君を乗せる星の船
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普段ならテメェで対処するだろうと放っておくところを庇ったのは、彼女があまりにも悲しそうな顔をしたからだった。
黒服が吹っ飛ぶ。反射的に自分を殴った相手を睨み付けて、それが俺と気付いてすぐに顔を伏せた。立ち上がってそそくさと出て行こうとするのがまた腹立たしく、俺は黒服の頭を鷲掴みにする。
「謝れよ。あーやーまーれーよ!私の様な雑魚が貴女とヤろうとしてすみませんでしたって言えよオイ!」
ずるずる引き摺って行って、カウンターに頭を押し付ける。荒事に慣れていない晴乃が顔を顰めた。構わず、押し付ける手に力を込める。
暫く耐えたが、黒服はくぐもった声で「すみませんでした」と言った。フルで言い直させようか迷ったが、あまり長引くと滝さんから小言が来そうだったのでこの辺で解放する。
「脅かして悪かったな。大丈夫か?」
「大丈夫です。スッキリしました。ホントありがとうございました」
「の割にはまだぶちぎれてんなぁ」
「そりゃあ、ねえ。普通素面であんな事言いますかね」
「暴だけで入ってきた奴もいるからなぁ。アイツもどうせ馬鹿だろ」
「…なんか、能輪さんの言い草聞いてるとスッキリする」
「んだそりゃ」
「いつもは敵作りそうだなぁと思ってますけど、今だけははもっと言って!ってなってます」
背中にデート権を括り付けた彼女を口説かんと、普段彼女に手の届かない黒服共が奮闘していると聞いて事務室を訪れた次第だったが、来て正解だった。丁度一際無礼な黒服に「一発ヤらせてくれたら後は自由時間でいいんで」というクソみてえな交渉を持ちかけられていたところだったからだ。
「意外と黒服さん達に舐められてました、私。立会人さん達が普通に扱って下さるから油断してましたけど」
「黒服はなぁ。なーんか、たまに自分が一番強えと勘違いしてんのがいるんだよな」
「初期の目蒲さんかよ」
「お前たまに目蒲立会人に辛辣よな」
「愛故です」
「目蒲立会人も度肝を抜かれるだろうぜ」
「大丈夫、陰でやってるから」
「尚更悪くね?」
暫く話していても一向に晴乃の機嫌が戻らないので、俺はどうしてやったもんかと悩む。きっと、俺達男が考えるよりももっと自尊心を削られたのだろう。イラつくのも当然だ。
「なんか、わりいな」
「あれ?能輪さんの黒服じゃありませんでしたよね?」
「いや…いつも言っちまってるからよ」
「ああ…」
晴乃はにやりと笑って「この期に改めてくれていいですよ」と言った。
「でもお前とヤりたいのは事実だもん」
「嫌ですよ、いつも言ってますけど」
大袈裟にため息は吐くものの、不思議とそこまで嫌がりはしない。初めてこれを口にした時からそうだったけど。
「なあなあ、年休は俺とデートしろよ。いい思いさせてやっからよ」
「えー、嫌ですよ。どうせ最後はホテルでしょ?」
「嫌なら行かねえよ。どっかの馬鹿と違って嫌がる女を抱く趣味はねえし。な?頼むよ」
「うーん」
彼女は片頬を人差し指で潰しながら、ちょっと考える素振りを見せる。
「能輪さんが…カード守ってくれるって仰るなら考えます」
「お安い御用」
俺は晴乃の机からマーカーを一本拝借して、背中のカードに‘能輪巳虎予約済み。取ったら殺す!’と書いた。カードへの落書きによる牽制はルールに抵触しない。
「これでアホはだいぶ減ると思うぜ。それでもつっかかってくる馬鹿は自分で対処してくれや」
「怖いなあ。何書いたんですか?」
「取ってのお楽しみな」
俺はペンに蓋をして、それでカードを弾く。
