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「来ちゃった」
「おお…いや、いいですけど」
ーーあなたと共に、年をこえて
「とりあえず、上げてよ」と宣うお屋形様にため息をつきつつ、私はドアを大きく開けた。
「どうしたんですか」
「暇でね」
「まあ、そうでしょうけど」
今日は大晦日。こんな日に賭け事をしようなんていう会員はいないから、こんな日に仕事をする立会人もいない。いたとしても全力で終わらせて直帰するに決まっている。ともすればこの日に賭郎の本社にいるのなんて私とお屋形様くらいのものなのである。
このまま一緒に年を越すんだろうか。
いいけどさ。
「でもお屋形様、一つだけ確認させて下さい」
「何だい?」
「お屋形様は紅白派ですか?ガキ使派ですか?」
「どっちも知らない」
「おっと」
私は戸棚にあったお菓子を適当に皿に盛り付け、こたつに乗せる。そして彼の向かいに座った。
「記憶がないんだよね」
「そりゃ、仕方がないですね」
「仕方がないかい?」
「忘れたもんは仕方がないですよ」
お菓子の包みを破く彼の俯いた顔がやけに不安気で、笑ってしまう。
「私なんか去年見てたのに紅組が勝ったか白組が勝ったか自信がない」
「紅白の話?」
「ええ」
「白組だよ」
「おおう知ってたんですか」
「一応、情報はね」
「流石」
「それくらい覚えてなよね」
「まあまあ、いいじゃないですか。こうやって誰かが教えてくれますしね」
「だからってねえ」
ふふ、と笑ってしまえば、釣られるようにお屋形様がクスリと笑った。
「で、君はどっちを見るの?」
「うん?…ああ。じゃあ、紅白で」
「じゃあって、君ね」
「まあまあ。一緒に見ましょ。年越しそば作ってあげます」
「あらそう。じゃあ、ご一緒しようかな」
「あ、じゃあって言った」
「君の適当が移ったかな」
「あはは、似た者同士だ」
「どうもです、ってね」
二人で目を合わせて笑い合う。
「さあ、今年はどっちが勝つかしら」
「君、どっちにしても忘れるんでしょ」
「否定できない」
まあでも、きっとあなたと見たことは忘れないよ。言ってあげたくなって、恥ずかしくなって、なんとなくやめた。
「おお…いや、いいですけど」
ーーあなたと共に、年をこえて
「とりあえず、上げてよ」と宣うお屋形様にため息をつきつつ、私はドアを大きく開けた。
「どうしたんですか」
「暇でね」
「まあ、そうでしょうけど」
今日は大晦日。こんな日に賭け事をしようなんていう会員はいないから、こんな日に仕事をする立会人もいない。いたとしても全力で終わらせて直帰するに決まっている。ともすればこの日に賭郎の本社にいるのなんて私とお屋形様くらいのものなのである。
このまま一緒に年を越すんだろうか。
いいけどさ。
「でもお屋形様、一つだけ確認させて下さい」
「何だい?」
「お屋形様は紅白派ですか?ガキ使派ですか?」
「どっちも知らない」
「おっと」
私は戸棚にあったお菓子を適当に皿に盛り付け、こたつに乗せる。そして彼の向かいに座った。
「記憶がないんだよね」
「そりゃ、仕方がないですね」
「仕方がないかい?」
「忘れたもんは仕方がないですよ」
お菓子の包みを破く彼の俯いた顔がやけに不安気で、笑ってしまう。
「私なんか去年見てたのに紅組が勝ったか白組が勝ったか自信がない」
「紅白の話?」
「ええ」
「白組だよ」
「おおう知ってたんですか」
「一応、情報はね」
「流石」
「それくらい覚えてなよね」
「まあまあ、いいじゃないですか。こうやって誰かが教えてくれますしね」
「だからってねえ」
ふふ、と笑ってしまえば、釣られるようにお屋形様がクスリと笑った。
「で、君はどっちを見るの?」
「うん?…ああ。じゃあ、紅白で」
「じゃあって、君ね」
「まあまあ。一緒に見ましょ。年越しそば作ってあげます」
「あらそう。じゃあ、ご一緒しようかな」
「あ、じゃあって言った」
「君の適当が移ったかな」
「あはは、似た者同士だ」
「どうもです、ってね」
二人で目を合わせて笑い合う。
「さあ、今年はどっちが勝つかしら」
「君、どっちにしても忘れるんでしょ」
「否定できない」
まあでも、きっとあなたと見たことは忘れないよ。言ってあげたくなって、恥ずかしくなって、なんとなくやめた。