運命の輪
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思わずストラスから逃げると、リドル君にぶつかった。それはリドル君も予想できなかったみたいで、あたしと彼は一緒に床に倒れこんだ。
いけない。こんな事してる場合じゃないや。あの子を探さないと。
「リドル君、ちょっとこれ持ってて!」
「は?」
あたしは杖を座り込んだままのリドル君に預けてお店の奥に走り出した。そして、奥にある杖の数に愕然とした。凄い量だ。どうしよう。
そもそもあの子って誰だろう?
仕方がないので、あたしはリドル君の所に戻って、杖を取り返して、また奥に戻る。今度はなんとなくどこにいるのか分かったので、あたしはそこへ一目散に駆けていった。
「おい、リディア!」
リドル君の声。でも、今振り返ってその声に答えてしまったらこの感覚を失ってしまいそうで、あたしはあえてその声を無視した。
その杖が近くに来たのを感じた瞬間、イチイの杖はあたしの手をすっぽ抜けてその子のいる箱に突き刺さった。おじいさんの驚いた声。あたしはふいに正気に戻って、自分のした事が実は凄く大変な事なんじゃないかと思い始めた。
「あ、あの、すいませんでした」
「いや、いや。杖の声を聞いたのじゃろ?昔一人だけ同じ事をしたのがおっての」
おじいさんはイチイの杖が突き刺さったままの箱を取り出し、丁寧に杖を抜いてその箱を開けた。中にあったのは、何の変哲もない一本の杖。
「その子はその杖とは全く別の杖を買う事になったが、何かの縁じゃ、握って御覧なさい」
あたしは返事をして、その杖を握った。高い、高い所から見下ろす平らな平原。吹き抜ける風に散る花びら。一人きりだ。
光は淡く萎んで、私の手の中には杖だけが残った。
「……桜の木にユニコーンの鬣。気難しいが、強力。お嬢さん、貴女の杖じゃ」
「あたしの……」
「さぁ、これで二人の杖が決まったの。君達の未来に幸あれ!」
「え?待って待って、リドル君のは?」
「お前が押し付けてきたイチイの杖」
「そうかそうか。そういえばお嬢さんは見ておらんかったからのう」
「僕の杖も光ったんだ!そしたら、凄く手に馴染む感じになって」
リドル君は思い出して改めて興奮したらしい。おじいさんから杖をひったくる様に受け取ると、ぎゅっと両手で握る。力を入れて白くなる指先とは反対に、ほっぺたが紅い。あたしは「見たかったな」と言った。すると、リドル君は顔を上げてしかめっ面をした。怒ってる?と聞くと、別に、と返された。
頭に降り立ったストラスが「自分の勇姿を見て欲しい男心さ、リディア」と笑ったのも気にせずお代を払いにいってしまうリドル君の足が早すぎて、「そうなの?」とは聞けなかった。