君を乗せる星の船
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拾陸號立会人室に飛び込んできたチビが「門倉さん門倉さん!さあっ!」と言って背中を向けるので、ワシは面食らった。
「何や、泉江とでも行けばええやん」
「え?!門倉さんが取ってくれる話はどこへ?!」
「あれ本気にしとったんかい!」
思わず大声を出すと、チビは「そんな…門倉さんの先約があるつもりで全部断っちゃいました…」と悲しそうな顔をした。
誤解させたんやろか?
コイツを?
つか、コイツが誤解する事があるんか?
ワシは首を傾げつつ、昼前の出来事を思い返す。
ーー事務室の前を通りかかったワシは、入り口近くに普段見かけない黒服達が屯しているのが気になり、中を覗く。いつも通りカウンターで黒服の応対をしているチビがはたとこちらに気付くが、気まずそうに目を逸らした。何でやろと思って中に入ってみると、チビがそれに焦ったのか大きな声で捲し立てる。
「ーーですから!カードを取っても貴方とデートに行く事はありません!お引き取りください!」
「まあまあ、そう頑なにならなくても、お試しと思ってさあ」
「おお下っ端、業務中に何しとる」
見かねたワシは黒服の肩に手を置く。面白いくらいにビビる姿を見て内心心配になった。お前、簡単に口説いとるが、コイツのフォロワーには立会人がゴロゴロおるぞ。噂とか聞かんのかいな。
まあええわ。
ワシは黒服の肩に腕を回して拘束すると、チビに何が起きとるのか聞いてみる。さっきよかもっと気まずそうに、彼女は自分の身に起きている事を話し始めた。
「成る程のぉ。それで黒服共がここぞとばかりに群がっとる訳か」
「そんなに‘成る程’ですか?」
心底辟易した様子のチビが言う。ワシは「そりゃあ、のう?」と腕の中にいる黒服に振るが、男は真っ青な顔でコクコク頷くのみ。なんや、胆力の無い男じゃのう。
「言うこと聞いてくれそうじゃもん」
「話は聞くけど言うことは聞いてないんですよねえ」
「はっはっは。遠くで見とる分には分からんのじゃろ!しっかし、次にいつ貰えるか分からん年休を知らん奴とのデートに当てる馬鹿は居らんわ。お前の考えが足らん。ええか、こうやるんじゃ」
腕の中の男にそう言い聞かせて、入り口を見る。タイミングよく集まってきたギャラリーにも視線を送り、チビに向き直る。
「よおチビ、年休取ってラーメン屋巡り行かんか」
ーーーーーーーーーー
「ラーメン屋さん巡り、誘ってくれたじゃないですか!」
「いや、誘ったには誘ったがのう…お前、嘘って気付かんかったんかい」
「気付きませんでしたよ!‘絶対乗ってくる’って自信十割でしたもん」
「あー、そういうすり抜け方もあるんかお前…」
「真面目に見てたら気付いたかもしれませんけど、そんないつも皆さんのこと疑ってませんし」
「まあ…そうかいな」
「そうでっせ」
「どこの方言じゃ」
「ねえラーメン屋さん行きましょうよー」と背中を見せてくるチビの、くるくる巻かれたリボンを見ながら悩む。本心では行ってもいいと思っとる…いや、むしろ行きたい部類じゃが、年休明けが面倒になりそうじゃけえのう。
「一応確認するが、メカと泉江は何て言うとった?」
「先約があるなら仕方がないって言ってました」
「意外と諦めがええのう」
ワシとカード争奪戦すんのを避けたんか?それとも、この一回でチビを口説き落とせる訳が無いとたかを括っとるんやろか。
「私と貴方が恋仲になるとは思ってないみたいでしたよ」
「あー成る程…って、お前よお分かったな」
「まあ、私ですから」
彼女はけらけら笑うと、「ムカつきますよねえ。私達二人とも、肝心な所での色気がないと思われてるんですよ」と腰に手を当てる。確かにそれは腹立つのお。ワシは顎に手を当てて、暫く考える。
「たまには妬かせたるか」
「あはは、やってやりましょ」
また背中を見せてきたチビから、カードを勢いよく引っ張り取る。
「喜べチビ。当日はワシのバイクのケツに乗せたるわ」
「やった!どこ行きましょうね」
悪戯っぽく笑うチビ。子供っぽいので意外と見落とされがちだが、この女のこういう表情は色っぽかったりする。
「何や、泉江とでも行けばええやん」
「え?!門倉さんが取ってくれる話はどこへ?!」
「あれ本気にしとったんかい!」
思わず大声を出すと、チビは「そんな…門倉さんの先約があるつもりで全部断っちゃいました…」と悲しそうな顔をした。
誤解させたんやろか?
