過ぎ去るはエーデルワイス
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「よお」
「おはよ」
弥鱈君が肩からずり落とした鞄が、ドス、と机に当たって音を立てる。雑だなあと眺めていると、弥鱈君はこちらに視線を寄越す。私は頷いた。彼も頷いた。反対隣の酒井君がうろんな目で私達を見る。「なに」と弥鱈君がぶっきらぼうに聞くと、彼はわざわざ視線を逸らし、「相変わらず通じ合ってますねー」と答えた。
「まあね。三年間隣の席だとね」
「どんだけだよ」
「みんなが譲ってくれるのがいけないと思うの」
「席替えしても次の日には隣が伏龍に代わってる」
「弥鱈君怖いからじゃない?」
「お前のが怖い」
「まんじゅうこわい的な?」
「ばーか」
酒井君は楽しそうに私達を眺めた。この人は早い段階で弥鱈君と打ち解けた一人で、よく私達の関係を冷やかしてくる。この人のお陰で'弥鱈君意外と温厚説'が流れたけど、この人のせいで'弥鱈君と伏龍さん付き合ってる説'も流れたので、一概に感謝もできない。そんな人物である。因みに、最初は弥鱈君への恐怖心故に私をスケープゴートにする勢力のせいで隣の席になっていたのだが、今は件の付き合ってる説のせいで隣にされる割合が多い。
とにかく、とんでもねえ奴なのである。いい奴だが。
「で、まんじゅうこわい弥鱈はなにを頷き合ってたの?」
「はぁ~?」
怖っ!と、酒井君は大袈裟に竦みあがるポーズをとった。お互い全く本気ではないようなので私は放置するが、そうもいかないのが恋する乙女である。
「ちょっと、なに朝っぱらからあっくんにガンつけてくれてんの?」
酒井君の彼女、翠ちゃんの登場だ。彼女もまた早い段階で弥鱈君と打ち解けた一人で、噂の流布を手伝った悪女である。何が悪女って、私達をおちょくりまくる過程で愛を育んじゃった辺りがもうね。
「文句はアンタの彼氏に言え」
「そーだそーだ!」
因みに、翠ちゃんが参戦して来たら私は無条件で弥鱈君につくことにしている。
「なに、あっくん何かしたの?」
「いーや、いつものヤツ」
「あー」
翠ちゃんはこっちを睨んで、「あんたら分かりにくいのよ」と言った。弥鱈君が舌打ちで返すのでそれを諌めて、私が反論する。
「別に、私達が放課後どこに行こうが良いじゃない」
「放課後の話だったことさえ初耳だよ」
「ほら、分かりにくい」
「もー。だから、今日の放課後は新作ケーキ食べに行こうねって話してたの!満足?」
「次から口でやってくれたら満足だな」
「それはめんどい」
「めんどくせえ」
そこまで話したところで、萩原先生が教室に入って来たので自席に戻る。そこでやっと今日は後ろの席が空、つまり、近藤さんがお休みしているのに気付いた。先生の登場まで話し込んでしまったのはこのせいか、と一人納得した。いつもなら時間が近付くと近藤さんが席に着こうと遠慮がちに近づいてくるのだが、今日はそれがなかったのだ。
「あれ?近藤いないのか。誰か聞いてないかー?」
萩原先生も気付いたらしく、全員に声を掛ける。やっぱり誰も知らないのだろう。ざわざわと、みんなが小声で情報を探り合う。そこでふと、まさか昨日のこと、勝手に気に揉んでたりしないよな、と不安になった。凄く内気な子だから、もしかしたらあの後'伏龍さん怒ったかも!'とか思いつめているかもしれない。全然そんな事はないんだけど、参ったな。悩んでいるうちに萩原先生の方も諦めたようで、「いいわ、こっちで連絡する。それじゃ、連絡いくぞー」と全体に声を掛ける。これ一つで静かになるんだから、流石進学校。
