過ぎ去るはエーデルワイス
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「元気で何よりだ!よおお前ら、今日も正常か?」
「切間立会人…」
異常だろどう見ても。とは言わないでおく。代わりに「足、下ろしますよ~」と声をかければ、「おーう!」と間延びした声が返ってきた。飛び降りるのと同時に、足を下ろす。最上階に住まう切間立会人に気付かれたのは、恐らくあの床の凹みのせいだろう。要領の悪い男め。俺は目蒲立会人を睨みつけた。それを見て切間立会人は豪快に笑った。
「相変わらずお前達は晴乃大好きだなあ!いやあ、青春青春っ!でもルールは守らないといかん、立会人たるものな!さあ、散った散った!」
そのテンションの高さで押し切ろうとする切間立会人を止めたのは、目蒲立会人だった。「相変わらず…?」と、引っかかった単語を繰り返す。
「なんだ、お前ほぼ毎日晴乃の部屋に押しかけてるメンバーの一人だろ。あれで大好きじゃないとは言わせんぞ!」
「…弥鱈立会人があれを好きという話を、聞いたことがありませんが」
「ぐはは、そっちか!失礼失礼!」
切間立会人はひと笑いの後、こちらに視線を遣る。厄介な事になった。内心で舌打ちをする。
「しかし目蒲、先輩の立会い報告書は見ておくものだぞっ!そういう努力しない奴に教える答えは無い!」
十分すぎるヒントだ。現に目蒲立会人は「失礼します」と踵を返す。資料室へと向かうのだろう。俺は迷うも、止めても無駄かと思い直した。今止めても、いずれ誰かが手にする答え。ただ、これ以上動きにくくなる前にアイツを逃がさねば。
ドアの閉まる音。それを確認して、切間立会人は語り掛けてきた。
「因果なものだな」
「…そうですねえ」
「必死に置いてきたのに、息子が申し訳ない事をした」
「事故でしょう」
「そう思うか」
陽が沈みきった屋上で、切間立会人の目が柔らかく光るように見えた。
「瀬をはやみ、だな」
「崇徳天皇ですか。懐かしいですねぇ~」
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
「ですが、そんな美しい感じじゃないですねえ~」
「ぐはあ!…側から見たら大暴走中にしか見えんしな、お前!」
「気付いてましたよ~」
「やっぱりか!ぐははは!」
よし帰って飯にする!と、切間立会人は元気良く言い放ち、フェンスの方へと滑っていった。薄々窓から飛び上がって乱入してきたのだろうとは思っていたが、まさか帰宅ルートもそこにするのか。階段使え、階段。
「若さってのはいい。無謀で、真っ直ぐだ。楽しめよ、弥鱈」
ぐはあ!と、何処かで聞いた台詞を発しながら彼は落ちていった。
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
あはむとぞ思ったのはどっちだったのだろうか。俺か、アイツか、はたまたただの偶然か。
「切間立会人…」
異常だろどう見ても。とは言わないでおく。代わりに「足、下ろしますよ~」と声をかければ、「おーう!」と間延びした声が返ってきた。飛び降りるのと同時に、足を下ろす。最上階に住まう切間立会人に気付かれたのは、恐らくあの床の凹みのせいだろう。要領の悪い男め。俺は目蒲立会人を睨みつけた。それを見て切間立会人は豪快に笑った。
「相変わらずお前達は晴乃大好きだなあ!いやあ、青春青春っ!でもルールは守らないといかん、立会人たるものな!さあ、散った散った!」
そのテンションの高さで押し切ろうとする切間立会人を止めたのは、目蒲立会人だった。「相変わらず…?」と、引っかかった単語を繰り返す。
「なんだ、お前ほぼ毎日晴乃の部屋に押しかけてるメンバーの一人だろ。あれで大好きじゃないとは言わせんぞ!」
「…弥鱈立会人があれを好きという話を、聞いたことがありませんが」
「ぐはは、そっちか!失礼失礼!」
切間立会人はひと笑いの後、こちらに視線を遣る。厄介な事になった。内心で舌打ちをする。
「しかし目蒲、先輩の立会い報告書は見ておくものだぞっ!そういう努力しない奴に教える答えは無い!」
十分すぎるヒントだ。現に目蒲立会人は「失礼します」と踵を返す。資料室へと向かうのだろう。俺は迷うも、止めても無駄かと思い直した。今止めても、いずれ誰かが手にする答え。ただ、これ以上動きにくくなる前にアイツを逃がさねば。
ドアの閉まる音。それを確認して、切間立会人は語り掛けてきた。
「因果なものだな」
「…そうですねえ」
「必死に置いてきたのに、息子が申し訳ない事をした」
「事故でしょう」
「そう思うか」
陽が沈みきった屋上で、切間立会人の目が柔らかく光るように見えた。
「瀬をはやみ、だな」
「崇徳天皇ですか。懐かしいですねぇ~」
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
「ですが、そんな美しい感じじゃないですねえ~」
「ぐはあ!…側から見たら大暴走中にしか見えんしな、お前!」
「気付いてましたよ~」
「やっぱりか!ぐははは!」
よし帰って飯にする!と、切間立会人は元気良く言い放ち、フェンスの方へと滑っていった。薄々窓から飛び上がって乱入してきたのだろうとは思っていたが、まさか帰宅ルートもそこにするのか。階段使え、階段。
「若さってのはいい。無謀で、真っ直ぐだ。楽しめよ、弥鱈」
ぐはあ!と、何処かで聞いた台詞を発しながら彼は落ちていった。
瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
あはむとぞ思ったのはどっちだったのだろうか。俺か、アイツか、はたまたただの偶然か。