白い芥子は不安げに
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その日のことを話して伝えると、晴乃さんは奇妙なうめき声をあげながら机に突っ伏した。
「まさかそんなことになってたとは思いもよらず…」
「いやその、晴乃さんは出張だった訳ですから、仕方がないですよ」
「…いや、その原因も対処法もよく知ってます。残念ながら、うん」
部屋のクッションを抱き抱え、晴乃さんは乾いた笑いを浮かべた。幼いよみんな、ちょっと幼すぎるよ。笑いの合間にそんな呟きが聞こえる。
「亜面さんお願い。今度色画用紙買ってきてください。いろんな色がセットになってるやつ」
「お安い御用ですが…その…何に使うんですか?」
「他の立会人さん達には絶対に言いません?」
「…分かりました」
晴乃さんが教えてくれた例え話がおかしいやら恥ずかしいやらで、私は先程の彼女と同じ様な声を出しながら机に突っ伏した。
ーーーーーーーーーー
結論から言えば、晴乃さんの作戦は大成功だった。事務室に一歩入った立会人たちは、そのホワイトボードに一瞬目を奪われ、生温い笑いを浮かべ、滝さんの指示に比較的従順に従う。時々立会人が「あれは?」と聞くと、苦笑を浮かべながら「晴乃ちゃんペープサートだとよ。欲しけりゃ作ってやるって言ってたぞ」と答える。皆首を横に振ったが、個人的にはちょっと欲しいなと思う。
私はホワイトボードを眺めながら、晴乃さんの言葉を思い出す。
「あくまで私が三年生の担任だった頃の思い出話ですよ?いやもう今回の件とは全然関係ないんですけどね?ある日私出張があって代打の先生に入って頂いたんですけど、子供達がその先生にやけに突っかかったり、おどおどしたり、なんだか変だったらしかったんです。先輩教員に聞いたら、それってよくあることらしくって。突然先生が居なくなると、寂しくて不安定になっちゃうんですって。可愛いでしょ?それから私、出張がある日は必ず黒板にメッセージ残すようにしたんですよ。そしたら私の不在時もちゃんとお留守番出来るようになりました。その場にいなくても先生はみんなのことちゃんと気にかけてるよ、って、示してやらないといけない訳です」
種明かしをされている身としては、今の事務室の様子がおかしくて仕方がない。皆みんな、晴乃さんの掌の上なのだ。本当、人の心に聡い以外は普通の人の筈なんだけど。
ホワイトボードに張り付いた色画用紙製の晴乃さんが、こちらを向いて笑顔で敬礼してくれている。「お屋形様と防衛省に行ってきます。皆さんもお仕事頑張って下さいね!」と教科書体で書かれたメッセージを読めば、やっぱり生温い笑いが漏れた。
「まさかそんなことになってたとは思いもよらず…」
「いやその、晴乃さんは出張だった訳ですから、仕方がないですよ」
「…いや、その原因も対処法もよく知ってます。残念ながら、うん」
部屋のクッションを抱き抱え、晴乃さんは乾いた笑いを浮かべた。幼いよみんな、ちょっと幼すぎるよ。笑いの合間にそんな呟きが聞こえる。
「亜面さんお願い。今度色画用紙買ってきてください。いろんな色がセットになってるやつ」
「お安い御用ですが…その…何に使うんですか?」
「他の立会人さん達には絶対に言いません?」
「…分かりました」
晴乃さんが教えてくれた例え話がおかしいやら恥ずかしいやらで、私は先程の彼女と同じ様な声を出しながら机に突っ伏した。
ーーーーーーーーーー
結論から言えば、晴乃さんの作戦は大成功だった。事務室に一歩入った立会人たちは、そのホワイトボードに一瞬目を奪われ、生温い笑いを浮かべ、滝さんの指示に比較的従順に従う。時々立会人が「あれは?」と聞くと、苦笑を浮かべながら「晴乃ちゃんペープサートだとよ。欲しけりゃ作ってやるって言ってたぞ」と答える。皆首を横に振ったが、個人的にはちょっと欲しいなと思う。
私はホワイトボードを眺めながら、晴乃さんの言葉を思い出す。
「あくまで私が三年生の担任だった頃の思い出話ですよ?いやもう今回の件とは全然関係ないんですけどね?ある日私出張があって代打の先生に入って頂いたんですけど、子供達がその先生にやけに突っかかったり、おどおどしたり、なんだか変だったらしかったんです。先輩教員に聞いたら、それってよくあることらしくって。突然先生が居なくなると、寂しくて不安定になっちゃうんですって。可愛いでしょ?それから私、出張がある日は必ず黒板にメッセージ残すようにしたんですよ。そしたら私の不在時もちゃんとお留守番出来るようになりました。その場にいなくても先生はみんなのことちゃんと気にかけてるよ、って、示してやらないといけない訳です」
種明かしをされている身としては、今の事務室の様子がおかしくて仕方がない。皆みんな、晴乃さんの掌の上なのだ。本当、人の心に聡い以外は普通の人の筈なんだけど。
ホワイトボードに張り付いた色画用紙製の晴乃さんが、こちらを向いて笑顔で敬礼してくれている。「お屋形様と防衛省に行ってきます。皆さんもお仕事頑張って下さいね!」と教科書体で書かれたメッセージを読めば、やっぱり生温い笑いが漏れた。