ゲームしようよ!

ある日突然ーーと言っても、有名ゾンビゲームの発売日の事だからそこまで突然でもないのだけどーー弥鱈君がゲーム機とソフトを部屋に寄贈しに来た。私は固辞しようとしたのだ。だって、ホラーゲーム、好きじゃないので。


ーー弥鱈君とゲーム

「大体なんでここに置くのさ。家でやりなよ」
「分かってねえな〜。協力プレイができんだぜ?」
「お友達とやりなよ」
「アンタ以上の友達はいねえよ」
「やだ照れる」

私は抗えずコントローラーを握った。間違いだったと思う。全然操作が分からなかった上、弥鱈君はそんな私の事ガン無視でどんどん先に進んでいってしまうからだ。

「弥鱈君どこー?」
「右」
「どっちなの」
「右」
「私の?」
「キャラの」
「もうだめだ」
「諦めんなよ」
「無理ぃ」

私が嘆く間にも弥鱈君はどんどん進み、私は謎の引力で部屋を移動していく。もうだめだこれ。分からなすぎる。暗い、謎のシミだらけの背景はどんどん切り替わっていくが、私の思考はもう10分前あたりから取り残されたままだ。何が楽しいのかさえ分からない。

何とか目の前の敵を避けながら謎の引力に導かれること5分。私は遂に敵に囲まれ、絶体絶命のピンチに陥る。

「わ、わ!」

暗がりの中ではゾンビも見にくく、気づいた時にはかなり近くに三体も。これはもうダメだ、と諦めそうになったその時、一体のゾンビが突然倒れた。直後、二体目、三体目も。

「へ?」
「ばーか」
「え、弥鱈君?」
「おー」
「やべえ、かっけえ」
「だろ?」
「惚れ直しました」

多分だけど、弥鱈君が遠距離射撃を決めたらしい。弥鱈君はまた容赦無く先へ進んでいって、私はまた訳がわからないまま謎の引力に引きずられ始めた。

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