悪魔
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二人の歓声が悲鳴に変わったのは、光源になっていた洞窟の奥の小部屋に入ってから。あたしは驚くと共に二人が心配になって、走り出した。
「……星よ」
あたしがそこで見たのは、光るキノコがびっしり生えた中腰を抜かして倒れているエイミーとデニス、ぼんやり天井を見上げる馬の怪物、そしてその上にとまっている金色の冠を頭に載せたフクロウだった。
「……その輝きは心をたぐりよせる」
「良きものも、悪しきものもね」
洞窟の中を歩いている時、ずっと聞いていた声が、今初めて音になってあたしの耳に届いた。
突然後ろに引っ張られる。エイミーだった。
「あっ…アンタ、なにしてんのよ、逃げなさいってば!」
「……エイミー?」
「死んじゃうっ!私達全員食べられちゃうじゃない!早くミセス・コールを」
「全く…失礼な子だ」
フクロウがこっちに飛んで来て、あたしの頭にとまって言った。エイミーの一際大きな悲鳴。
「私はこうみえて美食家でねぇ…。マグルの肉は好まないのさ」
「エイミーはマグロじゃないよ」
「ふむ…マグロは嫌いではないねぇ」
「……何故君達はそうなんだ、ストラス、カシロト」
あたしが振り向くと、そこにはリドル君と探検家みたいな男の人の上半身。エイミーが悲鳴を上げた。そしてあたしも叫んだ。下半身が無いのに喋った!
「……今は見えるのか?」
「ここの気は特殊だからね」
「リドル君!なんでのんびりお話してるの、お化けだよ!」
「闇よ……その残酷さだけが真実を導き出す」
「カシロト、お告げは少し後にしてくれ」
押し黙るカシロトと呼ばれた馬の怪物。お化けは笑って私達の前に立つ。デニスとエイミーは遂に失神してしまった。
「ええと、ようこそ、境目へ。僕はアレックス。探検家の幽霊だよ」
アレックスは大きく両腕を広げた。
「本当は無視しても良かったんだけど、カシロトが君達に会いたいと煩くてね。君達の能力は不安定だから見えるトムは僕が、聞こえるリディアはストラスが案内したよ」
迷わず来れて良かったよ。アレックスは自分の言った言葉に頷く。
「お前らは何だ」
「……威勢が良いのは良いことだねぇ。しかし、それで失う命もあるよ」
「お前らは何だ、答えろ!」
アレックスに食ってかかるリドル君に、フクロウが食ってかかった。
「ストラス、あまり子供を焚き付けないでくれ」
「人間は嫌いだよ、正常だからね」
まぁ、君が言うならそうしよう。ストラスと呼ばれたフクロウはアレックスの真似をするように大きく羽を広げた。
「私はストラス、ソロモン72柱が1柱にして悪魔の王族さ。因みにそっちはカシロトという名の只のケンタウルスだから一緒にしないでくれたまえ」
ストラスはそう言って羽ばたく。羽根が二、三目の前を落ちていった。
「……星が輝く時、先ず闇ありき。星無き闇はなくとも、闇無き星はあると知れ」
「何が言いたい」
「カシロトの預言は聞いた方がいいよ、意味が分からないかわりに正しい事しか言わない」
「つまり結局言っている事がわかるのは全てが終わった後だから聞き流すと良い」
「言ってる事が真逆じゃないか」
アレックスが返答に困って押し黙る。リドル君はため息をついた
「……で、ここはどこだ」
「さっきアレックスが言ってたじゃない、境目だって」
「境目って何だ」
「……境目って何?」
あたし達の疑問を受けて、アレックスが持ち直す。
「境目っていうのは、僕達のような幻獣や亜人間、魔法使いが住む地域との境界の事だよ。……君達なら、いずれ来る事になるさ」
「……‘君達なら’‘いずれ’‘来る’?」
「真実というのは知るべき時に分かるものだよ。良くも悪くもね」
君達はもう帰るべきだ。カシロトがそこの二人を乗せていくから気にしないで。アレックスは微笑み、お別れの言葉を囁いた。あたしは右へ左へと駆け抜けていく情報でぐるぐると回る頭を叱咤して、お別れの言葉を返した。