運命の輪
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「買ったものはお鍋に入れると楽だよ、リドル君」
「そうだね。私も案外鍋の中の居心地が良いのに驚いているよ」
「出ろ、ストラス」
「嫉妬は良くない、トム」
リドル君は、中の物が汚れるだろう!とあたしのお鍋に手を突っ込んでストラスを引っ張り出した。あたしは構わないけど、リドル君は嫌なんだろう。リドル君は綺麗好きだ。
首根っこを掴まれたストラスは、面倒臭そうな声でホウと鳴くと、リドル君の手を離れてあたしの頭にとまった。
「悪魔の首根っこを掴むだなんて、なんて君は不遜な子供なんだ」
「リドル君は布団じゃないよ」
「リディア、黙ってろ。僕は悪魔は忌むべき存在だと教わっている」
「ほぅ……君はそれを信じるかい?」
「今の所、同意だな」
「それは寂しいなぁ、トム。私はとても寂しいよ。寂しさで死んでしまいそうだ」
ストラスがかわいそうになったので、あたしは手を伸ばしてストラスの羽根を撫でてあげる。ストラスは甘える様に手にすりよってきたけど、リドル君はとても嫌そうな顔であたしとストラスを睨んだ。
「リディアは優しいなぁ。さあさ、心の冷たいのは置いておいて次は制服を買おう、リディア。あっちだよ」
「うん。行こう、リドル君」
「だからそれは置いておきなさいって」
あたしはストラスの指し示す方向へ歩いていく。お洋服屋さんの扉を潜ると、色んな色のお洋服がお店に並ぶ中心に、お店屋さんらしいおばさんと、あたし達と同じ位の年の男の子がいた。メジャーで身体のあちこちのサイズを測っていたのが、こっちに気付いてそれを中断する。
「あら、いらっしゃい。ホグワーツの制服でよろしかったかしら?」
「はい」
「あらあら。それじゃあちょっと待ってて頂戴ね。この子が終わったらすぐにサイズを測りましょう。レディーファーストで良いかしら?」
「かまいません」
「そう?じゃ、すぐ済ませるわね」
おばさんはそうにっこり笑いかけて、男の子の採寸に戻る。あたし達はやる事も無くお洋服を見て回っていたが、男の子に呼びかけられる。
「君達もホグワーツに入るのかい?」
「うん。そうだよ。あ、あたしリディア・ローリング!でね、こっちがトム・リドルで、こっちはストラス」
「ふぅん。僕はアブラクサス・マルフォイ。知ってる?マルフォイ家」
「ううん……知らない。ごめんね」
「知らない?へぇ、田舎者なんだね?」
「え、あたし達田舎者なの?リドル君」
「構うな、そんな奴」
「まあ、知らないなら教えてあげるさ。マルフォイ家は魔法界でも有名な純血の家系だよ。どの道君達みたいな田舎者とは別世界の話だけど」
「そうなの?じゃあアブラクサス君は凄いんだね」
「当たり前。それより君達はどの寮に入りたい?僕は断然スリザリンなんだけど」
「寮?」
「君、本当に魔法使い?」
「ミスタ・ダンブルドアはそう言ってたけど……」
「へぇ?……まぁいいか。ホグワーツには四つの寮がある。スリザリン、グリフィンドール、レイブンクロー、ハッフルパフ。それぞれの寮には性格によって分けられるんだよ。前者から俊敏狡猾、独善的、偏屈、馬鹿の順」
「随分な教育を受けたみたいだな」
ずっと黙ったままだったリドル君が突然そう言ったので、あたしとアブラクサス君はつい口を閉じて彼を見つめてしまう。リドル君はあたしを引き寄せて、じとっとした目でアブラクサス君を睨む。アブラクサス君の頬が紅くなっていき、歯を剥き出しにして怒った顔をつくる。
「僕のパパとママを馬鹿にするなよ」
唸る様な声を出す彼をリドル君は鼻で笑って「早くその台を降りろ。もう採寸は終わってるだろ?」とぶっきらぼうに言った。ストラスがフクロウらしくなく、クスクスと笑う。あたしはちょっと怖くなって、リドル君の服の袖を引いた。
たしなめるように、リドル君はあたしの手を握る。
「さ、さぁ、次は貴女の採寸を始めましょ、お嬢さん」
ひきつったおばさんの声に、リドル君とアブラクサス君は怖い雰囲気をしまいこむ。控えていた若い店員さんに服を受け取って、アブラクサス君は店を出ていこうとしたが、扉で振り返って「覚えてろよ」とリドル君を睨み付けた。リドル君はそれも鼻で笑った。
あたしはおばさんに台に上がるよう言われて、それでやっとお店はギクシャクしながらも普通の空気を取り戻した。