戦車
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「はじめまして、トム」
ミスタ・ダンブルドアはリドル君に近付き、握手を求めて手を差し出す。リドル君が躊躇しながらも手を取ると、彼はそれに満足した様子で近くの椅子を引き寄せ、座った。
「私はダンブルドア教授だ。……おっと、座っておくれ、リディア」
「教授?」
あたしが隣に座るのを目の端で追いながら、リドル君は問うた。
「ドクターと同じようなものですか?何しに来たんですか?あの女が僕を看るように言ったんですか?」
リドル君、とあたしがいさめる前に、ミスタ・ダンブルドアは「いや、いや」と微笑んだ。「信じないぞ」とリドル君は彼を睨み付ける。「あいつは僕を診察させたいんだろう?」
リドル君が嫌な笑みを浮かべる。
「真実を言え!」
ビリ、と空気がおののく感覚。あたしが思わず身体を硬くしたのと同時にストラスが窓から部屋に入って来て、あたしの頭に止まった。身体が軽くなる。
ミスタ・ダンブルドアはそれを何事も無いかの様に微笑み続ける。あたしは直感した。あぁ、あたしの直感は正しかったんだ、って。多分もう逃げられないんだって。
リドル君は睨むのを止め、スッと目を伏せ、また彼を見た。
「あなたは誰ですか?」
「君に言った通りだよ。私はダンブルドア教授で、ホグワーツという学校に勤めている。私の学校への入学を勧めにきたのだが――君達が来たいのなら、そこが君達の新しい学校になる」
「騙されないぞ!」
リドル君は今度こそ激昂して叫ぶ。
「精神病院だろう。そこから来たんだろう?『教授』、ああ、そうだろうさ――フン、僕らは行かないぞ、わかったか?あの老いぼれ猫の方が精神病院に入るべきなんだ。僕はエイミー・ベンソンとかデニス・ビショップなんかのチビ達に何もしてない。聞いてみろよ。あいつらもそういうから!」
「私は精神病院から来たのではない。私は先生だよ」
「リディアだって関係無い!大方僕と一緒にいるからってあの老いぼれが気違い扱いしてるんだろう!?こいつは何も出来やしないんだ!」
「ひどいよリドル君……」
「お前は黙ってろ!」
「トム、レディにそれはあんまりじゃあないか?とにかく、おとなしく座ってくれれば、ホグワーツの事を話して聞かせよう。もちろん、きみが学校に来たくないというなら、誰も無理強いはしない――」
「やれるもんならやってみろ」
リドル君はベッドに深く掛け直すと、そう言って鼻で笑った。
「ホグワーツは、特別な能力を持った者のための学校で――」
「僕は狂っちゃいない!」
「最後まで聞いてあげようよ……」
「黙ってろって言ってるだろ!お前まで巻き込まれそうなんだぞ!」
「こらトム。君等が狂っていないことは知っておる。ホグワーツは狂った者の学校ではない。魔法学校なのだ」
ミスタ・ダンブルドアが口走った言葉に、あたし達は思わず沈黙してしまう。あたしはリドル君を見て、ストラスを見る。ストラスは何を言う訳でも無く、ホゥと一鳴きした。
「魔法?」
リドル君が囁くように繰り返す。
「その通り」
ミスタ・ダンブルドアが言った。
「じゃ……じゃ、僕が出来るのは魔法?」
「君は、どういうことができるのかね?」
「色んな事さ。物を触らずに動かせる。訓練しなくとも、動物に僕の思い通りのことをさせられる。僕を困らせるやつには嫌なことが起こるようにできる。そうしたければ、傷付けることだってできるんだ」
リドル君が興奮した様子でそう言った。ミスタ・ダンブルドアは冷静な目でその様子を見つめる。彼はあたしやミスタ・ダンブルドアを置いて自分の世界に行ってしまったようで、頭を垂れ、祈るような格好で両手を見詰めていた。
「僕はほかの人とは違うんだって、知っていた。僕は特別だって、わかっていた。何かあるって、ずっと知っていたんだ」
「ああ、きみの言う通り、君は魔法使いだ」
もちろん、君もだ。そうウインクするミスタ・ダンブルドアに、あたしは首をかしげた。急に動いたせいでストラスはバランスを崩し、ふわりと飛び上がる。
「君等は立派な魔法使いの卵なのだよ。磨けば磨いただけ光る。私が保証しよう」
「あなたも魔法使いなのか?」
「いかにも」
「証明しろ」
ストラスがホウと鳴く。多分リドル君はまた命令したのだろう。ミスタ・ダンブルドアの眉間に皺がよった。