過ぎ去るはエーデルワイス
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私たちは立ち上がり、二人の目の前に出て行く。その後をキュルキュル音を立てながら付いてくる切間さん。青褪める近藤さんとはてなマークを浮かべる猫議員を見ると、これは勝ち戦だと確信できた。
「さっきぶりだね、近藤さん」
私は努めて笑顔を作る。言いたいことはたくさんあるが、ここは交渉のテーブルだから我慢である。俯く彼女の代わりに口を開くのは猫議員。でも、別に庇った訳ではない。なんなら横の'彼女'が真っ青で俯いている事も認識できていない。この二人の間には愛情も尊敬も信頼も、なんにもないのだなと感じた。
「おやおや、君たちはアレですか、昌美君のご友人ですかな?」
「人を売るような女を友達にする気はありませんね~。しかし、自分が陥れた男の顔も分からないとは、随分杜撰な議員もいたもんです」
弥鱈君は携帯の画面を見せる。私の場所からは見えないが、映し出されているのはきっと撮ったばかりのホテル写真だろう。
「一千万」
弥鱈君はそう宣う。さらっとぼりやがった、この人。でも猫議員は未だ事態が飲み込めていないようで、私は日本の行く末を心配してしまう。
「ええと、まさか私、脅されてますかねえ?高校生に」
頓珍漢な質問を返す猫議員に、弥鱈君は肩を竦めて返す。猫議員は「議員ですよ、相手は、議員!いけませんなぁ、相手は選ばないと」と笑い出す。その表情に段々と焦りが混じり始める。やっと事態を飲み込み始めたらしい。
「え、貴方、本気ですか?」
「ええ」
おかしいな、ちゃんと校長には根回しした筈…とぶつぶつ言い出す。
「逆上されることもあるって、分かんないもんかなぁ」
「そういう予測が立つ奴は、そもそも高校生と寝ない」
「あー、そうだね。弥鱈君、賢い」
「どーも」
私たちは目配せをし合う。そして、それにより互いの役割を確認し合う。
私は歩み寄る、私の敵へと。
「お話ししよっか、ね?近藤さん。女のコ同士さ」
「え、あ」
近藤さんは後ずさる。私は今、とても怖い顔をしているのだろうな、と思う。でもさ、ここまでコケにされてニコニコしてろって?無理だよ。
小汚いジジイ一人味方につけたくらいで粋がってんじゃねーよ、ばーか。
踵を返して走り出した近藤さんに、つい「げぇっ…」と声を漏らしてしまう。弥鱈君は「ほら走れ、運動しろ」と茶化す。あーやってらんない!私は彼をひと睨みすると、言われた通り走り出した。
私は近藤さんの背中を追いながら考える。さて、どこを話し合いの舞台にしようかしら。人通りがないところがいいな。そうなるとここの風俗街は抜けてから捕獲だな。風俗街で人通りがないところって、弥鱈君を始め様々な狩る側の人の絶好のポイントだから、女子高生二人でいたら余計なトラブルを招きかねない。切間さんは残念ながら弥鱈君の方に付いたみたいだし。
私は鬼ごっことかで右から来られると左に逃げちゃう本能的なアレを利用しつつ近藤さんを追い詰め、風俗街を抜ける。西に抜ければすぐに駅裏。ここら辺にするか。
私は近藤さんと距離を詰め、体当たり。近藤さんはバランスを崩し、私の下敷きになる形で倒れた。
「つーかまえた!」
面倒臭いので押し倒したまま、そう声を掛ける。日暮れ後の闇の中、駐輪場の蛍光灯が彼女の怯えきった横顔を照らしていた。
「な、なんで?だって、伏龍さん、関係無いじゃない」
「分からない?関係無くても怒れちゃう気持ち、ホントに分からない?」
私は上体を起こし、馬乗りになる。うつ伏せは苦しかろう。彼女も仰向けにしてやった。
「ま、そうだよね。近藤さんは誰のことも大切じゃないもんね」
近藤さんの目が見開かれる。今日は徹底的に凹ませてやる日だって、心に決めている。そんな悲痛な表情くらいじゃ揺らがない。絶対に許さない。
「ね、純粋な興味で聞くんだけどさ、好きでもないおっさんと寝るのってどんな気持ちなの?」
「な、んなの?彼氏なんだけど」
「あ、彼氏なんだー!全然気付かなかったや、ごめんね!」
「当たり前じゃん、援交とか、するわけないし」
「そうだよねー。ウチの高校、みんな真面目だもんね。停学喰らうようなことしてるの、弥鱈君くらいだよね」
あはは、と笑って見せても、近藤さんの怯えは加速するだけ。
「でさぁ、近藤さんはあのおっさんのどこが好きで付き合ってる訳?」
「は?関係ないじゃん」
「いーえー。クラスメートですものー。不純異性交友なら報告しないとねー」
「は、意味わかんないんだけど」
「え、クラスメートがきもいおっさんに好きなようにされてたら対処するよね」
「ほっといてくんない?」
「恋人同士ならねー。でも援交なら見逃せないなー」
「は、何様」
「被害者様。なに、その顔。今イジメられてるのは私だから私が被害者?違うよね、あんたが自分でやったこと、弥鱈君に押し付けたのがそもそもの始まりだよね」
「関係ないじゃんよお前!まじふざけんで!」
「関係あんのよ!こんなことがなければ今日はケーキ食べてたんだよ二人で!それを、こんな、くだらないことで!」
「ケーキごときで人押し倒してんじゃねーよ!馬鹿じゃねーの?!」
