運命の輪
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「上に三つ、横に二つ……あれ?」
「馬鹿か。左じゃなくて右に行くんだ……ん?」
「ごめんごめん。ダンブルドア先生に君達は杖を持っていないから助けてやるよう言われてたのをすっかり忘れて……坊っちゃん、そんなに睨まないでくれ」
バーから急ぎ足で出てきたトムさんを、リドル君が睨み付ける。リドル君は短気だ。
「坊っちゃんじゃありません」
「おっと、こりゃ失礼。……ま、開けようか」
「お願いします」
リドル君が一歩あたしの方に下がるから、あたしもリドル君にぶつからないよう慌てて下がる。
「ようこそ魔法界へ」
トムさんがそう言って上に三つ、右に二つの所――なんだ、リドル君が正解だったみたいだ――を叩くと、魔法みたいに壁のレンガがひとりでに動き出し、アーチに変わった。あまりの事に言葉を無くしてしまい、呆然とアーチを眺めていたあたしとリドル君の肩を、トムさんは両手を使って叩く。
「さぁ、これが君達が立派な魔法使いになる第一歩だ。素敵なショッピングを」
トムさんの顔を見上げると、彼はパチリとウインクしてあたしたちの背中を押す。次にリドル君を見ると、彼は興奮でほっぺをほんのり紅く染めて、こちらを見返した。
「さっさと済ませるぞ、リディア」
そういって伸ばされた手をとって、あたしたちはダイアゴン横丁へと踏み出したのだった。
―――――
「リドル君リドル君見てよあれ!キラキラが売ってる!」
「あれは妖精さ、リディア。魔法使いはあれを買って一時的な幸運や刺激を得ようとするけど、私から言わせれば妖精のちっぽけな魔力に頼るのは二流だね。一流は悪魔の助言を求めるものさ」
「そうなの?ストラスは物知りね」
「何を隠そう、悪魔の王族だからね」
ストラスは自慢気にホウと鳴いて、あたしの頭から飛び立つ。Uターンして戻ってきた彼の頭には王冠が載っていた。あたしの頭に着地して、またホウと鳴く。それを見たリドル君は鼻を鳴らし、「それより鍋屋だ。錫の2型が要る」とずんずん歩いて行ってしまう。もちろん手を繋いだままだったあたしも鍋屋さんに引っ張られて行った。
「いらっしゃい。ホグワーツにご入学?」
「はい」
「やっぱり!じゃあお求めの鍋はこれだね!本当はこっちの自動かき混ぜ機能付きを大いにお勧めしたい所だけど去年それでホグワーツから苦情がきてね。仕方ないよね。うん。こっちを持ってってよ。あ!でもどうしても自動かき混ぜ機能付きが良いならもちろん考えない事もないけどどうしようかな?やっぱりかき混ぜたくないよね?ね?あ!もしかしてこっちの凄く頑丈なのがいいのかな?これは凄くてね……」
長い説明に飽きてしまったあたしは、自動かき混ぜ機能付き鍋が何を一生懸命混ぜているのかがとても気になって、中身を見に行こうとしたのだが、リドル君に引き戻されてしまう。
「普通のを下さい」
「え!じゃあ、そっちのお嬢さんは」
「コイツも同じのを下さい」
「ホント?お嬢さんそれでいい?」
「あの鍋……痛いよストラスつつかないでリドル君も手を力一杯握らないで!」
さっきと同じ言葉を繰り返すリドル君に対して、鍋屋さんが何か重ねて言う事は無かった。