吊るされた男
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
さっきまで泣いていたせいで、目の回りの違和感がひどい。あたしは目をこすった。ミセス・コールは「余計ひどい顔になるからこすっちゃ駄目」といっていたけど、違和感には勝てない。
「こするな」
「だって、目が変」
隣にいるリドル君が私の左手を取って、無理矢理下ろす。そういいながら自分も少し目をこするから、私はムッとした。なんだ、自分ばっかり。私は八つ当たりでサクッとシャベルを地面に刺した。
―――結局、あの後駆けつけたミセス・コールにより、騒ぎは収まった。と言うより、ミセス・コールはリドル君とあたしとビリー全員が泣いている状況に戸惑い、更にビリーが「ボクのせいだ」と喚き散らし始めたので更にパニックに拍車がかかり、とりあえずビリーを部屋に戻してから考える事にしたのだ。まださっきのミセス・コールの「ここに居なさい」と言った時の表情を思い出すとちょっと笑ってしまう。あの人があんな戸惑った表情をするなんて!
「手、動かせ」
「あ、ごめんね」
あたしは砂をかき出した。リドル君はそれを何をする訳でも無く見ている。手伝ってくれれば良いのに。
こんなもんかな?とあたしはシャベルを置いた。立ち上がって改めて見れば、丁度ウサギがぴったり収まりそうな穴になっていた。あたしは一つ頷き、ウサギを持って来た。もうウサギに熱は無く、むしろ冷たい位だ。
「埋めるよ」
あたしは誰に言うでもなく、そう呟いた。リドル君がちらっと私を見て、頷く。それに背中を押され、ゆっくりとウサギを穴の中に入れ、土を掛けた。
「なぁ」
「ねぇ」
また呼びかけが被ったので、あたしとリドル君は顔を見合わせた。こんなの、今日で何回目だっけ。
「言え」
リドル君が促す。でも、あたしはやっぱり言うのをやめた。「リドル君はどうやってビリーに?」なんて、あたしが知っても何にもならないに決まってるんだから。
「いいや。なんでもない」
リドル君は眉をしかめる。
「じゃあ、僕もいい」
そういってリドル君は目を瞑った。私はそれを見て、なんとなく神に祈る気分になった。少しの間、目を閉じて、ウサギの冥福を祈ろう。リドル君に何を言いたかったのか訊くのは、その後でいい。