戦車
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「きみに異存はないだろうと思うが、もし、ホグワーツへの入学を受け入れるつもりなら――」
「もちろんだ!」
「それなら、私を『教授』または『先生』と呼びなさい」
ほんの一瞬、リドル君は表情を硬くして考えた。でも、あたしは知っている。きっとリドル君はすぐに態度を改めて、彼にもう一度問うんだ。リドル君はここから出たくて、そして無知のまま誰かに付き従うのが嫌だから。
「すみません、先生。あの――教授、どうぞ、僕に見せていただけませんか?」
ほら、やっぱり。あたしはちょっとだけリドル君の事が理解出来た気になって、得意な気分になった。あたしの心を見透かしてか、にっこり笑って杖を取り出すミスタ・ダンブルドア。そして彼はそれを洋箪笥に向けて一振りした。
刹那、燃え上がる洋箪笥。
リドル君とあたしは飛び上がる。そしてあたしはすぐに何とか火を消そうと洋箪笥に駆け寄り、リドル君は何とか火を消させようとミスタ・ダンブルドアに食ってかかった。
あたしの指先が洋箪笥に触れようとした時、突然何事も無かったかの様に火は消えた。あたしはその事に驚き、また悲鳴を上げる。
あたし達は呆然とミスタ・ダンブルドアと洋箪笥を交互に見、首をかしげる。先に我に還ったリドル君は杖を指差し、「そういうものはどこで手に入れられますか?」と問う。対するミスタ・ダンブルドアは「全て時が来れば」と静かに笑った。
「何か、きみの洋箪笥から出たがっているようだが」
彼の言葉に、初めて洋箪笥の中で何かがカタコト音を立てているのに気付く。キュウと握られる手の平。リドル君が怯えて握ったのだとすぐに気付き、あたしも握り返した。
「扉を開けなさい」
ミスタ・ダンブルドアが命じる。あたしは慌てて立ち上がり、彼の言う通りに動こうとした。すると、リドル君はあたしをベッドに引っ張り戻そうとする。あたしが引っ張り返すと、彼は観念して洋箪笥へ向かい歩いて行った。
扉を開けると、そこにあったのは小さな箱。あたしはそれを引っ張り出した。
「その中に、きみが持っていてはいけない物が何か入っているかね?」
「……はい、そうだと思います、先生」
リドル君が感情の無い声で答える。あたしは悟る。このままではリドル君が酷い事を言われてしまう。いけない事だ。この箱の中身があるからリドル君が悲しい思いをするのだ。
それは、とても、いけないことだ。
いけないことなのだ。
ストラスが鋭く鳴くと同時に、思い切り箱が開き、中身が勢い良く飛び出す。ヨーヨー、指貫、ハーモニカ。ストラスはバタバタ羽ばたきながらおもちゃ達の脱走を止めようとしていたが、ビュンビュン飛び回るおもちゃ達を全て捕らえられる筈も無く、羽を散らしながらおもちゃ達が部屋を出ていくのを見送る結果に終わった。
「…………今のは、リディア、君が?」
「違う、です。あたしはあんな事出来ません。きっとストラスが……っ痛いよ止めて止めて!」
ストラスがつついてくるので、あたしはストラスを捕まえようと両手を上に上げた。その手もつつかれる。
「ふむ……。トムや、どうやら君の心優しい友人の計らいで、私は君を叱る証拠を失ってしまったようだ。ただ、注意しておくが、ホグワーツでは盗みは許されない」
「はい、先生」
「勿論、心優しい友人に免じて追求の手を緩めるのはこれが最初で最後だよ」
「はい」
ミスタ・ダンブルドアはあたしにウインクすると、居住まいを正した。あたしもついベッドの上でしゃきっと座り直す。