過ぎ去るはエーデルワイス
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「理不尽ですよね。本当に自分勝手です」
私がそう言うと、亜面さんは小刻みに頷く。
「許せなかった…!だから私、殺してやったんです!絶対に法律なんかで裁かせたくなかった!親の…親のあんな表情みたら!絶対に許しちゃいけないって!あいつは生きてちゃ駄目だって!」
「そうですよね。やっちゃいけないことですよね」
ふと、自分の両親のことも心配になって、今は余計なこと考えちゃ駄目だって首を振る。
「けど、良かったです。そこで亜面さんが自分を殺す選択をしなくて」
そう伝えれば、亜面さんは突っ伏して泣き出した。私は頬に当てていた手を頭にのせかえ、また撫でる。泣かせておいてやろう。いままでたくさん悩んできたのだろうから。この子もまた、今日やっと内に込めていた気持ちを吐き出したのだから。
「晴乃さんは、目蒲立会人を恨まないのですか…?」
涙が落ち着いてきた頃、亜面さんはそう問うてきた。私は意識して笑顔を作る。
「まだ怒れちゃう時はありますよ。しれっと夕飯に呼ばれようとしてる時とか、'あなたまだ私に甘えるつもり?'ってなります」
「そういう時は…?」
「一品減らしたり、ビール一缶しかあげなかったりします」
「なんというか、夫婦みたいですね」
「…あの人とですかぁ」
「嫌なんですか?」
「暴力伴侶はちょっと」
「その感覚はあったんですね」
亜面さんがちょっと笑う。
「私はほら、仕方がないんですよ。人が思ってることが大体分かっちゃうから。ぶたれてるときだって、あの人がどんな気持ちで暴力に走ったか、手に取るように分かっちゃって、同情しちゃったんですよねえ。だからこういう時に気持ちよく恨みきれないんです」
「…あの、晴乃さん」
「はい」
「もし晴乃さんが心を読めなかったとしたら、晴乃さんは目蒲立会人の事を殺したいくらい恨むと思いますか?」
亜面さんは涙で濡れた目を恐る恐るこちらに向けて、聞いた。私は首をかしげる。
「どうでしょ。少なくとも、気持ちよく根っこまで恨めるんじゃないかなあ」
「そうですか」
亜面さんは吹っ切れたように微笑む。
「ありがとうございます」
「すっきりしました?」
「いえ。でも、自分のこれは普通の感覚なんだなあって思いました」
「そうですか。また、話したい時は気軽に声を掛けて下さいね。二人の時間、つくるので」
「ありがとうございます」
亜面さんは立ち上がりかけて、また座る。
「立ちくらみ?」
「まさか。立会人は立ちくらみなんてしません」
「やだかっこいい」
亜面さんは声を上げて笑うと、すぐに笑顔をしまって、「私、目蒲立会人の事は許せないと思います」と口早に言った。私は「わざわざ宣言しなくても、分かってますよ」と笑う。
「多分ね、夕湖も銅寺さんも弥鱈君も許してませんよ。普通普通」
「え、それでいいんですか?」
「そりゃあね。それだけのことをしましたもん。その代わりみんなが何を言おうとも私はこのスタンスを変えないよってだけです」
やっぱり晴乃さんは変わってますね。そう亜面さんが笑う。お屋形様も同じこと仰ってましたよ、と言うと、彼女はびっくりした後、また笑った。
私がそう言うと、亜面さんは小刻みに頷く。
「許せなかった…!だから私、殺してやったんです!絶対に法律なんかで裁かせたくなかった!親の…親のあんな表情みたら!絶対に許しちゃいけないって!あいつは生きてちゃ駄目だって!」
「そうですよね。やっちゃいけないことですよね」
ふと、自分の両親のことも心配になって、今は余計なこと考えちゃ駄目だって首を振る。
「けど、良かったです。そこで亜面さんが自分を殺す選択をしなくて」
そう伝えれば、亜面さんは突っ伏して泣き出した。私は頬に当てていた手を頭にのせかえ、また撫でる。泣かせておいてやろう。いままでたくさん悩んできたのだろうから。この子もまた、今日やっと内に込めていた気持ちを吐き出したのだから。
「晴乃さんは、目蒲立会人を恨まないのですか…?」
涙が落ち着いてきた頃、亜面さんはそう問うてきた。私は意識して笑顔を作る。
「まだ怒れちゃう時はありますよ。しれっと夕飯に呼ばれようとしてる時とか、'あなたまだ私に甘えるつもり?'ってなります」
「そういう時は…?」
「一品減らしたり、ビール一缶しかあげなかったりします」
「なんというか、夫婦みたいですね」
「…あの人とですかぁ」
「嫌なんですか?」
「暴力伴侶はちょっと」
「その感覚はあったんですね」
亜面さんがちょっと笑う。
「私はほら、仕方がないんですよ。人が思ってることが大体分かっちゃうから。ぶたれてるときだって、あの人がどんな気持ちで暴力に走ったか、手に取るように分かっちゃって、同情しちゃったんですよねえ。だからこういう時に気持ちよく恨みきれないんです」
「…あの、晴乃さん」
「はい」
「もし晴乃さんが心を読めなかったとしたら、晴乃さんは目蒲立会人の事を殺したいくらい恨むと思いますか?」
亜面さんは涙で濡れた目を恐る恐るこちらに向けて、聞いた。私は首をかしげる。
「どうでしょ。少なくとも、気持ちよく根っこまで恨めるんじゃないかなあ」
「そうですか」
亜面さんは吹っ切れたように微笑む。
「ありがとうございます」
「すっきりしました?」
「いえ。でも、自分のこれは普通の感覚なんだなあって思いました」
「そうですか。また、話したい時は気軽に声を掛けて下さいね。二人の時間、つくるので」
「ありがとうございます」
亜面さんは立ち上がりかけて、また座る。
「立ちくらみ?」
「まさか。立会人は立ちくらみなんてしません」
「やだかっこいい」
亜面さんは声を上げて笑うと、すぐに笑顔をしまって、「私、目蒲立会人の事は許せないと思います」と口早に言った。私は「わざわざ宣言しなくても、分かってますよ」と笑う。
「多分ね、夕湖も銅寺さんも弥鱈君も許してませんよ。普通普通」
「え、それでいいんですか?」
「そりゃあね。それだけのことをしましたもん。その代わりみんなが何を言おうとも私はこのスタンスを変えないよってだけです」
やっぱり晴乃さんは変わってますね。そう亜面さんが笑う。お屋形様も同じこと仰ってましたよ、と言うと、彼女はびっくりした後、また笑った。