過ぎ去るはエーデルワイス
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今日何回目になるかのため息。
俺はコイツを絶対強者だと思っている。コイツが進軍を始めたらもう止まらない。この強情女はその底抜けの強かさと洞察力だけを武器に必ず目的を遂げてくる。
だが、分が悪い。
俺だって足掻こうと思わなかった訳ではない。認めよう。執着は、ある。だが、ここで執着を見せればどうなるか。
天秤に掛けなければならない時もある。今回の場合は、俺の人生と、コイツの人生とを。
言いたい事の全部は言えない。相談もしてやれない。黙ってお前を手放さなければいけない日が来たんだよ。
俺は伏龍の頭をくしゃくしゃに撫で回す。何も言ってはやれないが、どうか本当の気持ちだけはお前が持って行ってくれ。
「ガキじゃあるまいし、諦めろって。な?」
「もう、やめてよね」
伏龍はぺしっと俺の手を叩いて、睨みつける。特に怖いとも申し訳ないとも思わないが、一応謝っておく。彼女は憮然とした表情で「許す」と言った。許されたようには見えないが、まあいいか。
彼女はようやく俺から離れ、さっきまでが嘘のようにすくっと立ち上がる。しゃんと伸びた背筋は、いつもながら彼女の人柄をよく表している。俺がいなくても上手く生きてってくれよ。そもそも俺無しでもスタスタ歩いていけそうだが。
「それじゃ弥鱈君、私行かないと」
「おー」
「授業受けなよ」
「どうすっかな」
「来なよ」
「退学だし」
「ひっくり返ったら後悔するよ」
「ねーだろ」
「あるかもよ」
「なんで」
「殴ってないんでしょ?」
「は?」
「え?」
「いや、待て」
「違うの?」
「違わないケド」
「じゃ、いいね」
「だから待て」
「何?」
「お前、どこに行く気だ」
「バレた?」
「バレるわ」
頭を抱えた。簡単に諦める女ではないのは知っていたが、マジかよ。
「無理が通れば道理がひっこんじゃって困るね、弥鱈君」
「何する気だ、やっぱいい、よく分かった。やめろこの強情女」
彼女はにっと笑う。
「じゃ、私は行くよ」
「待てって」
「何?」
「分が悪い」
「私じゃ無理?」
「俺でも無理」
「そっか」
「おー。やめろ」
「やなこった」
「おい」
「無理でいいの、もう」
「は?」
「あのさ、私は執着するよ、弥鱈君に。弥鱈君が何を思おうが、する。だから今から足掻くからね」
「やめろ強情女」
俺は立ち上がる。
「一人じゃ分が悪いっつってんだろ、そこまで言うなら俺も行く」
彼女は頷き、階段を降りていった。早足にその背中に追いつき、肩を並べる。涙の筋の残る頬と裏腹に、彼女の目は爛々と輝いていた。
俺はコイツを絶対強者だと思っている。コイツが進軍を始めたらもう止まらない。この強情女はその底抜けの強かさと洞察力だけを武器に必ず目的を遂げてくる。
だが、分が悪い。
俺だって足掻こうと思わなかった訳ではない。認めよう。執着は、ある。だが、ここで執着を見せればどうなるか。
天秤に掛けなければならない時もある。今回の場合は、俺の人生と、コイツの人生とを。
言いたい事の全部は言えない。相談もしてやれない。黙ってお前を手放さなければいけない日が来たんだよ。
俺は伏龍の頭をくしゃくしゃに撫で回す。何も言ってはやれないが、どうか本当の気持ちだけはお前が持って行ってくれ。
「ガキじゃあるまいし、諦めろって。な?」
「もう、やめてよね」
伏龍はぺしっと俺の手を叩いて、睨みつける。特に怖いとも申し訳ないとも思わないが、一応謝っておく。彼女は憮然とした表情で「許す」と言った。許されたようには見えないが、まあいいか。
彼女はようやく俺から離れ、さっきまでが嘘のようにすくっと立ち上がる。しゃんと伸びた背筋は、いつもながら彼女の人柄をよく表している。俺がいなくても上手く生きてってくれよ。そもそも俺無しでもスタスタ歩いていけそうだが。
「それじゃ弥鱈君、私行かないと」
「おー」
「授業受けなよ」
「どうすっかな」
「来なよ」
「退学だし」
「ひっくり返ったら後悔するよ」
「ねーだろ」
「あるかもよ」
「なんで」
「殴ってないんでしょ?」
「は?」
「え?」
「いや、待て」
「違うの?」
「違わないケド」
「じゃ、いいね」
「だから待て」
「何?」
「お前、どこに行く気だ」
「バレた?」
「バレるわ」
頭を抱えた。簡単に諦める女ではないのは知っていたが、マジかよ。
「無理が通れば道理がひっこんじゃって困るね、弥鱈君」
「何する気だ、やっぱいい、よく分かった。やめろこの強情女」
彼女はにっと笑う。
「じゃ、私は行くよ」
「待てって」
「何?」
「分が悪い」
「私じゃ無理?」
「俺でも無理」
「そっか」
「おー。やめろ」
「やなこった」
「おい」
「無理でいいの、もう」
「は?」
「あのさ、私は執着するよ、弥鱈君に。弥鱈君が何を思おうが、する。だから今から足掻くからね」
「やめろ強情女」
俺は立ち上がる。
「一人じゃ分が悪いっつってんだろ、そこまで言うなら俺も行く」
彼女は頷き、階段を降りていった。早足にその背中に追いつき、肩を並べる。涙の筋の残る頬と裏腹に、彼女の目は爛々と輝いていた。