運命の輪
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目の前に置かれたカップをそっと触ってみる。中のカフェラテは熱々だ。多分まだ飲まない方がいい。もちろん、アールグレイのアブラクサス君もダージリンのリドル君もそんなのお構い無しにゴクゴクだけど。
そんな不思議と穏やかな沈黙を破ったのは、紅茶をひとまず満足まで飲んだ二人。
「で、僕の親の事なんだけど」
「ねぇ、君って自分の親の事も知らなかったんだね?」
二人が同時に逆の事を言うので、あたしはつい緊張して、ストラスの羽根を握ってしまった。ストラスが怒って手をつつく。あたしは止めてという代わりに頭をぺちんとやった。ストラスは仕返しだと足であたしの人差し指をギュウッと握る。あたしも何かやってやろうと思ったけど、リドル君に睨まれたのでやめた。
「生憎、魔法使い様とは関係の無い生活を送っていたからな」
「マグルと?考えられない。質問されたから教えてあげるけど、君ってサラザール・スリザリンの血筋なんだよ?」
「だれ?それ」
あたしはつい口をはさんでしまう。アブラクサス君にはあからさまにため息をつかれた。
「なんで君なんかがマールヴォロ家の血筋の人間の傍にいるんだか」
「同じ孤児院にいるからだよ」
「……ねぇ、この子って始終こんな感じなのかな?」
リドル君は興味がありません!って感じにストラスの羽根をいじくる。ストラスも珍しくリドルにされるがままだ。アブラクサス君がムッとした顔をするので、あたしは慌てて話題を戻した。
「……サラザール・スリザリンは、ホグワーツを設立した四人の一人。スリザリン寮の名前の由来で、スリザリン生が目指す魔法使い」
「ホグワーツを設立した人がいるの?」
「当たり前だろ。学校がある日空から降ってくるとでも思ってたのか」
「そう。彼とゴドウィン・グリフィンドール、ヘルガ・ハッフルパフ、ロウェナ・レイブンクローが学校の創始者で、それぞれのラストネームが寮の名前の由来」
アブラクサス君が気取った調子でそう言ってアールグレイを飲むので、あたしもとりあえずカフェラテに口をつけた。さっきよりは熱くなくなっていだので、あたしはそっと一口口に含んだ。
「スリザリンは純血主義だった事もあって血が絶える事はなく続いてきたんだけど、君の親の代で絶えてしまったと思われていたんだ。マールヴォロ家の屋敷が空になった日は大騒動になったってパパが言っててね。今日君に会えた事で両親は少なからず舞い上がってるみたいだよ。僕がカフェに行きたいって最初に言った時はあんなに渋い顔をしてたのにね」
「そうなんだ」
凄いんだね、リドル君。あたしがそう言うと、彼はコイツに褒められても嬉しくないとだけ言ってダージリンに口をつけた。ストラスは私の膝の上からリドル君の膝の上に飛び乗ってホウと鳴いた。リドル君に賛成って言いたいらしい。酷い話だ。アブラクサス君の口の端がヒクリと動く。
「ねぇ、君っていつもそうなのかな?」
リドル君はアブラクサス君をチラと見て、ストラスに視線を落とす。指先はストラスの王冠をいじっていたが、ストラスに翼で制されてしまったので尾羽に変えた。
「お前は僕の質問に一つ答えてくれたから、僕も一つ答えてやる」
リドル君はストラスをそっと一撫でした手でダージリンのカップを掴んで残りをぐいと飲み干し、あたしも早く飲むよう命令した。あたしは慌てて残りをふーふーして飲み始める。
「僕は人を選ぶ。選ぶ側だ」
そう言ってリドル君はあたしが必死に飲んでいたカフェラテを取り上げ、難なく残りを飲み干した。