戦車
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「……それで、僕の物を全部揃えたら、そのホグワーツとかに、いつ行くんですか?」
「細かい事は、封筒の中の羊皮紙の二枚目にある。君達は九月一日にキングス・クロス駅から出発する。その中に汽車の切符も入っている」
あたし達は頷く。彼は立ち上がり、また手を差し出した。その手を握り、リドル君は言う。
「僕は蛇と話ができる。遠足で田舎に行った時にわかったんだ――向こうから僕を見つけて、僕に囁きかけたんだ。魔法使いにとって当たり前なの?」
リドル君の瞳が意地悪な光をたたえる。多分、リドル君はそれが珍しい事だって気づいていてこれを言ったんだろうなぁ。
「稀ではある。しかし、例が無い訳ではない」
ミスタ・ダンブルドアは興味深そうにリドル君の目を見て答えた。そして、しばらく見詰め合った後、彼は次にあたしに向かって手を差し出した。もちろんあたしもその手を取る。
「リディア、君はホグワーツで人より少しだけ多く試練を乗り越えねばならんだろう。しかし、忘れないでおくれ。君を助ける者は、いつも必ず近くにおる」
最後彼はストラスを撫で、「さようなら、トム、リディア、そしてリディアの忠実なる友よ。ホグワーツで会おう」と微笑んだ。あたしは微笑み返し、ストラスもホゥと鳴いたが、リドル君は少しだけ不満そうな表情でうつ向き、別れの言葉を口にした。
バタン、と部屋のドアが閉まり、あたしは妙な安堵を覚えた。
「おーや、おや……。これでいよいよ君等の運命は動き出した訳だねぇ」
ストラスが頭の上からそう笑う。
「運命?」
「あぁ、運命さ。勿論宿命であり偶然でもある。共通しているのは、起こるまで分からないって事さ。気にする事は無いね」
「……ならいいね」
良く分からないけど、いいならいいんだろう。
「ほぅら、トム。何がそんなに不満かい?」
「煩い」
「ああ怖い。睨まれてしまった」
ストラスは羽根で顔を覆い、嘆いてみせた。器用だ。
「まぁいいよ。よかったねぇトム。大好きなあの子とお買い物だ」
「煩いな!」
「怖い怖い」
そう笑いながら、ストラスは開けっぱなしの窓から飛び去った。残されたあたし達は、初めて孤児院を離れる恐怖と不思議な世界に飛び込む不安に、ただ手を繋ぐのだった。