありがとうございました!」
「おう、見てるこっちも嬉しくなる食べっぷりだったな」

男は食べ終わった食器を重ね、シンクに運んだ。洗いやすいように食器を水に浸すことも忘れない。

「それで」
「…大金はありませんよ」

リビングに戻ってきた男は、ソファにボフッと勢いよく座り、女に身体を寄せる。そして、女のシャープな顎を掴んで自分の方に向かせる。

「ははっ、俺が欲しいのは金じゃない」
「…じゃあ身体、ですか?」
「んー、まあ、正解っちゃ正解、かな?」
「スタイルは自信ないですけど」
「襲って欲しいなら抱いてやるけど」
「ち、違います!」

男は怪しく笑い、テレビを消した。
舌舐めずりをした姿が酷く妖艶で、女は背中がゾクゾクとしたのを感じた。

「名前は?」
「…牡丹
「そうか、牡丹か。いい名だ」
「一体な…っ!?」

女が口を開いている状態で、男は女の顔を押さえて口付けた。

「ん…っ、ふっ」

開いた口に舌をねじ込み、女の口内を蹂躙する。舌を絡めながら唾液を送り込む。どうすることも出来ない女は、混ざった唾液を飲み込むしかなかった。
更に男は、深い口付けをしながら、女の部屋着の上まで閉められたジッパーを胸の辺りまで下げた。

「…はっ、な、何…」
「キス」
「や、そ、そういうことじゃなくって…!」
「俺、赤ワインが好きなんだけど、たまには本物の血が欲しくなるんだよな。なるべく痛くないようにしてやるから」
「え?」

男は、牡丹の肩を押さえて肩に掛かった部屋着を下にずらす。そして、女の耳下に舌を当て、首筋から鎖骨まで舐める。

「んっ、あっ、ちょっと…」
「美味そう」
「え?…痛っ!」
「大丈夫だ」

右の鎖骨を丁寧に舐めたと思えば、男はそのまま女の首筋に歯を立て、噛み付く。

「痛…あっ、あぁぁんっやっ、あんっ」

男は、人より尖った犬歯を女の柔肌に突き立てたと思えば、そのまま強く歯を当て、出血させた。
女の白い肌を、赤い血が彩る。その光景に男はウットリとした表情を浮かべた。
そして、溢れた血を吸いながら更に深く歯を立てる。

「いたぁい…んぁっ、やだ…なんで…んんっ」

男が血を吸うたびに、室内にはジュルジュルという音と、女が喘ぐ声が響く。

「あ~っ、あっ、あっ、やぁっん、だめ、イく………あぁぁっ!」

女がビクビクと身体を震わせ、血を吸われるだけで達した後、男は女の首筋から顔を離した。

「痛くないように唾液を飲ませたんだが…飲ませ過ぎたかな」
「あっ…なんなのよぉ…」
「暫くは貧血でフラつくからきちんと鉄分補給しろよ?ちゃんと出来てたらまた来るから」
「も、もう来ないで…」
「酷えこと言うなあ、次はアンタを抱くからな」
「…んっ」

男のその言葉だけで快感が女の腰に来る。
目を合わせるだけで蕩けそうな感覚がするものの、快感と貧血で女は立つことすら出来ない。

「…またな、牡丹
「…はぁ…アンタ、誰なのよ…」
「ああ、そうだな…志賀直哉、とでも名乗っておこうか」
「…シガナオヤ?」
「またな」

志賀は牡丹の頭を撫で、今度は軽い触れるだけのキスをした。

「…鉄の味…」
「悪いな、血を飲んだばかりなんでな」

申し訳なさそうに笑った志賀は、部屋の窓を開けて飛び降りた。その姿に牡丹は驚いたが、次の瞬間に志賀がマンションからマンションに飛び移る姿を目にして、目を瞑った。

「…酷い夢」

まだ牡丹の身体は志賀に与えられた快感が残り、口の中は苦い血の味がしたままだったけれども、達した気怠さからそのまま眠りに就いた。



本当に、また志賀と会うことになるとは知らずに。


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