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自然主義
ゆめうつつ
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深夜2時。
殆どの者が寝静まった頃、帝国図書館の食堂はほぼ毎日電気がついている。
誰かが消し忘れたのでもなく、食堂職員が仕込みをしているのでもなく。
「あ~っ、深夜のご飯って何でこんなに美味しいの…!」
何故電気が煌々と点いているのかと言うと、ない人目を気にすることもなく、幸せそうにお酒を片手に様々な食べ物に手を伸ばす司書がいるのである。
「毎日デスクワークで頭使うもんね、頭使う仕事してると糖質が必要よね。夜中の糖質マジ最高」
彼女がお酒を飲みながらお菓子を、ホットサンドを、おつまみを食べる。食べる。食べる。
濃いめに味付けされたポテトチップス。
沢山のアボカドと海老にマヨネーズを思う存分掛けて作ったホットサンド。
湯通ししたキャベツにごま油と塩昆布を好きなだけ掛けた無限キャベツ。
スーパーで半額になっていた消費期限間近のチョコレートケーキ。
冷凍庫で眠る、脂肪分たっぷりのアイスクリーム。
当然、寝る直前に食べて仕舞えば太る。
しかし、ストレスから解放され、食を謳歌する彼女にとってカロリーなどは問題ではない。
夜食が習慣になって、お腹周りも腰回りも以前よりもぽよんとふっくらした。
胸だけに脂肪が行けば良かったのだが、現実はそう甘くない。
昼間、増えた体重に絶望し、ダイエットを試みるも1週間と続かない。
自分に甘い司書は、直ぐに糖質の依存性に思考を奪われ、夜中暴力的なカロリーに溺れる。
「んふっ、明日は何たーべよっ」
「まだ食べるつもり?」
「!?」
突如、聞こえるはずのない声が司書の耳に届いた。
驚きで身体がビクッとはね、全身から冷や汗を噴き出しながら恐る恐る後ろを振り返る。
勿論、口に運んだホットサンドはそのままで。
「太るよ」
「…………」
ジトッとした目で司書を見つめる徳田がいた。
「………一口いります?」
「………いや、それはいらない」
司書が自ら食べていたホットサンドを徳田に差し出すものの、断られる。
仕方なく司書はまた自分の口に運ぶ。途中、アボカドがペタリと一切れ机に落ちた。
「はぁ…夜中にこんなに食べてるの?」
「そのぶん夜ご飯セーブしてまふ」
「食べながら喋るな。セーブしたって今食べたら本末転倒だろう…」
徳田は司書の向かいに座る。
そして、自然な手付きで司書が乱暴に開封していたポテトチップスに手を伸ばした。
「…油っこい」
「現代のデブはこの油っこい薄切りのジャガイモを好むんですよ」
ホットサンドを食べ終えた司書は、お酒で喉を潤してから徳田同様にポテトチップスに手を伸ばす。
夜中に似つかわしくないバリバリという咀嚼音。
司書の手は止まらない。次から次へと油っこくて薄いジャガイモを口に運ぶ。
夜中に暴飲暴食を繰り返すことを文士達にバレるのは本意ではないが、バレてしまったのなら仕方がない。
司書は開き直ることにした。
「夜中にデブまっしぐらな食事をするのが快感なんですよねぇ」
「…パリッ」
満足げに笑う司書の顔を見て、徳田も再度ポテトチップスに手を伸ばした。
「…まぁ、油っこいけど悪くはないかな」
「でしょ~。あ、徳田先生もお酒どうぞ」
「え?…あ、うん」
司書が戸棚から適当なコップを取り出し、お酒をなみなみ注ぐ。
「ささ、夜中の糖質祭りに乾杯!」
「…乾杯」
司書に甘い徳田といえど、彼女の健康を考えるとこの生活は辞めさせるべきだと思った。
「あっ、私はポテチはこの味が1番好きなんですよ」
「へぇ、色んな味付けがあるの?」
「はい!今度は別の物をお持ちしますね」
徳田は、司書よりもゆっくりとしたスピードで目の前のお菓子に手をつける。
徳田的にはこの脂っこいじゃがいもは美味しくない。
しかし、幸せそうに食べる司書を見れば、この薄切りじゃがいもが美味しそうに見えるのだから不思議である。
「この後はチョコレートケーキとアイスがあるんですよね、徳田先生には特別に半分あげます」
「いいのかい?君が食べたくて買ったんだろう」
「いいんですよ、バレちゃったし」
そうして、司書と徳田は他愛ない話をしながら暴力的なカロリーを摂取した。
×××
「あ、徳田先生」
「やあ司書さん」
ある日の深夜。食堂で2人が悪い顔でニヤリと笑う。
「私はフィナンシェです、勿論サンドイッチも作りましたよ」
「僕は師匠お気に入りの最中」
「お、今日は甘いものがメインですね」
「うーん、今日は日本酒にする?」
「いいですね」
机にお互いが持ち寄った食べ物を置いて、取り皿やグラスを用意する。
徳田に司書の夜中の暴飲暴食がバレたあの日以降、こうして2人は約束もせずに時々食堂に集まるようになった。
夜中の、約束のない2人の逢瀬。
司書にそんなつもりはなくとも、徳田は彼女と秘密を共有する特別感に浸りながら夜中に食堂を訪れる。
彼女の健康に悪いと思いながらも、司書の笑顔と優越感に溺れて今日も糖質を無駄に摂取する。
ああ、明日こそは健康的な物を持ってこよう。
そう思いながら、徳田は司書と共に最中を口に運んだ。
