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自然主義
ゆめうつつ
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「俺は美少女が好きだ!」
田山先生のこの言葉を聞くたびに、私の心は痛くなる。
図書館の何処からか聞こえてくる先生の声。
先生は、『美少女が好き』なのであって、それ以外に分類される女は好きではないのだろう。
この図書館に常駐する女性は私1人しかいない。
私がタイプの可愛い女の子だったら、田山先生はわざわざ敢えてこの様な言葉を口に出さないだろうに。
彼への申し訳なさと同時に、悔しくなる。
どう頑張ったって、私は美少女にはなれない。普通の一般人顔だ。
私が可愛かったら、田山先生は私を好きになってくれたかな。
確かに、人間見た目が9割だとか言うけれど。
堂々と『美少女が好き』と言ってくれる潔さが大好きだけれど。
私、どうしたら可愛くなれる?
鏡に映る自分の顔が、なんか可愛くない。
髪型とメイクで雰囲気だけごまかしたい。
…けれど、誤魔化しきれてない私の顔。
鏡を見るたびに溜息が出る。可愛くなりたい。私を好きになって欲しい。
自分に自信が欲しいのに!
コンコン
「はい、どうぞ」
司書室の扉がノックされ、返事をすると入ってきたのは田山先生。
あーあ、こんな時に会いたくないな。
泣きたい気持ちを抑え込んで、田山先生の顔を見る。
「なあなあ、これ」
「…口紅と頬紅?」
「ああ」
田山先生は、私に口紅とチークを差し出してきた。
「司書さんは、いつも桜色の口紅と頬紅を使ってるだろ?
これ、橙色のやつ。俺はこの前、風呂上がりの司書さんの顔を見て思ったわけ。
司書さんには、きっとこっちの色の方が似合うってな!」
向日葵のような笑顔を向ける田山先生。
そんなこと、思ってくれてたんだ。
少しでも私のことを考えてくれているって分かって、それだけで先程までの鬱な気分が少し晴れるのが自分でも分かった。
「なあ、付けてみてくれよ」
「え、あっはい」
早速 田山先生から頂いた口紅とチークを使う為、机の引き出しに入れていたクレンジングシートと手鏡を取り出し、口元と頬のメイクを落とす。
そして、オレンジを口と頬に乗せる。
「…わあ」
「やっぱりな!」
鏡に映る自分の顔は、ピンクを顔に乗せていた時よりも透明感が出て、私の顔に馴染んでいた。
「似合ってよかったー!
これ、さっき藤村達と買いに行ったんだよ、俺1人だと緊張して買えないからさ」
「…あ、ありがとうございます、すごく嬉しいです!」
田山先生が私の両手を包み込んだ。
思わぬ行動にドキッとする。
「それに、この色は俺とお揃いだろ?」
「!」
「これから使う度に俺を思い出してくれよな」
照れたように笑う田山先生がただただ眩しくて、ふと視界に入った鏡に映る自分は、先程迄と違って幸せそうに笑っていた。
少しだけ、可愛くなれた気がした。
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