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手を取ったとて、もう連れ出すことは叶わないのだ。
彼女はここにいて、ここにしかいられない。
ーー籠の中から
「あ、弥鱈君。あけましておめでとう」
「あけましておめでと~」
賭郎の一室をノックすれば、すぐに大親友が出てきて明るい声と笑顔で年賀の挨拶をくれる。
別に、暇な訳じゃない。
彼女はここから出られないのだ。
「寝正月じゃなかったな」
「失礼な。こう見えてしっかり者なの」
「ねえな」
「あるよ」
わざとらしく頬を膨らませる彼女のそれを右手で挟んで潰す。ぶぶ、と情けなく空気が漏れる音がした。
「全くもう」
「拗ねんなよ。ホラ」
「おお!」
御節を渡してやれば、彼女は嬉しそうにそれを受け取り、部屋の奥へ戻っていく。その背を追いかけるように部屋に入り、コタツの一角を拝借した。
「すごいすごい、ローストビーフ入ってる」
「御節ってなんだったっけか」
「美味しければいいのさ」
「ハァ~」
ため息を無視してちゃきちゃき食卓を整えていく彼女を眺めつつ、「昨日は?」と聞いた。
「お屋形様」
「ハア?」
「あの人もここにしかいられないからね」
「どこでも行けるだろ」
「側近無しで外に出られないのよ」
かわいそうにね、と言う彼女はあっけらかんとしていて、お屋形様に同情する気配は感じられない。そんな彼女のドライさを目の当たりにするたび、俺は彼女が背負う業を透かし見るようで切なくなる。
そして、それは当然彼女に気付かれるのだ。
「同情しないでよ」
「誰にしてると思う?」
「私じゃないの?」
「ハァ~。ま、正解なんだケド」
「けど?」
「賭郎って組織には、因果が多すぎんだよな」
「まあ、ね」
「アンタ、今年は?」
「ここから出る」
「大きく出たな」
「まあ、ね」
ここから出る。本懐も遂げる。彼女は麗らかな笑顔をたたえ、そうきっぱりと言った。
「だからさ、力を貸してよ、弥鱈君」
「ばーか」
「ふふ」
彼女は笑う。何も起きてやいないかのように、麗らかに。俺は賛成とも反対とも言わず、栗金団に手を伸ばした。
彼女はここにいて、ここにしかいられない。
ーー籠の中から
「あ、弥鱈君。あけましておめでとう」
「あけましておめでと~」
賭郎の一室をノックすれば、すぐに大親友が出てきて明るい声と笑顔で年賀の挨拶をくれる。
別に、暇な訳じゃない。
彼女はここから出られないのだ。
「寝正月じゃなかったな」
「失礼な。こう見えてしっかり者なの」
「ねえな」
「あるよ」
わざとらしく頬を膨らませる彼女のそれを右手で挟んで潰す。ぶぶ、と情けなく空気が漏れる音がした。
「全くもう」
「拗ねんなよ。ホラ」
「おお!」
御節を渡してやれば、彼女は嬉しそうにそれを受け取り、部屋の奥へ戻っていく。その背を追いかけるように部屋に入り、コタツの一角を拝借した。
「すごいすごい、ローストビーフ入ってる」
「御節ってなんだったっけか」
「美味しければいいのさ」
「ハァ~」
ため息を無視してちゃきちゃき食卓を整えていく彼女を眺めつつ、「昨日は?」と聞いた。
「お屋形様」
「ハア?」
「あの人もここにしかいられないからね」
「どこでも行けるだろ」
「側近無しで外に出られないのよ」
かわいそうにね、と言う彼女はあっけらかんとしていて、お屋形様に同情する気配は感じられない。そんな彼女のドライさを目の当たりにするたび、俺は彼女が背負う業を透かし見るようで切なくなる。
そして、それは当然彼女に気付かれるのだ。
「同情しないでよ」
「誰にしてると思う?」
「私じゃないの?」
「ハァ~。ま、正解なんだケド」
「けど?」
「賭郎って組織には、因果が多すぎんだよな」
「まあ、ね」
「アンタ、今年は?」
「ここから出る」
「大きく出たな」
「まあ、ね」
ここから出る。本懐も遂げる。彼女は麗らかな笑顔をたたえ、そうきっぱりと言った。
「だからさ、力を貸してよ、弥鱈君」
「ばーか」
「ふふ」
彼女は笑う。何も起きてやいないかのように、麗らかに。俺は賛成とも反対とも言わず、栗金団に手を伸ばした。