「えーそうよ馬鹿よ!弥鱈君とのんびりする時間取られて怒ってる馬鹿よ!あんたには一生分かんないだろうけど、愛するってこういうことだよ!」
「さっきぶりだね、近藤さん」
私は努めて笑顔を作る。言いたいことはたくさんあるが、ここは交渉のテーブルだから我慢である。俯く彼女の代わりに口を開くのは猫議員。でも、別に庇った訳ではない。なんなら横の'彼女'が真っ青で俯いている事も認識できていない。この二人の間には愛情も尊敬も信頼も、なんにもないのだなと感じた。
「おやおや、君たちはアレですか、昌美君のご友人ですかな?」
「人を売るような女を友達にする気はありませんね~。しかし、自分が陥れた男の顔も分からないとは、随分杜撰な議員もいたもんです」
弥鱈君は携帯の画面を見せる。私の場所からは見えないが、映し出されているのはきっと撮ったばかりのホテル写真だろう。
「一千万」
弥鱈君はそう宣う。さらっとぼりやがった、この人。でも猫議員は未だ事態が飲み込めていないようで、私は日本の行く末を心配してしまう。
「ええと、まさか私、脅されてますかねえ?高校生に」
頓珍漢な質問を返す猫議員に、弥鱈君は肩を竦めて返す。猫議員は「議員ですよ、相手は、議員!いけませんなぁ、相手は選ばないと」と笑い出す。その表情に段々と焦りが混じり始める。やっと事態を飲み込み始めたらしい。
「え、貴方、本気ですか?」
「ええ」
おかしいな、ちゃんと校長には根回しした筈…とぶつぶつ言い出す。
「逆上されることもあるって、分かんないもんかなぁ」
「そういう予測が立つ奴は、そもそも高校生と寝ない」
「あー、そうだね。弥鱈君、賢い」
「どーも」
私たちは目配せをし合う。そして、それにより互いの役割を確認し合う。
私は歩み寄る、私の敵へと。
「お話ししよっか、ね?近藤さん。女のコ同士さ」
「え、あ」
近藤さんは後ずさる。私は今、とても怖い顔をしているのだろうな、と思う。でもさ、ここまでコケにされてニコニコしてろって?無理だよ。
小汚いジジイ一人味方につけたくらいで粋がってんじゃねーよ、ばーか。
踵を返して走り出した近藤さんに、つい「げぇっ…」と声を漏らしてしまう。弥鱈君は「ほら走れ、運動しろ」と茶化す。あーやってらんない!私は彼をひと睨みすると、言われた通り走り出した。
私は近藤さんの背中を追いながら考える。さて、どこを話し合いの舞台にしようかしら。人通りがないところがいいな。そうなるとここの風俗街は抜けてから捕獲だな。風俗街で人通りがないところって、弥鱈君を始め様々な狩る側の人の絶好のポイントだから、女子高生二人でいたら余計なトラブルを招きかねない。切間さんは残念ながら弥鱈君の方に付いたみたいだし。
私は鬼ごっことかで右から来られると左に逃げちゃう本能的なアレを利用しつつ近藤さんを追い詰め、風俗街を抜ける。西に抜ければすぐに駅裏。ここら辺にするか。
私は近藤さんと距離を詰め、体当たり。近藤さんはバランスを崩し、私の下敷きになる形で倒れた。
「つーかまえた!」
面倒臭いので押し倒したまま、そう声を掛ける。日暮れ後の闇の中、駐輪場の蛍光灯が彼女の怯えきった横顔を照らしていた。
「な、なんで?だって、伏龍さん、関係無いじゃない」
「分からない?関係無くても怒れちゃう気持ち、ホントに分からない?」
私は上体を起こし、馬乗りになる。うつ伏せは苦しかろう。彼女も仰向けにしてやった。
「ま、そうだよね。近藤さんは誰のことも大切じゃないもんね」
近藤さんの目が見開かれる。今日は徹底的に凹ませてやる日だって、心に決めている。そんな悲痛な表情くらいじゃ揺らがない。絶対に許さない。
「ね、純粋な興味で聞くんだけどさ、好きでもないおっさんと寝るのってどんな気持ちなの?」
「な、んなの?彼氏なんだけど」
「あ、彼氏なんだー!全然気付かなかったや、ごめんね!」
「当たり前じゃん、援交とか、するわけないし」
「そうだよねー。ウチの高校、みんな真面目だもんね。停学喰らうようなことしてるの、弥鱈君くらいだよね」
あはは、と笑って見せても、近藤さんの怯えは加速するだけ。
「でさぁ、近藤さんはあのおっさんのどこが好きで付き合ってる訳?」
「は?関係ないじゃん」
「いーえー。クラスメートですものー。不純異性交友なら報告しないとねー」
「は、意味わかんないんだけど」
「え、クラスメートがきもいおっさんに好きなようにされてたら対処するよね」
「ほっといてくんない?」
「恋人同士ならねー。でも援交なら見逃せないなー」
「は、何様」
「被害者様。なに、その顔。今イジメられてるのは私だから私が被害者?違うよね、あんたが自分でやったこと、弥鱈君に押し付けたのがそもそもの始まりだよね」
「関係ないじゃんよお前!まじふざけんで!」
「関係あんのよ!こんなことがなければ今日はケーキ食べてたんだよ二人で!それを、こんな、くだらないことで!」
「ケーキごときで人押し倒してんじゃねーよ!馬鹿じゃねーの?!」
「えーそうよ馬鹿よ!弥鱈君とのんびりする時間取られて怒ってる馬鹿よ!あんたには一生分かんないだろうけど、愛するってこういうことだよ!」