コイツを?
つか、コイツが誤解する事があるんか?
ワシは首を傾げつつ、昼前の出来事を思い返す。
ーー事務室の前を通りかかったワシは、入り口近くに普段見かけない黒服達が屯しているのが気になり、中を覗く。いつも通りカウンターで黒服の応対をしているチビがはたとこちらに気付くが、気まずそうに目を逸らした。何でやろと思って中に入ってみると、チビがそれに焦ったのか大きな声で捲し立てる。
「ーーですから!カードを取っても貴方とデートに行く事はありません!お引き取りください!」
「まあまあ、そう頑なにならなくても、お試しと思ってさあ」
「おお下っ端、業務中に何しとる」
見かねたワシは黒服の肩に手を置く。面白いくらいにビビる姿を見て内心心配になった。お前、簡単に口説いとるが、コイツのフォロワーには立会人がゴロゴロおるぞ。噂とか聞かんのかいな。
まあええわ。
ワシは黒服の肩に腕を回して拘束すると、チビに何が起きとるのか聞いてみる。さっきよかもっと気まずそうに、彼女は自分の身に起きている事を話し始めた。
「成る程のぉ。それで黒服共がここぞとばかりに群がっとる訳か」
「そんなに‘成る程’ですか?」
心底辟易した様子のチビが言う。ワシは「そりゃあ、のう?」と腕の中にいる黒服に振るが、男は真っ青な顔でコクコク頷くのみ。なんや、胆力の無い男じゃのう。
「言うこと聞いてくれそうじゃもん」
「話は聞くけど言うことは聞いてないんですよねえ」
「はっはっは。遠くで見とる分には分からんのじゃろ!しっかし、次にいつ貰えるか分からん年休を知らん奴とのデートに当てる馬鹿は居らんわ。お前の考えが足らん。ええか、こうやるんじゃ」
腕の中の男にそう言い聞かせて、入り口を見る。タイミングよく集まってきたギャラリーにも視線を送り、チビに向き直る。
「よおチビ、年休取ってラーメン屋巡り行かんか」
ーーーーーーーーーー
「ラーメン屋さん巡り、誘ってくれたじゃないですか!」
「いや、誘ったには誘ったがのう…お前、嘘って気付かんかったんかい」
「気付きませんでしたよ!‘絶対乗ってくる’って自信十割でしたもん」
「あー、そういうすり抜け方もあるんかお前…」
「真面目に見てたら気付いたかもしれませんけど、そんないつも皆さんのこと疑ってませんし」
「まあ…そうかいな」
「そうでっせ」
「どこの方言じゃ」
「ねえラーメン屋さん行きましょうよー」と背中を見せてくるチビの、くるくる巻かれたリボンを見ながら悩む。本心では行ってもいいと思っとる…いや、むしろ行きたい部類じゃが、年休明けが面倒になりそうじゃけえのう。
「一応確認するが、メカと泉江は何て言うとった?」
「先約があるなら仕方がないって言ってました」
「意外と諦めがええのう」
ワシとカード争奪戦すんのを避けたんか?それとも、この一回でチビを口説き落とせる訳が無いとたかを括っとるんやろか。
「私と貴方が恋仲になるとは思ってないみたいでしたよ」
「あー成る程…って、お前よお分かったな」
「まあ、私ですから」
彼女はけらけら笑うと、「ムカつきますよねえ。私達二人とも、肝心な所での色気がないと思われてるんですよ」と腰に手を当てる。確かにそれは腹立つのお。ワシは顎に手を当てて、暫く考える。
「たまには妬かせたるか」
「あはは、やってやりましょ」
また背中を見せてきたチビから、カードを勢いよく引っ張り取る。
「喜べチビ。当日はワシのバイクのケツに乗せたるわ」
「やった!どこ行きましょうね」
悪戯っぽく笑うチビ。子供っぽいので意外と見落とされがちだが、この女のこういう表情は色っぽかったりする。