過ぎ去るはエーデルワイス
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校長室に案内された俺たちは、俺と伏龍、萩原先生と校長に分かれて対峙する。粗茶が出された。いいのかこれ、貰って。何かの罠じゃないのか。
「それで、伏龍さん、どうしたんだね、君らしくもない」
校長が足を組んで、伏龍に問いかける。彼女を先に攻略しようとする気持ちは分かる。見た目的に流されてくれそうな気がするし、何より人畜無害だし。しかし、それは危害を加えなければの話。校長は既にコイツに十分な危害を与えている。現に彼女の目には、青い炎が爛々と灯っていた。
「大丈夫です校長先生。ありのままの私です」
「いや、君はもっと賢いだろう?」
嫌味ったらしく俺を見る。見下すような視線が、突き出された顎がイラつきを助長させた。
「こんな生徒とつるんでいるからだね。もっと」
「こんなってどんなですか」
「こら人の話を」
「こんなってどんなですか」
彼女は麗らかに微笑みを送る。
「校長先生の目には、弥鱈君はどう映っていましたか?」
もちろん、大切な生徒だがね。心が全くこもらない声でそう言った校長を、彼女の細まった目が射抜く。違う、と低い声が口から漏れる。
「嫌い…違う、怖い?うん。怖いと思っていたんですね。それは暴力的だから?ううん、それだけじゃなく…」
「知も暴も俺の方が上だから」
伏龍の目が見開かれる。不思議そうに俺を見る。その深い墨色の瞳に「正解だったろ?」と問えば、彼女は頷いた。
「頭でも力でも勝てないと、怖いと思うんですね、校長先生は。敵じゃなくても」
たじろぐ校長に不思議そうに問いかける彼女は、何故そうなるかが理解できない様子だった。男特有の世界観だから無理もない。男は序列の生き物だ。自分の地位を脅かす危険があるものは全力で排除する。基本的にはその牙は適切な相手にしか向けられないものだが、偶にこの男のように自分より格上の目下を四方八方攻撃しまくる男がいる。俺が風俗街に繰り出すのと同じで、コイツも狩場を求めて教育界へ来たのかもしれない。
「あ、じゃあ、もしかして、萩原先生に冷たいのも同じ理由ですか?」
脂汗を噴出させる校長と、狼狽える萩原先生をじっくりと観察する。俺が何故コイツとつるむのが好きかって、居心地の良さに加えて、時々こうやってエラソーな奴に致命傷を与えてくれるからだ。
「萩原先生は弥鱈君のこと怖いって思わないのに、不思議ですね。校長先生だけが萩原先生のことも弥鱈君のことも怖い。でも、校長先生、前は弥鱈君を見下してた。昨日の通報で弥鱈君を相手取ることになったら、急に怖くなっちゃったんですね」
彼女はじいっと校長を見つめる。無遠慮な程に入り込んでいく。校長は唾を飲み込んだ。彼は考える。異常な洞察力をもつこの少女に、何を返すのが正解なのか。どう振る舞うか。どう秘密を守るか。
校長は意を決して、ゆっくりと口を開く。
「伏龍さん、そもそも私は、どちらのことも恐れてはいないよ」
「そうなんですか?」
「ああ」
「じゃあ、どうして人質を取ったんですか?」
そう首をかしげる伏龍は、直後萩原先生を見て更に首の角度を大きくした。何かしらの反応を捉えたらしい。
「萩原先生、なんで先生が怯えるんですか?」
「怯えて見えたか?」
「はい」
「人質」
「え、嘘」
俺はピンときて口を挟む。隣の反応を見れば、ビンゴと分かった。
「職?家族?」
「職、みたい」
「校長に、職を?」
「んぅ…萩原先生は正解って顔だけど、校長先生は違うって顔」
「ふーん。じゃ、通報者が脅せって言ったんだ?」
「んー、60点くらい?」
「通報者に脅された校長が、俺たちを脅した」
「あ、凄い、100点…って」
四方八方脅しやがって!プンスカ怒り出す伏龍を他所に、俺は校長を見つめる。因みに萩原先生は伏龍を宥めている。任せよう、アイツああなるとめんどくさいし。
「脅されてたんですねえ~、アンタも」
「いや、そんなことはないよ」
「アイツあれで、警察の娘なんですよ~」
「そ、そうなのか…」
本来、だからなんだって話なのだが、校長には効果があったらしい。権威に弱いのか、通報者がその筋なのか。是非伏龍にハッキリさせて欲しいのだが、今コイツは萩原先生に「萩原先生みたいな立派な人を辞めさせる位なら田中先生みたいなエロオヤジを辞めさせれば良いんだこんちくしょー!」と吠えている。つか、田中に何されたんだよお前。
とにかく、一人でやるしかないらしい。
「はぁ~」