明日来たら私から声をかけよう。そう決めて、私も先生に向き直った。
「おはよ」
弥鱈君が肩からずり落とした鞄が、ドス、と机に当たって音を立てる。雑だなあと眺めていると、弥鱈君はこちらに視線を寄越す。私は頷いた。彼も頷いた。反対隣の酒井君がうろんな目で私達を見る。「なに」と弥鱈君がぶっきらぼうに聞くと、彼はわざわざ視線を逸らし、「相変わらず通じ合ってますねー」と答えた。
「まあね。三年間隣の席だとね」
「どんだけだよ」
「みんなが譲ってくれるのがいけないと思うの」
「席替えしても次の日には隣が伏龍に代わってる」
「弥鱈君怖いからじゃない?」
「お前のが怖い」
「まんじゅうこわい的な?」
「ばーか」
酒井君は楽しそうに私達を眺めた。この人は早い段階で弥鱈君と打ち解けた一人で、よく私達の関係を冷やかしてくる。この人のお陰で'弥鱈君意外と温厚説'が流れたけど、この人のせいで'弥鱈君と伏龍さん付き合ってる説'も流れたので、一概に感謝もできない。そんな人物である。因みに、最初は弥鱈君への恐怖心故に私をスケープゴートにする勢力のせいで隣の席になっていたのだが、今は件の付き合ってる説のせいで隣にされる割合が多い。
とにかく、とんでもねえ奴なのである。いい奴だが。
「で、まんじゅうこわい弥鱈はなにを頷き合ってたの?」
「はぁ~?」
怖っ!と、酒井君は大袈裟に竦みあがるポーズをとった。お互い全く本気ではないようなので私は放置するが、そうもいかないのが恋する乙女である。
「ちょっと、なに朝っぱらからあっくんにガンつけてくれてんの?」
酒井君の彼女、翠ちゃんの登場だ。彼女もまた早い段階で弥鱈君と打ち解けた一人で、噂の流布を手伝った悪女である。何が悪女って、私達をおちょくりまくる過程で愛を育んじゃった辺りがもうね。
「文句はアンタの彼氏に言え」
「そーだそーだ!」
因みに、翠ちゃんが参戦して来たら私は無条件で弥鱈君につくことにしている。
「なに、あっくん何かしたの?」
「いーや、いつものヤツ」
「あー」
翠ちゃんはこっちを睨んで、「あんたら分かりにくいのよ」と言った。弥鱈君が舌打ちで返すのでそれを諌めて、私が反論する。
「別に、私達が放課後どこに行こうが良いじゃない」
「放課後の話だったことさえ初耳だよ」
「ほら、分かりにくい」
「もー。だから、今日の放課後は新作ケーキ食べに行こうねって話してたの!満足?」
「次から口でやってくれたら満足だな」
「それはめんどい」
「めんどくせえ」
そこまで話したところで、萩原先生が教室に入って来たので自席に戻る。そこでやっと今日は後ろの席が空、つまり、近藤さんがお休みしているのに気付いた。先生の登場まで話し込んでしまったのはこのせいか、と一人納得した。いつもなら時間が近付くと近藤さんが席に着こうと遠慮がちに近づいてくるのだが、今日はそれがなかったのだ。
「あれ?近藤いないのか。誰か聞いてないかー?」
萩原先生も気付いたらしく、全員に声を掛ける。やっぱり誰も知らないのだろう。ざわざわと、みんなが小声で情報を探り合う。そこでふと、まさか昨日のこと、勝手に気に揉んでたりしないよな、と不安になった。凄く内気な子だから、もしかしたらあの後'伏龍さん怒ったかも!'とか思いつめているかもしれない。全然そんな事はないんだけど、参ったな。悩んでいるうちに萩原先生の方も諦めたようで、「いいわ、こっちで連絡する。それじゃ、連絡いくぞー」と全体に声を掛ける。これ一つで静かになるんだから、流石進学校。
明日来たら私から声をかけよう。そう決めて、私も先生に向き直った。