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いつも通り事務室で任務の説明を受け、立会人室に戻ろうとドアを開けた時の事だ。突然「そうだ」と晴乃が呟いたので振り返る。すると、彼女はにこりともせずに「トリックオアトリート」と言った。


ーー適当ハロウィン


「おい、なんだそれは」
「思い出したので」
「お前さあ」

呆れてそう言えば、彼女は「酷い。皆さんノってくれてますよ」と口を尖らせるものだから本格的に呆れ返る。

「皆さんって誰だよ」
「今日任務の皆さんです」
「よりによって立会人にやってんじゃねえよ馬鹿女」
「いいんですー!みんなちゃんとお菓子用意してくれてましたもーん!」
「はあ?」
「みなさん、お菓子、用意、してくれました」
「ゆっくり言ってんじゃねえよ。無えよ」
「なんでですか」
「胸に手を当てて考えてみろ」
「目蒲さんの愛情不足」
「お前の努力不足だよ」
「ちゃんと言ったじゃないですか」
「本当にやる気があるなら仮装して部屋を訪ねて言え」

ため息をつけば、彼女はより一層不満気な顔をして「けち」と一言。甚だ心外である。

「皆さんくれたのになあ。亜面さんなんか見てくださいよ、このかわいい小袋を。自分で詰めたそうですよ。このクッキーは能輪さん。それにこっちのガムは夜行さんです。掃除人の方の」
「夜行……」
「参りました?」
「目眩がしてる」
「という訳で、目蒲さんも」
「そもそも待ってねえよ」
「なんで」
「普通は任務におやつ持参で行かねえんだよ」
「でもほらこれ」

彼女がまだすべこべと言いそうなので、仕方がなく俺はカウンターまで戻ってくる。

「やっぱりおやつくれるんですか?」
「無えって言ってんだろ。ほら、イタズラするならさっさとしろ」
「へ?」
「任務が控えてる。さっさとしろ」
「おおう」

途端に彼女は視線を彷徨わせるので、なるほど仮装もなければトリックもなかった訳かと理解する。

とはいえ、阿呆に付き合わされてそのまま終わらせるのも癪というもの。

「ほら、何かねえのか馬鹿女」
「ええ……そんな、ないですよう」
「いいのか?」
「待ってそれはなんかもったいない」

彼女はしばらくうんうん唸っていたが、突然ぱっと顔を輝かせて「よし、じゃあ仮装買ってきてください」と一言。思わず「はあ?」と返す。

「散々馬鹿にされたので」
「馬鹿を馬鹿と言って何が悪い。反省しろ」
「分かりました。仮装します」
「馬鹿が」
「何故」
「第一お前、俺が戻ってくる頃には定時過ぎてんじゃねえか」
「確かに!」
「馬鹿が」
「……まあいいやお夕飯の時に着ます」
「今日誰か食べに来んの?」
「あなただけですね」
「馬鹿じゃねえのか」

すると、彼女はけらけら笑って「ちゃんとおやつも用意してくださいね」なんて言うので、俺は脱力して「馬鹿だよな、お前」と返した。
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