悪魔
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「……いつまでリディアの頭にとまってる気だ」
「とりあえずは洞窟を出たらだねぇ。時にカシロト、お友達はちゃんと背中にいるかい?」
「あぁ」
「ねぇストラス」
「何だい?」
「重いよ」
「我慢だよ」
真っ暗な洞窟の中、行きとは真逆の賑やかな帰り道が少しだけ嬉しくて、あたしは笑った。
「リディアはパートナーが必要だね」
「パートナー?」
「私がなってあげようね。フクロウがいるのは良いことだよ」
「良いことなんだ」
「とてもね。しかも悪魔だからこれ以上良いことは無いよ」
「そうなの?」
「死なないからね」
そんなのいらない。今まで静かに聞いていたリドル君が呟く。あたしは思わず彼の声がした辺りを見つめる。
「……リドル君?」
「‘お前はリディアのパートナーになるな’」
リドル君の声が凛と洞窟の中に響いて、びりびりと空気を揺らす。カシロトが「闇よ」と低く唸り声を上げた。しかし、それを言われた張本人であるストラスだけはクツクツ声を押し殺しながら笑った。
「どんなに強くても不完全な力を打ち破るのは簡単だよ、トム。‘敗けを認めなさい’」
「…………‘すみませんでした’」
良い子だ。ストラスは満足気な声を出した。
「詠唱破棄で服従の呪文をやるのは人間には無理さ。その精度は賞賛に値するけどね」
リドル君が息を呑む音。彼は突然走り出した。あたしは彼を追いかけようとして、カシロトに止められた。
「……闇に呑まれる」
「どいてよ、リドル君が迷子になっちゃうかもしれないよ!?」
「彼なら大丈夫さ。この洞窟が真っ暗に見えているのは君とここで寝てるお友達だけだからね」
「え?」
「君の能力は低く、彼の能力は高い。だからこそ星は闇と共に生きていける」
「……それに、今行ってもケンカになるだけだからお止め」
「そんな」
「誰かの特別になりたい男心さ。自覚は無い様だけどね」
所で、さっきの話だけどどうだろう。私なら君をあらゆる災厄から守ってやれるよ。ストラスがからっと雰囲気を変えて言った。
―――――
なんなんだあいつは!リディアのパートナーなんていらない、いらないのに!
僕は走り続けて、遂に洞窟を抜けた。太陽の光が目を突き刺し、僕は涙ぐんだ。それをぐいと拭って、また走り出す。
「辛い目にあったようね」
僕に話しかける声。周りを見回してもいたのは蛇一匹。何故か僕は声の主がその蛇だという確信があった。
「うるさい」
クス、と笑う蛇。
「意地を張って逃げてしまったのね。わかるわ」
草を掻き分ける音と共に、蛇は近づいてくる。
「貴方ばっかり孤独を味わう必要は無いわ。アタシがパートナーになってあげる」
「そんなのいらない」
「大丈夫。貴方にふりかかる災厄は全てかわしてあげる」
蛇はクスクス笑いながら、遂に僕の足元にまで這い寄る。
「使えるわよ、アタシ」
蛇は「ナギニよ、よろしくね、トム」と笑った。