過ぎ去るはエーデルワイス
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夢を見た。懐かしい喫茶店。私達はいつものソファ席で二人並んで座っていた。この席は上手く観葉植物と壁に挟まれていて他人の目を気にしなくて良かったから、私たちのお気に入りだった。
「あ」
「よし」
「いけ」
「っと」
放課後の過ごし方は、ゲームだったり勉強だったり、はたまた普通の会話だったり。場所は喫茶店だったりファミレスだったり公園だったり。TPOにはいくつかの選択肢があって、その組み合わせはお互いの気分で決まった。今回は放課後、喫茶店で、ゲームをして過ごす日だった。最近の弥鱈君はプロトポロスなるゲームにハマっていて、攻略風景を見せてもらっている。律儀にストーリー攻略は私の前でやってくれるのだ。
「あ」
「おおー!」
プレイヤーの勝利を知らせる音楽。私たちはハイタッチ。昨日あれだけ苦戦していたボスに勝って、弥鱈君は口元を緩ませる。そんな彼にケーキを勧めれば、彼はフォークを持ち上げた。
私たちはケーキを一口頬張り、目を見合わせる。
「スイカ?」
「おう」
「意外」
「旨い」
頷きあって、暫くケーキに没頭する。季節の果物をふんだんに使ったこの喫茶店のケーキもまた、私たちのお気に入りだった。このケーキをこの席で食べる為にここにきているといっても過言ではないくらいだ。
「葡萄だって」
「来月?」
「うん」
「いいな」
「ダミアン色だしね」
「突然何言ってんの。ば~か」
「酷い。やめろ陰鬱の魔法使い」
「憂鬱だし」
「ダミアンは憂鬱だけど弥鱈君は陰鬱」
「じゃ、お前は」
「希望の女王エリザベスでいこう」
「似合わねえ」
「なんでや。可愛いじゃん」
「可愛いからだよばーか」
「酷い。やめろ陰険の魔法使い」
「お前ほら、砦の女王ラプンツェルだろ」
「なんでや…あ、言わなくていい。分かった今」
「引きこもり女」
「何故言った」
「そりゃあ」
「あ、それも言わなくていい」
「嫌がらせ」
「だから何故言う」
「あと、無駄にヒットポイント高いところが似ている」
「どゆこと?」
「諦めの悪さ」
「ああー。うん。ばーか」
ヤケとばかりに紅茶を煽れば、つられるように弥鱈君も一口飲んだ。ダージリンの苦味がケーキの甘さを流す。
「来月来ないとね」
「おう」
「ダミアン味」
「ばーか」
弥鱈君は私を小突いて立ち上がる。私も後を追うように立ち上がり、一緒にレジまで歩いていった。マスターは何も言わずとも割り勘にしてくれる。
「ご馳走様です」
「いつもありがとうね」
マスターが微笑む。私は微笑み返すけど、弥鱈君はいつも通り、そっぽを向いて立っていた。
そこで目が覚めて、私は起き上がる。午前五時。微妙に早い。でも、二度寝をしたらあの夢の続きを見そうな気がして躊躇った。ちくしょうあいつめ、人の夢に出てくるとは、なんと迷惑な奴。しかも昔の事そのまんま。
私は頭を掻きながら起き上がる。朝の紅茶を淹れながら、懐かしい夢を反芻する。あの頃はやっぱり楽しかったな。具体的に何が楽しいかと聞かれたら首をかしげるしかないけど、毎日一番自然体だったかもしれない。社会人になってから、私はずっと'先生'だ。なんなら賭郎に入ってからの方が気合を入れて先生してるかも。難物だらけの毎日もそれはそれで楽しいけど、やっぱりあの時の楽しさとは種類が違う。
くすりと笑って、私は顔を洗いに行く。やめよう、私。戻りたい訳じゃ、ないんでしょ?
