運命の輪
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「ああ怖かった」
お洋服屋さんを出て思わずほっとため息をつく。ストラスは楽しそうな声で笑いながら言った。
「大丈夫さリディア。例えくだらないマルフォイ家とやらが総力をあげて攻めてきても君は守ってあげよう」
「本当?ありがとう」
「待て」
リドル君の言葉に、あたしは立ち止まる。するとリドル君はため息をついて「そうじゃない」と言った。
「なに、気にする事はないよリディア。一寸彼は寂しがりなだけさ」
「そうなんだ?」
「リディア、ストラスの言う事を信じるな。そもそも何故ソイツの言葉を信じる」
「えーっと……」
「オリバンダー杖店。行くぞ」
「え、ちょっと待って」
あたしが答えるのなんて興味無い様子で、リドル君は店内に入ってしまう。あたしは仕方なくリドル君についてお店に入った。
そこであたし達を迎えたのは、お月様みたいに綺麗な目をしたおじいさん。
「やぁやぁ、待っておったよ。そろそろ来る頃だと思っていた」
おじいさんはゆっくりと立ち上がると、こっちに近づいて来る。あたしもおじいさんに負担をかけてはいけないとそちらに歩く。あたしのすぐ後をリドル君がついてくる。
「さぁ、杖腕を教えておくれ」
「杖腕?」
「おぉ失礼。杖を振る方の、マグルの言葉では確か利き腕を」
「あたしはこっちの手で、リドル君は……」
「右」
「そう、右」
そうかそうか、とおじいさんはあたしの頬を指先で撫でた。そして、リドル君の頭に手を置くと、そのまま奥に杖を取りに行く。
「お坊っちゃん、まずはこれを。樫の木にドラゴンの牙。25センチ。素直。お嬢さんには蜜柑の木にドラゴンの髭。31センチ。妖精の呪文に長ける」
あたし達は杖を受け取る。あたしのはただの木みたいに何もおこらず、リドル君のは吹っ飛んでいった。
「吹っ飛ぶとは。初めて見る反応じゃが、どうやら違うようじゃ。お嬢さん、次はこちら、セコイヤの木に妖精の羽根。16センチ。小回りがきく」
「……何の小回りがきくんだ?」
「杖自体、じゃないかな?」
リドル君とストラスがぽつりと何か言った気がするが、杖が思い切り花火をあげたせいであたしは聞き取れなかった。
「おやおや。さ、お坊っちゃんはこっちを。楓の木にガルーダの羽根。27センチ。忠実」
リドル君はおじいさんから杖を受け取り、そして杖が羽根を生やして彼の元を飛び立つ一連の流れを無表情でこなした。なんだか怖かった。
「ふむ、じゃ、お嬢さん、こっちのイチイの木に不死鳥の尾羽を。34センチで、非常に強力」
あたしが握ると、ぽぅと杖は灯りを灯した。柔らかい光に、流れる映像。自分をぴったりと覆う布の中にあたしはいた。
周りにある沢山の気配の中に、一つだけ寂しそうな気配。あたしはどうしてもその気配が気になって、かたかた身体を揺すったり、どうにかその子の注意を引こうとするのだけど、布と、あたしはどうやら箱に入っているらしく、そのせいで全然気付いて貰えない。どうしようも無いと途方に暮れている内に自分を覆っていた布が解かれ、にこにこ笑顔のおじいさんの手にとられる。箱に戻されたと思ったら全然別の所に連れていかれてしまうではないか。駄目だよ。まだあの子の顔も見てない。あそこに戻して!
「……やはりこの杖は強力過ぎる様じゃ。前にこの杖に触れた子も指に酷い火傷を負っての」
「なんでそんな杖をコイツに握らせたんだ!クソッ!おいリディア!起きろ!起きろ!」
リドル君の悲鳴染みた呼び声が聞こえる。頬が痛いと思ったら、ストラスが羽ばたきながら羽根で頬をべちべちしているじゃないか。
「痛い痛い痛いよ!」