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殆どの者が寝静まった頃、帝国図書館の食堂はほぼ毎日電気がついている。
誰かが消し忘れたのでもなく、食堂職員が仕込みをしているのでもなく。
「あ~っ、深夜のご飯って何でこんなに美味しいの…!」
何故電気が煌々と点いているのかと言うと、ない人目を気にすることもなく、幸せそうにお酒を片手に様々な食べ物に手を伸ばす司書がいるのである。
「毎日デスクワークで頭使うもんね、頭使う仕事してると糖質が必要よね。夜中の糖質マジ最高」
彼女がお酒を飲みながらお菓子を、ホットサンドを、おつまみを食べる。食べる。食べる。
濃いめに味付けされたポテトチップス。
沢山のアボカドと海老にマヨネーズを思う存分掛けて作ったホットサンド。
湯通ししたキャベツにごま油と塩昆布を好きなだけ掛けた無限キャベツ。
スーパーで半額になっていた消費期限間近のチョコレートケーキ。
冷凍庫で眠る、脂肪分たっぷりのアイスクリーム。
当然、寝る直前に食べて仕舞えば太る。
しかし、ストレスから解放され、食を謳歌する彼女にとってカロリーなどは問題ではない。
夜食が習慣になって、お腹周りも腰回りも以前よりもぽよんとふっくらした。
胸だけに脂肪が行けば良かったのだが、現実はそう甘くない。
昼間、増えた体重に絶望し、ダイエットを試みるも1週間と続かない。
自分に甘い司書は、直ぐに糖質の依存性に思考を奪われ、夜中暴力的なカロリーに溺れる。
「んふっ、明日は何たーべよっ」
「まだ食べるつもり?」
「!?」
突如、聞こえるはずのない声が司書の耳に届いた。
驚きで身体がビクッとはね、全身から冷や汗を噴き出しながら恐る恐る後ろを振り返る。
勿論、口に運んだホットサンドはそのままで。
「太るよ」
「…………」
ジトッとした目で司書を見つめる徳田がいた。
「………一口いります?」
「………いや、それはいらない」
司書が自ら食べていたホットサンドを徳田に差し出すものの、断られる。
仕方なく司書はまた自分の口に運ぶ。途中、アボカドがペタリと一切れ机に落ちた。
「はぁ…夜中にこんなに食べてるの?」
「そのぶん夜ご飯セーブしてまふ」
「食べながら喋るな。セーブしたって今食べたら本末転倒だろう…」
徳田は司書の向かいに座る。
そして、自然な手付きで司書が乱暴に開封していたポテトチップスに手を伸ばした。
「…油っこい」
「現代のデブはこの油っこい薄切りのジャガイモを好むんですよ」
ホットサンドを食べ終えた司書は、お酒で喉を潤してから徳田同様にポテトチップスに手を伸ばす。
夜中に似つかわしくないバリバリという咀嚼音。
司書の手は止まらない。次から次へと油っこくて薄いジャガイモを口に運ぶ。
夜中に暴飲暴食を繰り返すことを文士達にバレるのは本意ではないが、バレてしまったのなら仕方がない。
司書は開き直ることにした。
「夜中にデブまっしぐらな食事をするのが快感なんですよねぇ」
「…パリッ」
満足げに笑う司書の顔を見て、徳田も再度ポテトチップスに手を伸ばした。
「…まぁ、油っこいけど悪くはないかな」
「でしょ~。あ、徳田先生もお酒どうぞ」
「え?…あ、うん」
司書が戸棚から適当なコップを取り出し、お酒をなみなみ注ぐ。
「ささ、夜中の糖質祭りに乾杯!」
「…乾杯」
司書に甘い徳田といえど、彼女の健康を考えるとこの生活は辞めさせるべきだと思った。
「あっ、私はポテチはこの味が1番好きなんですよ」
「へぇ、色んな味付けがあるの?」
「はい!今度は別の物をお持ちしますね」
徳田は、司書よりもゆっくりとしたスピードで目の前のお菓子に手をつける。
徳田的にはこの脂っこいじゃがいもは美味しくない。
しかし、幸せそうに食べる司書を見れば、この薄切りじゃがいもが美味しそうに見えるのだから不思議である。
「この後はチョコレートケーキとアイスがあるんですよね、徳田先生には特別に半分あげます」
「いいのかい?君が食べたくて買ったんだろう」
「いいんですよ、バレちゃったし」
そうして、司書と徳田は他愛ない話をしながら暴力的なカロリーを摂取した。
×××
「あ、徳田先生」
「やあ司書さん」
ある日の深夜。食堂で2人が悪い顔でニヤリと笑う。
「私はフィナンシェです、勿論サンドイッチも作りましたよ」
「僕は師匠お気に入りの最中」
「お、今日は甘いものがメインですね」
「うーん、今日は日本酒にする?」
「いいですね」
机にお互いが持ち寄った食べ物を置いて、取り皿やグラスを用意する。
徳田に司書の夜中の暴飲暴食がバレたあの日以降、こうして2人は約束もせずに時々食堂に集まるようになった。
夜中の、約束のない2人の逢瀬。
司書にそんなつもりはなくとも、徳田は彼女と秘密を共有する特別感に浸りながら夜中に食堂を訪れる。
彼女の健康に悪いと思いながらも、司書の笑顔と優越感に溺れて今日も糖質を無駄に摂取する。
ああ、明日こそは健康的な物を持ってこよう。
そう思いながら、徳田は司書と共に最中を口に運んだ。
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