皇帝
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「ウィンカーディウム、レビオサー!」
ピクリとも動いてくれない目の前の羽を、ストラスが持ち上げて飛んでくれる。ばさばさと舞い上がる羽を見たアーサー君が「おい、羽がたくさん浮いてるぜ」と笑う。あたしはそれがどうにも悲しくて、杖を放り投げたい気分になる。でも、そんなことをしたらこの杖はきっと拗ねてまた大変なことになってしまう。ーー前の時は本当に大変だった。ちょっと癇癪で放り投げただけなのに、それからしばらくどんな呪文を唱えても先端に桜が咲くばかりで、一週間くらい授業にならなかった。桜はかわいかったけど。ーーだから、あたしはひたすら唱え続けるしかない。
「リディア、ウィンガーディアム・レビオーサ」
「ウィンカーディウム・レビオーサ」
「ウィンガーディアム」
「ウィンガーディウム」
「ディアム」
「ディアム」
ステラがゆっくりと大きく口を開けて、正しい発音を教えてくれる。あたしはそれに続いた。ステラがいつも通りの無表情で頷く。それに頷き返して、あたしはまた杖を構えた。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!」
やっぱり羽はびくともしなくて、あたしはため息。おかしいなあ。それはアーサー君もステラも同じみたいで、あたし達三人は首を傾げた。
「あ、分かったぜリディア!向きだよ向き!杖の向きが悪いんじゃね?」
こう!こう!とアーサー君が自分の杖を傾けて見せてくれるので、あたしも同じように杖を傾ける。それをアーサー君が横から微調整する。数回のそれの後、アーサー君は満足気に頷いて「よし、やってみようぜ」と言った。あたしは杖の向きに細心の注意を払いながらまた呪文を唱えてみる。ちょっとだけ右に動いた。あれ?と、アーサー君がまた首を傾げる。
「さっきのは、杖の振りが甘かった」
ぽそ、とステラがそう漏らすと、アーサー君はびしっとステラを指差して、「それだ!」と叫んだ。「こうだリディア、こう!」とまた体で示してくれるアーサー君を、ステラが「それは振りすぎ」と嗜める。とにかくやってみよう。あたしは次は杖の振りに注意しながら呪文を唱えた。次は羽が左に動く。あれ?あたし達はまた首を傾げた。
「声の大きさ?」
「いや、やっぱりまだ杖の向きが悪いと思うんだよな」
もう、あたし物なんか浮かせられなくてもいいかな。諦めたくなるのをステラが敏感に察して、「リディア、諦めてはダメ。掃除の時にこの魔法がなければ、タンスの下を掃除できない」と厳しい目で言った。そういうときは棒に雑巾を巻きつけるからいいよ、とはなんとなく言えず、あたしは杖を振る。ちょっと浮いた気がする。
「ねえ、今浮いた?」
「浮いたというか…身震いしたみたいな」
「ミス・フリーマンは許してくれるかな」
「いや、5インチは上げないと」
ため息をついた。ステラが嗜めてくる。
「何してるんだ?」
突然の聴きなれた声に、あたしは顔を上げ、声の出所を探す。廊下のところにいた。
「リドルくーん!」
あたしは手を振った。リドル君はうざった気に眉を顰めて、あたし達のいる中庭へと歩いてくる。ストラスがまるで今の私はフクロウですよとでも言うようにホゥと鳴いて、あたしの頭に止まる。
「何してるんだ?」
あたしの目の前まで来て、リドル君は同じ質問を繰り返した。アーサー君が「見ての通り、魔法の練習中だよ。心配すんなって、お前はアブラクサスとでも遊んでな」とつっけんどんに返す。リドル君はそれを聞かなかったみたいに振る舞って、あたしをじっと見て「魔法の練習中なのか?」と聞いた。あたしは頷く。ふうん、と気のなさそうな相槌。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
リドル君は何を思ったか、あたしに向かって杖を振った。あたしの体はふわりとその場から浮き上がる。「おいおいおい!」とアーサー君があたしの足を掴もうと手を伸ばし、ステラが「狡猾なスリザリンめ!」と杖を抜いた。でも、あたしもリドル君も二人のことなんてそっちのけになってしまう。
