過ぎ去るはエーデルワイス
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「ケーキ食いたい」
おもむろにそう言った弥鱈君に、「甘いもの好きだったんだ」と返す。彼は「まあな」と頷いて、「そこの角曲がったところの喫茶店、月替わりでフルーツケーキ出すんだぜ。今月はブルーベリー」と饒舌に語り始める。私は彼の語りたいままに任せ、最後に「そっか、行ってらっしゃい」と会話を締めくくった。弥鱈君の目が点になる。
「嫌いだったか?」
「いや、好きだよ?」
「え」
「ん?」
「行かねえの?」
「行かないなぁ」
「なんで」
「いやなんか、寄り道って嫌いでさ」
「あ、そうなんだ」
「うん」
「じゃ、週末行かねえ?」
「行かないなぁ」
「え」
「ん?」
「なんで」
「週末はゆっくりしたい派なんだよね」
「え」
「ん?」
「俺もしかして、嫌われてる?」
「いやいや、弥鱈君の事は大好きだよ」
「え、じゃあ、甘いもの」
「大好き」
そこで弥鱈君は胡乱な目を私に向けて、「じゃあ何が嫌なんだよ」と問いかけた。私はそれに肩を竦め、「聞きたい?」と問い返す。弥鱈君は少し眉をひそめると、直後ハッとした顔で「分かった、外出か」と言った。
「ピンポーン」
私は人差し指を立てて、そう言った。笑い混じりの言葉に彼が笑いを返してくれる事はなく、むしろ訝しげな顔を向けてきた。
「意外なんだけど」
「よく言われるー。アクティブそうに見えるみたい」
「実際そうだろ」
「違うよう。大体引きずり出されてるだけだよう。私はお家が好きなのに」
「マジか」
「マジマジ。私家から一歩も出ずに一生を終えることになっても何も困らないタイプ」
「引くわ」
「酷い」
「そーでもない」
「いや、酷い」
「まあ、ケーキ食べに行くぞ」
「え」
「引きずり出せば来るんだろ?」
行くけどさ、と渋る私の手を引いて、弥鱈君は歩いていく。その日から弥鱈君は私を連れてお出かけするのが日課になった。お気に入りの喫茶店、ファミレス、公園、ゲーセン。色んなところに二人で出向いて作った思い出は、私たちの距離を近付けるのに十分すぎるほど十分で。
私たちは自他共に認める親友になった。親友だった。そう。今はもう全部過去形の話。
さて、今からするのは、私たちの今までと今と、これからの話。最後まで付き合ってくれたら幸いです。
おもむろにそう言った弥鱈君に、「甘いもの好きだったんだ」と返す。彼は「まあな」と頷いて、「そこの角曲がったところの喫茶店、月替わりでフルーツケーキ出すんだぜ。今月はブルーベリー」と饒舌に語り始める。私は彼の語りたいままに任せ、最後に「そっか、行ってらっしゃい」と会話を締めくくった。弥鱈君の目が点になる。
「嫌いだったか?」
「いや、好きだよ?」
「え」
「ん?」
「行かねえの?」
「行かないなぁ」
「なんで」
「いやなんか、寄り道って嫌いでさ」
「あ、そうなんだ」
「うん」
「じゃ、週末行かねえ?」
「行かないなぁ」
「え」
「ん?」
「なんで」
「週末はゆっくりしたい派なんだよね」
「え」
「ん?」
「俺もしかして、嫌われてる?」
「いやいや、弥鱈君の事は大好きだよ」
「え、じゃあ、甘いもの」
「大好き」
そこで弥鱈君は胡乱な目を私に向けて、「じゃあ何が嫌なんだよ」と問いかけた。私はそれに肩を竦め、「聞きたい?」と問い返す。弥鱈君は少し眉をひそめると、直後ハッとした顔で「分かった、外出か」と言った。
「ピンポーン」
私は人差し指を立てて、そう言った。笑い混じりの言葉に彼が笑いを返してくれる事はなく、むしろ訝しげな顔を向けてきた。
「意外なんだけど」
「よく言われるー。アクティブそうに見えるみたい」
「実際そうだろ」
「違うよう。大体引きずり出されてるだけだよう。私はお家が好きなのに」
「マジか」
「マジマジ。私家から一歩も出ずに一生を終えることになっても何も困らないタイプ」
「引くわ」
「酷い」
「そーでもない」
「いや、酷い」
「まあ、ケーキ食べに行くぞ」
「え」
「引きずり出せば来るんだろ?」
行くけどさ、と渋る私の手を引いて、弥鱈君は歩いていく。その日から弥鱈君は私を連れてお出かけするのが日課になった。お気に入りの喫茶店、ファミレス、公園、ゲーセン。色んなところに二人で出向いて作った思い出は、私たちの距離を近付けるのに十分すぎるほど十分で。
私たちは自他共に認める親友になった。親友だった。そう。今はもう全部過去形の話。
さて、今からするのは、私たちの今までと今と、これからの話。最後まで付き合ってくれたら幸いです。