「じゃ、デートコース考えとくわ」
「楽しみにしてますね」
彼女は笑って手を振った。いつの間にか、機嫌は直っているようだった。
黒服が吹っ飛ぶ。反射的に自分を殴った相手を睨み付けて、それが俺と気付いてすぐに顔を伏せた。立ち上がってそそくさと出て行こうとするのがまた腹立たしく、俺は黒服の頭を鷲掴みにする。
「謝れよ。あーやーまーれーよ!私の様な雑魚が貴女とヤろうとしてすみませんでしたって言えよオイ!」
ずるずる引き摺って行って、カウンターに頭を押し付ける。荒事に慣れていない晴乃が顔を顰めた。構わず、押し付ける手に力を込める。
暫く耐えたが、黒服はくぐもった声で「すみませんでした」と言った。フルで言い直させようか迷ったが、あまり長引くと滝さんから小言が来そうだったのでこの辺で解放する。
「脅かして悪かったな。大丈夫か?」
「大丈夫です。スッキリしました。ホントありがとうございました」
「の割にはまだぶちぎれてんなぁ」
「そりゃあ、ねえ。普通素面であんな事言いますかね」
「暴だけで入ってきた奴もいるからなぁ。アイツもどうせ馬鹿だろ」
「…なんか、能輪さんの言い草聞いてるとスッキリする」
「んだそりゃ」
「いつもは敵作りそうだなぁと思ってますけど、今だけははもっと言って!ってなってます」
背中にデート権を括り付けた彼女を口説かんと、普段彼女に手の届かない黒服共が奮闘していると聞いて事務室を訪れた次第だったが、来て正解だった。丁度一際無礼な黒服に「一発ヤらせてくれたら後は自由時間でいいんで」というクソみてえな交渉を持ちかけられていたところだったからだ。
「意外と黒服さん達に舐められてました、私。立会人さん達が普通に扱って下さるから油断してましたけど」
「黒服はなぁ。なーんか、たまに自分が一番強えと勘違いしてんのがいるんだよな」
「初期の目蒲さんかよ」
「お前たまに目蒲立会人に辛辣よな」
「愛故です」
「目蒲立会人も度肝を抜かれるだろうぜ」
「大丈夫、陰でやってるから」
「尚更悪くね?」
暫く話していても一向に晴乃の機嫌が戻らないので、俺はどうしてやったもんかと悩む。きっと、俺達男が考えるよりももっと自尊心を削られたのだろう。イラつくのも当然だ。
「なんか、わりいな」
「あれ?能輪さんの黒服じゃありませんでしたよね?」
「いや…いつも言っちまってるからよ」
「ああ…」
晴乃はにやりと笑って「この期に改めてくれていいですよ」と言った。
「でもお前とヤりたいのは事実だもん」
「嫌ですよ、いつも言ってますけど」
大袈裟にため息は吐くものの、不思議とそこまで嫌がりはしない。初めてこれを口にした時からそうだったけど。
「なあなあ、年休は俺とデートしろよ。いい思いさせてやっからよ」
「えー、嫌ですよ。どうせ最後はホテルでしょ?」
「嫌なら行かねえよ。どっかの馬鹿と違って嫌がる女を抱く趣味はねえし。な?頼むよ」
「うーん」
彼女は片頬を人差し指で潰しながら、ちょっと考える素振りを見せる。
「能輪さんが…カード守ってくれるって仰るなら考えます」
「お安い御用」
俺は晴乃の机からマーカーを一本拝借して、背中のカードに‘能輪巳虎予約済み。取ったら殺す!’と書いた。カードへの落書きによる牽制はルールに抵触しない。
「これでアホはだいぶ減ると思うぜ。それでもつっかかってくる馬鹿は自分で対処してくれや」
「怖いなあ。何書いたんですか?」
「取ってのお楽しみな」
俺はペンに蓋をして、それでカードを弾く。
「じゃ、デートコース考えとくわ」
「楽しみにしてますね」
彼女は笑って手を振った。いつの間にか、機嫌は直っているようだった。