ピクリとも動いてくれない目の前の羽を、ストラスが持ち上げて飛んでくれる。ばさばさと舞い上がる羽を見たアーサー君が「おい、羽がたくさん浮いてるぜ」と笑う。あたしはそれがどうにも悲しくて、杖を放り投げたい気分になる。でも、そんなことをしたらこの杖はきっと拗ねてまた大変なことになってしまう。ーー前の時は本当に大変だった。ちょっと癇癪で放り投げただけなのに、それからしばらくどんな呪文を唱えても先端に桜が咲くばかりで、一週間くらい授業にならなかった。桜はかわいかったけど。ーーだから、あたしはひたすら唱え続けるしかない。
「リディア、ウィンガーディアム・レビオーサ」
「ウィンカーディウム・レビオーサ」
「ウィンガーディアム」
「ウィンガーディウム」
「ディアム」
「ディアム」
ステラがゆっくりと大きく口を開けて、正しい発音を教えてくれる。あたしはそれに続いた。ステラがいつも通りの無表情で頷く。それに頷き返して、あたしはまた杖を構えた。
「ウィンガーディアム・レビオーサ!」
やっぱり羽はびくともしなくて、あたしはため息。おかしいなあ。それはアーサー君もステラも同じみたいで、あたし達三人は首を傾げた。
「あ、分かったぜリディア!向きだよ向き!杖の向きが悪いんじゃね?」
こう!こう!とアーサー君が自分の杖を傾けて見せてくれるので、あたしも同じように杖を傾ける。それをアーサー君が横から微調整する。数回のそれの後、アーサー君は満足気に頷いて「よし、やってみようぜ」と言った。あたしは杖の向きに細心の注意を払いながらまた呪文を唱えてみる。ちょっとだけ右に動いた。あれ?と、アーサー君がまた首を傾げる。
「さっきのは、杖の振りが甘かった」
ぽそ、とステラがそう漏らすと、アーサー君はびしっとステラを指差して、「それだ!」と叫んだ。「こうだリディア、こう!」とまた体で示してくれるアーサー君を、ステラが「それは振りすぎ」と嗜める。とにかくやってみよう。あたしは次は杖の振りに注意しながら呪文を唱えた。次は羽が左に動く。あれ?あたし達はまた首を傾げた。
「声の大きさ?」
「いや、やっぱりまだ杖の向きが悪いと思うんだよな」
もう、あたし物なんか浮かせられなくてもいいかな。諦めたくなるのをステラが敏感に察して、「リディア、諦めてはダメ。掃除の時にこの魔法がなければ、タンスの下を掃除できない」と厳しい目で言った。そういうときは棒に雑巾を巻きつけるからいいよ、とはなんとなく言えず、あたしは杖を振る。ちょっと浮いた気がする。
「ねえ、今浮いた?」
「浮いたというか…身震いしたみたいな」
「ミス・フリーマンは許してくれるかな」
「いや、5インチは上げないと」
ため息をついた。ステラが嗜めてくる。
「何してるんだ?」
突然の聴きなれた声に、あたしは顔を上げ、声の出所を探す。廊下のところにいた。
「リドルくーん!」
あたしは手を振った。リドル君はうざった気に眉を顰めて、あたし達のいる中庭へと歩いてくる。ストラスがまるで今の私はフクロウですよとでも言うようにホゥと鳴いて、あたしの頭に止まる。
「何してるんだ?」
あたしの目の前まで来て、リドル君は同じ質問を繰り返した。アーサー君が「見ての通り、魔法の練習中だよ。心配すんなって、お前はアブラクサスとでも遊んでな」とつっけんどんに返す。リドル君はそれを聞かなかったみたいに振る舞って、あたしをじっと見て「魔法の練習中なのか?」と聞いた。あたしは頷く。ふうん、と気のなさそうな相槌。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
リドル君は何を思ったか、あたしに向かって杖を振った。あたしの体はふわりとその場から浮き上がる。「おいおいおい!」とアーサー君があたしの足を掴もうと手を伸ばし、ステラが「狡猾なスリザリンめ!」と杖を抜いた。でも、あたしもリドル君も二人のことなんてそっちのけになってしまう。