二人四角いぬくもりの中
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「ひょええ?!」
驚いた彼女は、チョコラスクが転がる中で目を白黒させている。正直私も面食らった。そういう事があるとは聞いていたけど、開封時に中身をぶち撒ける人に、本当に出会えるだなんて。
「ええ?!あれ?ラスクは?」
「周りに転がってるのがそうだよ。…ねえ待って、これ溶けかけてるじゃない。どこに置いてたの」
「炬燵の中にあった」
「君馬鹿じゃないの?!スーツがチョコ塗れだよ!」
「大丈夫、私のワンピースも草間彌生模様」
「何お洒落な言い方しようとしてるの。無様なチョコ染みだよ」
「お屋形様から安っぽいチョコの匂いするのウケますね」
「私自ら粛清してあげようか?いいからほら、ティッシュを寄越しなよ」
「仕方がないなあ」
彼女が箱ごと寄越してきたティッシュを引き抜く。
いつまでも引き抜けない。
「ひょええ?!」
「は?ちょっと、ひょええじゃないよ、何これ」
「知らない知らない!誰のいたずら?!」
再び目を白黒させる伏龍君を見て、彼女も騙された側だと察しは付いたが…ティッシュを全て糊で繋げるなんて、手の込んだいたずらをしてくれるじゃないか。
「で、犯人は誰なの」
「絶対弥鱈君です!」
「よし、粛清」
「やっちゃって下さいお屋形様!」
「ああでも、先に君だね」
「なんで?!」
「弥鱈の数倍無礼を働いておいてよく聞けたね」
「そんな、愛故じゃないですか!」
「愛でチョコラスクをぶちまける女性は願い下げだよ」
「酷い!」
ど厚かましくも憤慨した様子を見せる彼女に、「いいから早くチョコを拭き取りなよ」と直したティッシュボックスを差し出す。勿論彼女は疑いもせず、ティッシュだけを見てーー
「ひょええ?!」
「あはは!これでおあいこだね」
ーー見事、弥鱈の仕掛けた悪戯に引っ掛かった。
「もう!お屋形様ったら、どうかと思いますよ?!」
「はは、いいじゃない。これで粛清を免れたんだから」
「それは…確かに?」
「私、君のそういうところ大好き」
「存じております」
彼女がそう笑いながら袋に残ったチョコラスクを勧めてくるので、私はそれを一つ摘んだ。砂糖で誤魔化された安っぽいチョコの味が口に広がって、何だか楽しくなる。この安っぽいお菓子を口にする度に、私はこの日を思い出すのだろう。
「意外とこのラスク、悪くないよね」
「ふふ、そうでしょ」
彼女は笑う。楽しそうに、穏やかに。
ーーーーーーーーーー
「何してるんですか?門倉立会人」
「しっ!…なんや、銅寺立会人かいな」
「なんやって…こっちは疑問が募るばかりですよ。何故先生の部屋の前で聞き耳を立ててらっしゃるんですか」
「ええか…今この中にお屋形様がおる。お屋形様付き無しでじゃ。ちゅうことは、分かるか?今二人が喧嘩しよったら…立会はワシのもんじゃ!」
「OK?足音の工作はOK?じゃなきゃお屋形様に気付かれてると思いますよ」
目を見開いた門倉立会人。どうやら作戦失敗みたい。一緒にされては敵わないので、僕はそのまま事務室に提出書類を置きに行った。
驚いた彼女は、チョコラスクが転がる中で目を白黒させている。正直私も面食らった。そういう事があるとは聞いていたけど、開封時に中身をぶち撒ける人に、本当に出会えるだなんて。
「ええ?!あれ?ラスクは?」
「周りに転がってるのがそうだよ。…ねえ待って、これ溶けかけてるじゃない。どこに置いてたの」
「炬燵の中にあった」
「君馬鹿じゃないの?!スーツがチョコ塗れだよ!」
「大丈夫、私のワンピースも草間彌生模様」
「何お洒落な言い方しようとしてるの。無様なチョコ染みだよ」
「お屋形様から安っぽいチョコの匂いするのウケますね」
「私自ら粛清してあげようか?いいからほら、ティッシュを寄越しなよ」
「仕方がないなあ」
彼女が箱ごと寄越してきたティッシュを引き抜く。
いつまでも引き抜けない。
「ひょええ?!」
「は?ちょっと、ひょええじゃないよ、何これ」
「知らない知らない!誰のいたずら?!」
再び目を白黒させる伏龍君を見て、彼女も騙された側だと察しは付いたが…ティッシュを全て糊で繋げるなんて、手の込んだいたずらをしてくれるじゃないか。
「で、犯人は誰なの」
「絶対弥鱈君です!」
「よし、粛清」
「やっちゃって下さいお屋形様!」
「ああでも、先に君だね」
「なんで?!」
「弥鱈の数倍無礼を働いておいてよく聞けたね」
「そんな、愛故じゃないですか!」
「愛でチョコラスクをぶちまける女性は願い下げだよ」
「酷い!」
ど厚かましくも憤慨した様子を見せる彼女に、「いいから早くチョコを拭き取りなよ」と直したティッシュボックスを差し出す。勿論彼女は疑いもせず、ティッシュだけを見てーー
「ひょええ?!」
「あはは!これでおあいこだね」
ーー見事、弥鱈の仕掛けた悪戯に引っ掛かった。
「もう!お屋形様ったら、どうかと思いますよ?!」
「はは、いいじゃない。これで粛清を免れたんだから」
「それは…確かに?」
「私、君のそういうところ大好き」
「存じております」
彼女がそう笑いながら袋に残ったチョコラスクを勧めてくるので、私はそれを一つ摘んだ。砂糖で誤魔化された安っぽいチョコの味が口に広がって、何だか楽しくなる。この安っぽいお菓子を口にする度に、私はこの日を思い出すのだろう。
「意外とこのラスク、悪くないよね」
「ふふ、そうでしょ」
彼女は笑う。楽しそうに、穏やかに。
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「何してるんですか?門倉立会人」
「しっ!…なんや、銅寺立会人かいな」
「なんやって…こっちは疑問が募るばかりですよ。何故先生の部屋の前で聞き耳を立ててらっしゃるんですか」
「ええか…今この中にお屋形様がおる。お屋形様付き無しでじゃ。ちゅうことは、分かるか?今二人が喧嘩しよったら…立会はワシのもんじゃ!」
「OK?足音の工作はOK?じゃなきゃお屋形様に気付かれてると思いますよ」
目を見開いた門倉立会人。どうやら作戦失敗みたい。一緒にされては敵わないので、僕はそのまま事務室に提出書類を置きに行った。