吊るされた男
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なんでなんだろう。リドル君があたしを睨み付ける。その目は深い暗闇のようで、あたしは震えた。
「――黙れ」
リドル君がそういった瞬間、視線がガチッと固まる。そして、視界いっぱいに薄い霧の様なモノが拡がり、身体がフワリと浮き上がる感じがした。
「倉庫に太いロープがある。それを、お前の部屋の天井から吊り下げるんだ。先は輪にしておけ」
あたしの身体はフワリと動き出した。リドル君はニヤリと笑って、柄にも無く手を振った。
とても嫌な感じがした。
あたしは倉庫で手に入れたロープを持ってビリーの部屋に入る。ビリーの相部屋は誰だったかは覚えてないけど、皆ぐっすり眠っている様だった。あたしの身体はそれを確認すると、天井の真ん中の梁にロープをくくりつけた。でも、リドル君はあたしの部屋にと言ったのに、言いつけと違う事をしていて良いのだろうか。
ビリーの部屋の中心から垂れ下がるロープを見て、やっと気付いた。多分、この後このロープでウサギが首を吊るんだろう。つまり、そう。つまりあたしは今リディアじゃない、ビリーなのだ。そしてここはビリーの記憶。
なんでなんだろう。
でも、なら早くあのロープをほどいてウサギが首を吊らなくて済む様にしなくっちゃ。そう思ってあたしはロープに手を伸ばそうとしたけど、身体が言うことを聞かない。それどころか、この身体はあまつさえ寝てしまおうとしているのだ。やめて、やめてよやめて。このままじゃ駄目だよ。駄目。駄目だってば!ホラあたしを放して、あのロープをほどかせて、それだけでいいから、本当だから。お願い、許して。許して。許して。
許して。
―――次の日の朝、目が醒めて真っ先に見えたのはウサギの死体だった。
「―――っは…!」
視界が明転して、うずくまったままのビリーが目に入る。隣を見るとリドル君がいた。
どれくらい時間がたったのだろう?そして、どうしてああなったのだろう?あたしにはわからなかった。分からないけど、分からないから、涙が出た。
大切なモノを自分で壊すのは、辛い事だ。あたしはビリーの頭を撫で続けた。なんて言えば良いのかなんてわからなかったから。
ビリーはあたしの顔を伺い見て、目を丸くする。泣いてるなんて思わなかったらしい。そして、多分安心したんだろう。次はわぁわぁ声を上げて泣き出した。つられてあたしも声を上げて泣く。辛い、苦しい、悲しい。
―――――
リディアが泣き出して、僕は少なからず驚いた。なんで泣いてるんだ?僕のせいか?……いや、何もしてない。僕のせいなんかじゃない。
でも、もし僕が無意識に何かしてたら?
そうしたらどうなるんだろう。怒られるんだろうか、ミセス・コールに。いや、怒られるだけならまだしも、追い出されたらどうしよう。そんな事されたら死んじゃう。きっとミセス・コールは分からず屋だから、訳も訊かずに僕を追い出すんだ僕は呪われてるんだから。嫌だ、嫌だそんなの。
視界がうるんだ。そして、ピントが合わない視界にぼんやり、ミセス・コールが映った。