俺は大きくため息をついて、校長を睨み上げる。既に伏龍によって鎧を剥がされたこの男に興味はないが、この男の後ろにはもっとエラソーな奴が待ち構えているらしい。面倒だが、やってやろうじゃないか。
「それで、伏龍さん、どうしたんだね、君らしくもない」
校長が足を組んで、伏龍に問いかける。彼女を先に攻略しようとする気持ちは分かる。見た目的に流されてくれそうな気がするし、何より人畜無害だし。しかし、それは危害を加えなければの話。校長は既にコイツに十分な危害を与えている。現に彼女の目には、青い炎が爛々と灯っていた。
「大丈夫です校長先生。ありのままの私です」
「いや、君はもっと賢いだろう?」
嫌味ったらしく俺を見る。見下すような視線が、突き出された顎がイラつきを助長させた。
「こんな生徒とつるんでいるからだね。もっと」
「こんなってどんなですか」
「こら人の話を」
「こんなってどんなですか」
彼女は麗らかに微笑みを送る。
「校長先生の目には、弥鱈君はどう映っていましたか?」
もちろん、大切な生徒だがね。心が全くこもらない声でそう言った校長を、彼女の細まった目が射抜く。違う、と低い声が口から漏れる。
「嫌い…違う、怖い?うん。怖いと思っていたんですね。それは暴力的だから?ううん、それだけじゃなく…」
「知も暴も俺の方が上だから」
伏龍の目が見開かれる。不思議そうに俺を見る。その深い墨色の瞳に「正解だったろ?」と問えば、彼女は頷いた。
「頭でも力でも勝てないと、怖いと思うんですね、校長先生は。敵じゃなくても」
たじろぐ校長に不思議そうに問いかける彼女は、何故そうなるかが理解できない様子だった。男特有の世界観だから無理もない。男は序列の生き物だ。自分の地位を脅かす危険があるものは全力で排除する。基本的にはその牙は適切な相手にしか向けられないものだが、偶にこの男のように自分より格上の目下を四方八方攻撃しまくる男がいる。俺が風俗街に繰り出すのと同じで、コイツも狩場を求めて教育界へ来たのかもしれない。
「あ、じゃあ、もしかして、萩原先生に冷たいのも同じ理由ですか?」
脂汗を噴出させる校長と、狼狽える萩原先生をじっくりと観察する。俺が何故コイツとつるむのが好きかって、居心地の良さに加えて、時々こうやってエラソーな奴に致命傷を与えてくれるからだ。
「萩原先生は弥鱈君のこと怖いって思わないのに、不思議ですね。校長先生だけが萩原先生のことも弥鱈君のことも怖い。でも、校長先生、前は弥鱈君を見下してた。昨日の通報で弥鱈君を相手取ることになったら、急に怖くなっちゃったんですね」
彼女はじいっと校長を見つめる。無遠慮な程に入り込んでいく。校長は唾を飲み込んだ。彼は考える。異常な洞察力をもつこの少女に、何を返すのが正解なのか。どう振る舞うか。どう秘密を守るか。
校長は意を決して、ゆっくりと口を開く。
「伏龍さん、そもそも私は、どちらのことも恐れてはいないよ」
「そうなんですか?」
「ああ」
「じゃあ、どうして人質を取ったんですか?」
そう首をかしげる伏龍は、直後萩原先生を見て更に首の角度を大きくした。何かしらの反応を捉えたらしい。
「萩原先生、なんで先生が怯えるんですか?」
「怯えて見えたか?」
「はい」
「人質」
「え、嘘」
俺はピンときて口を挟む。隣の反応を見れば、ビンゴと分かった。
「職?家族?」
「職、みたい」
「校長に、職を?」
「んぅ…萩原先生は正解って顔だけど、校長先生は違うって顔」
「ふーん。じゃ、通報者が脅せって言ったんだ?」
「んー、60点くらい?」
「通報者に脅された校長が、俺たちを脅した」
「あ、凄い、100点…って」
四方八方脅しやがって!プンスカ怒り出す伏龍を他所に、俺は校長を見つめる。因みに萩原先生は伏龍を宥めている。任せよう、アイツああなるとめんどくさいし。
「脅されてたんですねえ~、アンタも」
「いや、そんなことはないよ」
「アイツあれで、警察の娘なんですよ~」
「そ、そうなのか…」
本来、だからなんだって話なのだが、校長には効果があったらしい。権威に弱いのか、通報者がその筋なのか。是非伏龍にハッキリさせて欲しいのだが、今コイツは萩原先生に「萩原先生みたいな立派な人を辞めさせる位なら田中先生みたいなエロオヤジを辞めさせれば良いんだこんちくしょー!」と吠えている。つか、田中に何されたんだよお前。
とにかく、一人でやるしかないらしい。
「はぁ~」
俺は大きくため息をついて、校長を睨み上げる。既に伏龍によって鎧を剥がされたこの男に興味はないが、この男の後ろにはもっとエラソーな奴が待ち構えているらしい。面倒だが、やってやろうじゃないか。