過ぎ去るはエーデルワイス
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
伏龍という俺のウィークポイントを知っていたのは萩原先生だけ。ならば、通報者は俺と伏龍の関係を知らない、縁の薄い人間。通報者はいつどうやって俺の事を知ったのか?どうして俺に罪をなすりつけたのか?それを知りたい。相手は議員で、俺たちは高校生。手札を揃えなければ。
俺は近藤聖司の体を調べる。傷のつき方を舐めるように一つ一つ調べれば、面白いことが分かった。伏龍を呼び寄せる。
「見てみろ」
「ほっぺだね」
思わず小突く。こいつは本当に、人の感情以外には、本当に、鈍い。なんとかならないのか。
「だから、ここだけ平手」
「むしろ他は?」
「グーパン。下のそれとかは踏まれた痕」
「そうなんだ。なんでだろ」
「多分、別の奴」
「ああ」
誰だろうね、叩いたの。伏龍は腕を組みながら近藤聖司を見下ろす。そして思い立った様に数歩移動するとしゃがみ込み、枕元のキャビネットを調べる。大胆さに苦笑しながらも、彼女の頭の上からそれを覗き込む。引き出しは一段目以外空だった。昨日から一度も目を覚ましていないと考えれば当然か。そこにあるのは、彼が殴られる直前まで身につけていたものなのだろう。ほつれた財布と型落ちの携帯のみ。鞄を持つ女性と違い、男性ならこんなもんか、とため息を吐く。しかし、伏龍は貪欲だった。まず携帯を取り出し、弄る。そしてパスワードを突破出来ずに諦め、財布を覗いた。金には目をくれず、カード類を一枚一枚注意深く眺め出す。しかし、結局分かったのは近藤聖司という名が偽名ではないということだけだった。肩を落とす伏龍の手から財布を取り、更に探る。カード入れの一つから、名刺が十数枚出てきた。
「あんじゃん」
「ん?」
しゃがみ込んだままでは名刺の裏側しか見えないので仕方がない。俺は名刺の束から議員の肩書きが付いている3枚を選び取り、伏龍に渡した。
「おお」
「そのどれかだ」
「どれだろ」
伏龍がトランプの様にその3枚の名刺を広げ持ち、まじまじと眺める。
「あ」
「うん?」
俺は伏龍の手から名刺を一枚引き抜いた。不思議そうな伏龍を立たせ、名刺を蛍光灯の光が当たりやすい場所で見せてやる。
滲んだ汗の模様の、その通りに名刺を持つ。両手で握りこむ様な形。次に声を上げるのは伏龍だった。
「凄く、悔しい気持ちだったんだ。これ貰った時」
実際は、そう。こうやって軽く手を添えていたのではない。汗がにじむくらいに強く、両手で握っていたのだろう。実際には殴ることのできない、この猫登議員の代わりに。
「コイツを調べるぞ」
伏龍は神妙な顔で頷く。俺の退学劇が見えていた以上の意味を持つであろうことを、肌で感じていた。
俺は近藤聖司の体を調べる。傷のつき方を舐めるように一つ一つ調べれば、面白いことが分かった。伏龍を呼び寄せる。
「見てみろ」
「ほっぺだね」
思わず小突く。こいつは本当に、人の感情以外には、本当に、鈍い。なんとかならないのか。
「だから、ここだけ平手」
「むしろ他は?」
「グーパン。下のそれとかは踏まれた痕」
「そうなんだ。なんでだろ」
「多分、別の奴」
「ああ」
誰だろうね、叩いたの。伏龍は腕を組みながら近藤聖司を見下ろす。そして思い立った様に数歩移動するとしゃがみ込み、枕元のキャビネットを調べる。大胆さに苦笑しながらも、彼女の頭の上からそれを覗き込む。引き出しは一段目以外空だった。昨日から一度も目を覚ましていないと考えれば当然か。そこにあるのは、彼が殴られる直前まで身につけていたものなのだろう。ほつれた財布と型落ちの携帯のみ。鞄を持つ女性と違い、男性ならこんなもんか、とため息を吐く。しかし、伏龍は貪欲だった。まず携帯を取り出し、弄る。そしてパスワードを突破出来ずに諦め、財布を覗いた。金には目をくれず、カード類を一枚一枚注意深く眺め出す。しかし、結局分かったのは近藤聖司という名が偽名ではないということだけだった。肩を落とす伏龍の手から財布を取り、更に探る。カード入れの一つから、名刺が十数枚出てきた。
「あんじゃん」
「ん?」
しゃがみ込んだままでは名刺の裏側しか見えないので仕方がない。俺は名刺の束から議員の肩書きが付いている3枚を選び取り、伏龍に渡した。
「おお」
「そのどれかだ」
「どれだろ」
伏龍がトランプの様にその3枚の名刺を広げ持ち、まじまじと眺める。
「あ」
「うん?」
俺は伏龍の手から名刺を一枚引き抜いた。不思議そうな伏龍を立たせ、名刺を蛍光灯の光が当たりやすい場所で見せてやる。
滲んだ汗の模様の、その通りに名刺を持つ。両手で握りこむ様な形。次に声を上げるのは伏龍だった。
「凄く、悔しい気持ちだったんだ。これ貰った時」
実際は、そう。こうやって軽く手を添えていたのではない。汗がにじむくらいに強く、両手で握っていたのだろう。実際には殴ることのできない、この猫登議員の代わりに。
「コイツを調べるぞ」
伏龍は神妙な顔で頷く。俺の退学劇が見えていた以上の意味を持つであろうことを、肌で感じていた。