鏡を見れば、ちゃんと疲れは取れていた。私は私に笑いかける。いつもよりちょっと元気がないみたいだけど、仕方がないよね。その分気合を入れてメイクしよう。誰かさんのせいで、せっかく時間があるんだから。
「あ」
「よし」
「いけ」
「っと」
放課後の過ごし方は、ゲームだったり勉強だったり、はたまた普通の会話だったり。場所は喫茶店だったりファミレスだったり公園だったり。TPOにはいくつかの選択肢があって、その組み合わせはお互いの気分で決まった。今回は放課後、喫茶店で、ゲームをして過ごす日だった。最近の弥鱈君はプロトポロスなるゲームにハマっていて、攻略風景を見せてもらっている。律儀にストーリー攻略は私の前でやってくれるのだ。
「あ」
「おおー!」
プレイヤーの勝利を知らせる音楽。私たちはハイタッチ。昨日あれだけ苦戦していたボスに勝って、弥鱈君は口元を緩ませる。そんな彼にケーキを勧めれば、彼はフォークを持ち上げた。
私たちはケーキを一口頬張り、目を見合わせる。
「スイカ?」
「おう」
「意外」
「旨い」
頷きあって、暫くケーキに没頭する。季節の果物をふんだんに使ったこの喫茶店のケーキもまた、私たちのお気に入りだった。このケーキをこの席で食べる為にここにきているといっても過言ではないくらいだ。
「葡萄だって」
「来月?」
「うん」
「いいな」
「ダミアン色だしね」
「突然何言ってんの。ば~か」
「酷い。やめろ陰鬱の魔法使い」
「憂鬱だし」
「ダミアンは憂鬱だけど弥鱈君は陰鬱」
「じゃ、お前は」
「希望の女王エリザベスでいこう」
「似合わねえ」
「なんでや。可愛いじゃん」
「可愛いからだよばーか」
「酷い。やめろ陰険の魔法使い」
「お前ほら、砦の女王ラプンツェルだろ」
「なんでや…あ、言わなくていい。分かった今」
「引きこもり女」
「何故言った」
「そりゃあ」
「あ、それも言わなくていい」
「嫌がらせ」
「だから何故言う」
「あと、無駄にヒットポイント高いところが似ている」
「どゆこと?」
「諦めの悪さ」
「ああー。うん。ばーか」
ヤケとばかりに紅茶を煽れば、つられるように弥鱈君も一口飲んだ。ダージリンの苦味がケーキの甘さを流す。
「来月来ないとね」
「おう」
「ダミアン味」
「ばーか」
弥鱈君は私を小突いて立ち上がる。私も後を追うように立ち上がり、一緒にレジまで歩いていった。マスターは何も言わずとも割り勘にしてくれる。
「ご馳走様です」
「いつもありがとうね」
マスターが微笑む。私は微笑み返すけど、弥鱈君はいつも通り、そっぽを向いて立っていた。
そこで目が覚めて、私は起き上がる。午前五時。微妙に早い。でも、二度寝をしたらあの夢の続きを見そうな気がして躊躇った。ちくしょうあいつめ、人の夢に出てくるとは、なんと迷惑な奴。しかも昔の事そのまんま。
私は頭を掻きながら起き上がる。朝の紅茶を淹れながら、懐かしい夢を反芻する。あの頃はやっぱり楽しかったな。具体的に何が楽しいかと聞かれたら首をかしげるしかないけど、毎日一番自然体だったかもしれない。社会人になってから、私はずっと'先生'だ。なんなら賭郎に入ってからの方が気合を入れて先生してるかも。難物だらけの毎日もそれはそれで楽しいけど、やっぱりあの時の楽しさとは種類が違う。
くすりと笑って、私は顔を洗いに行く。やめよう、私。戻りたい訳じゃ、ないんでしょ?
鏡を見れば、ちゃんと疲れは取れていた。私は私に笑いかける。いつもよりちょっと元気がないみたいだけど、仕方がないよね。その分気合を入れてメイクしよう。誰かさんのせいで、せっかく時間があるんだから。