小話
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「貰う訳ないじゃないですかあ」と、彼女はけらけら笑う。バレンタインの翌日、彼女の部屋で夕飯を食べている時の出来事だ。
ーー愛なき彼らの愛ある日常
「貰ったらお返ししなきゃいけませんもん。目蒲さんにバレンタインのお返し買いに行かせるほど、私人使い荒くありませんし」
「どうだかな」
「行ってくれるんですか?」
「行く訳ねえだろ」
「でしょう?」
しかし、結構みなさん逆バレンタインとかするんですねえ。彼女はそう呟いてビールを煽った。それに倣い、俺もビールを飲む。
彼女は賭郎のビル内に軟禁されているので、普段の買い物は全て俺や、同じ女である泉江が代行している。お陰で毎晩の夕飯をここで食べる事ができるので俺としては悪くない話なのだが、イベント好きな彼女はこういう時は実に遺憾だろう。そう思って聞いてみた次第だったが、意外にも彼女はけろっとしているので内心面食らう。すると、彼女はそれをどこまで察してか「恋愛が絡むイベントって好きじゃないんですよねえ」とボソッと言った。
「へえ。お前が」
「嫌いですよお。面倒臭い事この上ない」
「面倒、ねえ」
「想像してみてくださいよ。なんか…好きでもない男から‘くれないかなぁ…’って目で一日中見られて。というか、目蒲さんも好きじゃないでしょう」
「まあな」
「ほらね。まあ、今年はいい言い訳が出来てラッキーでした」
彼女はそう言ってビールを飲み切ると、「無くなっちゃった」と悲しげな声を出した。立ち上がらないところを見るに、今日はこれで終わりにするらしい。仕方がないので、俺もこの一杯で最後にする事を決める。
「お前は酒の方が良いようだな」
「そんな!甘い物も大好きですとも!だから早く目蒲さんが貰ったの分けてくださいよ」
「ねえよ」
「ねえ?!なんっ…なんで?!」
「なんだその驚き様は」
「だって毎年貰ってるじゃないですか!黒服ガールズから、沢山!」
「待て。何で知ってる?」
「乙女の勘です」
「怖えよ」
「まあネタバラシしちゃうと、実は何人かわざわざ私のところに許可取りに来た人がいたんですよ。あげて良いかって」
「はあ?」
「弥鱈君関係もちらほら聞かれました。良いよって答えときました」
「はあー?」
「皆さん私をなんだと思ってるんでしょうね」
「本当にな」
「という訳で目蒲さんと弥鱈君からお裾分けを貰えるつもりだったんですよ私。どうしてくれるんですか」
「知らねえよ」
「おしゃれなチョコが食べたかった。高いやつ」
「マジで知らねえよ。つーか、それなら言っとけ」
「へ?」
晴乃が目を丸くするので、俺は目を逸らす。柄にもない事を言った、とは思う。
「チョコが欲しいですと、私が、貴方に?」
「何だその聞き方は」
「だって…えーそんな…良いんですか?」
「今嫌になったところだよ」
「え、そんな。ひどいひどい。欲しいです目蒲さん。チョコ食べたいです」
「明日な」
「やった!嬉しい!」
ああでももうチョコは売ってないかな、ケーキでもいいですよ。と弾んだ声で訴えてくる彼女の声を聞いて、毎年毎年チョコレートのやり取りが減らない訳を悟る。
これは確かに、気持ちが良い。
ーー愛なき彼らの愛ある日常
「貰ったらお返ししなきゃいけませんもん。目蒲さんにバレンタインのお返し買いに行かせるほど、私人使い荒くありませんし」
「どうだかな」
「行ってくれるんですか?」
「行く訳ねえだろ」
「でしょう?」
しかし、結構みなさん逆バレンタインとかするんですねえ。彼女はそう呟いてビールを煽った。それに倣い、俺もビールを飲む。
彼女は賭郎のビル内に軟禁されているので、普段の買い物は全て俺や、同じ女である泉江が代行している。お陰で毎晩の夕飯をここで食べる事ができるので俺としては悪くない話なのだが、イベント好きな彼女はこういう時は実に遺憾だろう。そう思って聞いてみた次第だったが、意外にも彼女はけろっとしているので内心面食らう。すると、彼女はそれをどこまで察してか「恋愛が絡むイベントって好きじゃないんですよねえ」とボソッと言った。
「へえ。お前が」
「嫌いですよお。面倒臭い事この上ない」
「面倒、ねえ」
「想像してみてくださいよ。なんか…好きでもない男から‘くれないかなぁ…’って目で一日中見られて。というか、目蒲さんも好きじゃないでしょう」
「まあな」
「ほらね。まあ、今年はいい言い訳が出来てラッキーでした」
彼女はそう言ってビールを飲み切ると、「無くなっちゃった」と悲しげな声を出した。立ち上がらないところを見るに、今日はこれで終わりにするらしい。仕方がないので、俺もこの一杯で最後にする事を決める。
「お前は酒の方が良いようだな」
「そんな!甘い物も大好きですとも!だから早く目蒲さんが貰ったの分けてくださいよ」
「ねえよ」
「ねえ?!なんっ…なんで?!」
「なんだその驚き様は」
「だって毎年貰ってるじゃないですか!黒服ガールズから、沢山!」
「待て。何で知ってる?」
「乙女の勘です」
「怖えよ」
「まあネタバラシしちゃうと、実は何人かわざわざ私のところに許可取りに来た人がいたんですよ。あげて良いかって」
「はあ?」
「弥鱈君関係もちらほら聞かれました。良いよって答えときました」
「はあー?」
「皆さん私をなんだと思ってるんでしょうね」
「本当にな」
「という訳で目蒲さんと弥鱈君からお裾分けを貰えるつもりだったんですよ私。どうしてくれるんですか」
「知らねえよ」
「おしゃれなチョコが食べたかった。高いやつ」
「マジで知らねえよ。つーか、それなら言っとけ」
「へ?」
晴乃が目を丸くするので、俺は目を逸らす。柄にもない事を言った、とは思う。
「チョコが欲しいですと、私が、貴方に?」
「何だその聞き方は」
「だって…えーそんな…良いんですか?」
「今嫌になったところだよ」
「え、そんな。ひどいひどい。欲しいです目蒲さん。チョコ食べたいです」
「明日な」
「やった!嬉しい!」
ああでももうチョコは売ってないかな、ケーキでもいいですよ。と弾んだ声で訴えてくる彼女の声を聞いて、毎年毎年チョコレートのやり取りが減らない訳を悟る。
これは確かに、気持ちが良い。