戦車
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あたしはその日、朝からそわそわとして落ち着いた気持ちになれなかったのを覚えている。何があるのか、はっきりとした確証はなかったけど、だからこそ怖くって、レナの手をしっかり握って片時も離さなかった。彼女は苦笑いをして、「どうしたの?」って何度も聞いていた。
何度も、何度も。
あたしがその原因に気付いたのは、廊下で鳶色のおじいさんとすれ違った時だった。
ミセス・コールに連れられて孤児院を進んでいく彼の深く輝く瞳と目が合った瞬間、あたしは確信した。この人が、あたしの生活を壊す事になる。全てのきっかけになるのはこの人だ、って。
レナがその日何度目にもなる「どうしたの?」を口に出すのが、ミセス・コールの「リディア、こちら、ミスターダンブルドアよ」という声に被って消えた。
―――――
髪と顎髭は鳶色。
濃い紫のビロードの、派手なカットの背広。
変な人だ。あたしのそんな視線をどう捉えたのか、彼はあたしにウインクを一つ。そして、「リディアや、君はお母さんに似て美しい瞳をしておる」と笑った。あたしは驚き、「ママを知ってるの?ミスタ・ダンブルドア」と聞いた。すると彼は「知っておるよ。とても勇気のある人だ」と笑みを深くした。ミセス・コールの興味深そうな視線。あたしは気まずくなって少しだけ視線を落とす。
「トムの部屋はここかね?」
あたしは頷く。すると彼はあたしの隣にいたレナに向かって、「すまんが、席を外してくれんかね?」と聞いた。レナはオトナっぽい笑顔でそれに応え、あたしに手を振ると、パッと身を翻して行ってしまう。あたしはとっさに手を伸ばそうとして、ミスタ・ダンブルドアの視線にその手を引っ込めた。
「君らの将来に関わる、大事なお話なのだよ」
彼は困った様に眉をハの字にする。ミセス・コールはおもむろにリドル君の部屋のドアをノックし、「トム?お客様ですよ。こちらはダンバートンさん――失礼、ダンダーボアさん。この方はあなたに――まあ、ご本人からお話ししていただきましょう」と声を掛ける。彼の返答を聞くや否や、ミスタ・ダンブルドアはカチャと部屋のドアを開けた。