ふと目についたキャラクターの、気の抜けた感じが彼女の部屋にとても似つかわしいと思ってしまった途端、右手が尻ポケットに潜り込んだ。


ーーカプセル


ガチャポンも値上がりした。とはいえ、最後に回したのはもう十年、いや、二十年も前になるだろう。もっとか。少なくとも、制服を着るようになってからは記憶に無い。保管に困るものを買いたくないからだ。何より、歳を取れば取るほどこういうのは安っぽい。

だが、彼女はどうだろう。５秒と同じ表情を維持しない彼女の、賑やかな色遣いで構成された部屋。あの一角にこういう細々としたフィギュアが所狭しと並んでいるところを想像するのは容易かった。実際にはあり得ない。なにしろ、あの部屋は賭郎の一画。彼女は今軟禁状態なのだ。

だから、もしかしたら、本当の彼女の部屋には、本当にガチャポンで得た小さなフィギュアが所狭しと並んでいたりするのでは。

財布に丁度入っていた四百円を投入する。引っかかりを感じながらもハンドルを回せば、チャリ、と音を立てて小銭が中に落ち、すぐに緑色のカプセルが落ちてきた。拾い上げ、ポケットにしまう。中身は彼女が確認すれば良いだろう。そのまま歩き出す。

ポケットの中、指先に触れるプラスチックの艶々とした質感。たまに爪に引っかかるセロハンテープが指先の注意を引く。その度に中身はどれだったのだろうと想像するのが彼女みたいで、俺は咄嗟にポケットから手を出した。