吊るされた男
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「リドル君どしたの?」
「何か?」
「何が?」
「いや、何でもない。」
そう、と短く言って、リディアはまたベッドの上に転がった。静かな部屋。彼女と相部屋のレナとベニーは僕を恐れたらしくすぐに出ていってしまったので、今部屋にいるのは僕とリディアだけだ。好都合だった。僕はあんな奴等と同じ空気を吸うなんて願い下げだからな。
「なあ」
「ねえ」
口を開くタイミングが被ってしまい、僕らは顔を見合わせる。
「どうぞ」
「言え」
再び重なる声。僕らはいよいよお互いを見つめる。
なんなんだ、全く。
「言え」
僕は再度そう命令した。リディアはそれが不服なのか、一瞬口をへの字にひん曲げてから、話し出した。
「うさぎを殺したのは、リドル君?」
その問いに妙に確信めいた響きがあるのに驚く。このウスノロは何を知っている?
「そんな訳無い。僕になんのメリットがある?」
「メリット?」
「自分の得になることだ」
少しの間考えて、彼女は柔らかな声で言った。
「ビリーが泣く」
一番簡潔で一番正しい答えだった。
「泣く位でウサギを殺す訳無いだろ」
「殺すよ」
「殺すか」
「殺すよ。だってリドル君もビリーも泣かせる為に殴るでしょ?」
「そんなレベルじゃない。殺すと一生会えなくなるんだ、悲しいんだぞ!」
「リドル君は悲しくならない!」
「なんでだよ!お前も僕が人間じゃないって言いたいのか!?」
「そんなじゃないよ」「じゃあ何なんだ?おんなじだ!お前もミス・コールとか他の奴等とおんなじだ!」
「ちがう」
「違わない、違うもんか!お前はあいつらとおんなじだ!せっかくあの汚いぬいぐるみを返してやったのに!せっかく話しかけてやったのに!」
頭に来た!この僕が優しくしてやったのに、僕の言った事を信じないなんて。とんだクズだった。ウスノロなのは知ってたが、まさかクズまでとは!
僕はイライラが限界に達し、何も言わずに部屋をでた。
―――
リドル君が、出ていってしまった。あたしのせいだ。リドル君に責められたら何を言えばいいか分からなくなってしまった。本当はもっといっぱい話したかったんだけど。
あたしは何でか知らないけど、リドル君がウサギを殺した様な気がしていた。難しい言葉を使って言うなら、確信、だ。方法なんて、リドル君ならどうにでもなるのだから。リドル君が殺したのだとさえわかれば良かった。出来れば彼を説得してビリーに謝って欲しかったのに。それだけなのに。ミス・コールに怒ってもらうとか、そういう事は全く考えてなかったのに。というか、あたしはあの人が嫌いだ。だって、あたしを愚図だって最初に言ったのはあの人だから。そのくせ誰かが泣いてたらあたしにお話する様にさせるなんて、ムシが良すぎるんだ。
よっこいしょ。
あたしはベッドから起き上がった。何でか分かんないけど、リドル君は泣きそうだった。きっと、傷付けてしまった。泣くべき場所がわからない人は抱き締めなさい、見捨てられたモノを拾いあげなさい、と、そうママは言っていた。それが貴女の使命であり、貴女の力よ、と。産まれた瞬間から孤児院に入れられるまでずっといってたから、ちゃんと覚えている。ママ、あたしを捨てた、ママ。あたしの事、時々思い出していてくれてますか?あたしはママの顔がだんだんわからなくなってきました。ママの教えてくれた言葉だけが頼りです。
リドル君を抱き締めてあげに行ってきます。いつか抱き締めにきてください。