過ぎ去るはエーデルワイス
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私は門倉さんに向けて親指を立ててみる。彼は無言でその親指を摘み、元に戻した。何も誇る事はないだろうと言いたいらしい。失礼な。
「…話がずれたね、先生。これを踏まえて僕が聞きたいのは、先生は何で賭郎に入ったの?ってこと」
「何でって…話の流れ上仕方がなくですよう」
「先生は賭郎を知っていた。知っていたからあの時、平田様の言葉にすぐに反論できたんじゃない?」
「浩一くんのお父さん…?」
「ちょうど良かった、そいつも賭けるぜ!って、平田様が言った時、先生は間髪入れずにそれを却下した。あれ、今思えば、普段の先生の脳内処理速度じゃ無理だよね」
「わーお失礼な」
「ゴメン。でも、先生が僕の黒服を見た瞬間に、平田様がギャンブルをしているんだって悟ったんだとしたら、あの反応速度に説明がつくって思ったんだ」
「まぁ…はい」
「だから、聞かせてよ。どうして先生は賭郎に?」
やっと話が読めた。つまり、銅寺さんの質問は、私が全て知った上で、敢えて巻き込まれに来たんじゃないかと、そういうことだろう。少し悩んで、そういえば今日は正直に言う日って決めたんだったと思い出す。
「はっきり言いましょう。浩一く…いや、平田様が賭郎と繋がってるって悟った時は心の中でガッツポーズ決めましたよ」
「それはつまり…」
「ええ、弥鱈君につながる道、全部弥鱈君に潰されたので。必ず探し出して文句言ってやろうと思ってたんです。保護者なら話も聞きやすいですし。だから、なんとか浩一君を逃して、後日コンタクトを取ろうと思っていたのに…」
「僕の部下に捕まったのか」
「はい。しかも、話を聞けば浩一君まで質に入れられてるし、やっと勝ったと思ったら目蒲さんに捕まるし」
「俺からは逃げれば良かったろ」
「目蒲さん、今だからブチまけますけどね、あなたあの時自殺寸前の顔してましたよ」
「それでも、逃げるべきだったろ、お前は」
「酷いや目蒲さん。わかっててそういうこと言うんですね」
目蒲さんの目が泳ぐ。この人は時々可愛らしい。
「というわけで、銅寺さんの推理は全部正解ですが、私がここに入ったのはホントに事故です。平田様から弥鱈君について聞きたいだけだったのにこのザマです」
「なんだ伏龍お前、嫌々だったのか」
「やだ滝さん。未だ嫌々に見えます?」
「…毎日楽しそうで何よりだよ」
「ね?」
多分滝さんは立会人を愛でる会を思い出したのだろう。うんざりした顔をする。
「で、この立会いの事やけど…」
「へ、ああ、弥鱈君との。なーんにも大した事ないですよ。弥鱈君ある日人殴ったって濡れ衣着せられて退学騒ぎになったんで、その撤回を賭けてやり合ったんです」
当時は必死でしたけど、思い返せば微笑ましい理由ですよねえ。私が笑えば、みんなも笑う。柔らかいムードが戻ってきたところで、「さて、事務にあるまじき時間まで残っちまった」と滝さんが帰り支度を始めた。「帰れる?」と、腕の中の夕湖に聞くと、「うん…」と力ない声。ならば、と強く抱きしめた後、彼女を解放した。みんながゾロゾロと事務室を後にする中、私は急いで亜面さんに「報告書は今日中にお願いしますね」とメールを打った。これで真面目なあの子はここに戻ってくるだろう。私は携帯をしまい、最後の'困ったちゃん'に笑顔を向ける。
「さあ目蒲さん。私にその絆創膏のこと、言い訳して下さいね。具体的には、誰の親友に手を出して返り討ちにあったのかを」
「…話がずれたね、先生。これを踏まえて僕が聞きたいのは、先生は何で賭郎に入ったの?ってこと」
「何でって…話の流れ上仕方がなくですよう」
「先生は賭郎を知っていた。知っていたからあの時、平田様の言葉にすぐに反論できたんじゃない?」
「浩一くんのお父さん…?」
「ちょうど良かった、そいつも賭けるぜ!って、平田様が言った時、先生は間髪入れずにそれを却下した。あれ、今思えば、普段の先生の脳内処理速度じゃ無理だよね」
「わーお失礼な」
「ゴメン。でも、先生が僕の黒服を見た瞬間に、平田様がギャンブルをしているんだって悟ったんだとしたら、あの反応速度に説明がつくって思ったんだ」
「まぁ…はい」
「だから、聞かせてよ。どうして先生は賭郎に?」
やっと話が読めた。つまり、銅寺さんの質問は、私が全て知った上で、敢えて巻き込まれに来たんじゃないかと、そういうことだろう。少し悩んで、そういえば今日は正直に言う日って決めたんだったと思い出す。
「はっきり言いましょう。浩一く…いや、平田様が賭郎と繋がってるって悟った時は心の中でガッツポーズ決めましたよ」
「それはつまり…」
「ええ、弥鱈君につながる道、全部弥鱈君に潰されたので。必ず探し出して文句言ってやろうと思ってたんです。保護者なら話も聞きやすいですし。だから、なんとか浩一君を逃して、後日コンタクトを取ろうと思っていたのに…」
「僕の部下に捕まったのか」
「はい。しかも、話を聞けば浩一君まで質に入れられてるし、やっと勝ったと思ったら目蒲さんに捕まるし」
「俺からは逃げれば良かったろ」
「目蒲さん、今だからブチまけますけどね、あなたあの時自殺寸前の顔してましたよ」
「それでも、逃げるべきだったろ、お前は」
「酷いや目蒲さん。わかっててそういうこと言うんですね」
目蒲さんの目が泳ぐ。この人は時々可愛らしい。
「というわけで、銅寺さんの推理は全部正解ですが、私がここに入ったのはホントに事故です。平田様から弥鱈君について聞きたいだけだったのにこのザマです」
「なんだ伏龍お前、嫌々だったのか」
「やだ滝さん。未だ嫌々に見えます?」
「…毎日楽しそうで何よりだよ」
「ね?」
多分滝さんは立会人を愛でる会を思い出したのだろう。うんざりした顔をする。
「で、この立会いの事やけど…」
「へ、ああ、弥鱈君との。なーんにも大した事ないですよ。弥鱈君ある日人殴ったって濡れ衣着せられて退学騒ぎになったんで、その撤回を賭けてやり合ったんです」
当時は必死でしたけど、思い返せば微笑ましい理由ですよねえ。私が笑えば、みんなも笑う。柔らかいムードが戻ってきたところで、「さて、事務にあるまじき時間まで残っちまった」と滝さんが帰り支度を始めた。「帰れる?」と、腕の中の夕湖に聞くと、「うん…」と力ない声。ならば、と強く抱きしめた後、彼女を解放した。みんながゾロゾロと事務室を後にする中、私は急いで亜面さんに「報告書は今日中にお願いしますね」とメールを打った。これで真面目なあの子はここに戻ってくるだろう。私は携帯をしまい、最後の'困ったちゃん'に笑顔を向ける。
「さあ目蒲さん。私にその絆創膏のこと、言い訳して下さいね。具体的には、誰の親友に手を出して返り討ちにあったのかを」