吊るされた男
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ある日――具体的には、リドル君との出会いから一週間が経った日のこと――あたしがお気に入りのウサギのぬいぐるみを持って歩いていると、ばったりリドル君と鉢合わせた。そういえばまだウサギのぬいぐるみを返して貰えた事に対してお礼を言っていない事に気付いたあたしは、リドル君に声を掛けようと口を開く。
「舐めろ」
が、リドル君の方が早かった。彼の人差し指には小さな怪我があって、固まりかけた血がぽっこりと盛り上がっていた。あたしは突然でびっくりしてしまい、彼の指先をまじまじと見つめた。
「舐めろ」
さっきと同じ言葉。あたしは怖くなって反射的に彼の指先をくわえた。鉄の苦い味が口の中に広がって、あたしは顔をしかめる。
リドル君はブツブツ何か呟いていた。眉間にこれでもかという位のシワがよっていて、あたしは何も悪くないのに怒られている気分になった。自然と指を舐める舌にも気合いが入る。
リドル君が満足してあたしの口から指を抜いたのは、それから少し後の事。
「どうしたの?」
「なんでもない」
彼が気まずそうにそっぽを向くので、あたしは「そう」とだけ言った。何かあるんだろうな、とは思ったけど、言いたくないものを無理矢理聞きたくもなかったから。その代わり、あたしは「ぬいぐるみ、返してくれてありがとう」と言った。
「別に、もういらないから返しただけだ」
「でも、嬉しかったから」
「ふん」
リドル君は鼻を鳴らすと、そのままどこかへ歩いて行ってしまった。あたしはやっぱり何も言えないまま彼の背中を見送って、はたと考える。
さて、何をしていたんだっけ。
そうだ、食堂だ。
あたしは無事思い出せた事にほっとしつつ、廊下を進む。
「舐めろ」
が、リドル君の方が早かった。彼の人差し指には小さな怪我があって、固まりかけた血がぽっこりと盛り上がっていた。あたしは突然でびっくりしてしまい、彼の指先をまじまじと見つめた。
「舐めろ」
さっきと同じ言葉。あたしは怖くなって反射的に彼の指先をくわえた。鉄の苦い味が口の中に広がって、あたしは顔をしかめる。
リドル君はブツブツ何か呟いていた。眉間にこれでもかという位のシワがよっていて、あたしは何も悪くないのに怒られている気分になった。自然と指を舐める舌にも気合いが入る。
リドル君が満足してあたしの口から指を抜いたのは、それから少し後の事。
「どうしたの?」
「なんでもない」
彼が気まずそうにそっぽを向くので、あたしは「そう」とだけ言った。何かあるんだろうな、とは思ったけど、言いたくないものを無理矢理聞きたくもなかったから。その代わり、あたしは「ぬいぐるみ、返してくれてありがとう」と言った。
「別に、もういらないから返しただけだ」
「でも、嬉しかったから」
「ふん」
リドル君は鼻を鳴らすと、そのままどこかへ歩いて行ってしまった。あたしはやっぱり何も言えないまま彼の背中を見送って、はたと考える。
さて、何をしていたんだっけ。
そうだ、食堂だ。
あたしは無事思い出せた事にほっとしつつ、廊下を進む。