「やぁ！」
「や……ぁ？」

なんだか笑顔がすごく眩しい男の子が声をかけてきたので、あたしは返事を戸惑う。もしかしたらあたしじゃなくて他の子に話しかけてるのかも、と思ってルーシーを見たけど、彼女は何を考えたのか「ごゆっくり」とブリアナとキャシーを引いていってしまった。

「君、さっきの授業で悲鳴あげてた子だよね？」

彼は三人を見送ると、あたしが困ってるのなんて全然気にならないみたいで一方的に話し始める。

「もしかしてマグルの出身？だったらよかったらさ、オレにマグルの生活とか教えてよ。あ、マグルってわかる？マグルっていうのは魔法を使えない人間のことね」
「マグロじゃなかったの？」

そう言うと彼はちょっと唇を尖らせて、「なんでマグロ？」と聞いた。あたしもなんでマグロかなんてわからないので、首を傾げる。

「とにかく、マグル出身なの？」
「うん。あとね、リドル君も一緒」
「リドル君？」
「リドル君はスリザリンのね……」

リディア、とあたしの名前を呼ぶ声がするので振り向くと、ちょうどリドル君がアブラクサス君とこっちに向かって歩いてくるところだった。

「あ、あれがリドル君だよ！あのね、同じ孤児院にいてね」
「やぁ、リディア！」
「……」

今あたしに挨拶したのは誰かしら。リドル君の声に聞こえたんだけど。

「げぇ……！スリザリンって聞いたから嫌な予感はしたんだよアブラクサス・マルフォイ！」
「よかったよリディア、ちょうど渡したいものがあって」
「誰かと思えばアーサー・ブライト。そいつ口説く気？相変わらず君の一族って変な血を交ぜたがるよね」
「……」
「ハッ！変な血がどんな血かはしらねぇけど、少なくともお前のところの血よりマシだろ」
「リディア？どうかした？久しぶり過ぎて僕の顔忘れた？」

どうしよう、こんなキラキラした人あたし知らないよ。

「言ってれば？あーあ、マルフォイ家は曾祖父の代から没落貴族の君のところにせっかく手を差し伸べてあげたのになぁ」
「没落も糞も今時純血主義なんてはやんねぇんだよ！一生過去に生きてろ！」
「リディア？……あぁ、二人とも、大声出すからリディアが怯えてるぞ」
「りっ……」
「り？」
「リドル君を、かえせっ！」
「は？」
「こんなキラキラしたリドル君知らないよ！」

アブラクサス君が噴き出す。アブラクサス君め……！

「アブラクサス君！リドル君に何飲ませたの！？」
「なんで僕なのさ！あっはっは」
「どうせアブラクサス君も魔法薬の授業で失敗したんでしょう！？」
「も、ということは失敗したのか、リディア」
「リドル君静かにしてて！大事なことなの！」
「そうそう、この子ムカデを鍋に入れられなかったらしくて」
「アーサー、君まだいたの？」
「今アブラクサス君と話してるの！」
「なっ！？」
「ほらアーサー、二対一だ。帰れ」
「あ！もしかしてあなたがリドル君に移したの！？」
「何をだよ？あとお前が帰れアブラクサス」
「その、キラキラしたオーラを！」
「ないない」
「ねぇトム、そろそろ君は自分の幼なじみをなんとかすべきだと思うんだけど？」
「そうだな」

リドル君は頷いて、あたしの目の前に立つ。どうしたの？と聞こうとしたら先にリドル君が声をかけた。