白い芥子は不安げに
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いつまでもここでのんびりしているわけにはいかない。僕らは立ち上がる。
「この後どうする?」
「仰せのままに」
試しに問いかければ、彼女はそう言って肩をすくめる。しかし、それだけでは流石に足りないと思ってくれたのか、少しの後で言葉を付け足した。
「棟耶さんに掛けて、撤収します?それとも会場に戻ります?」
「その、警察や政治家の説得は終わってるの?」
「いえ…まだ、ちょっと」
「ふうん」
私はネクタイを整える。それにつられるように、晴乃君も膝についた芝を払った。
「じゃ、それを終わらせようか」
「へ?」
「君が何とかするんでしょ?」
「へえ?!」
彼女は仰天して、すぐに口を噤んで、じっと私を見て、ため息をついた。
「分かりました。そうでした。あなたのお役に立たないといけませんね、私」
彼女はにっこりと笑う。その瞳には、似合わない炎が灯っていた。
未だかつて私は、会話のさしすせそだけでここまで相手をのぼせ上がらせた人を見たことがない。というのが彼女の交渉術を目の当たりにした感想である。
「よし分かった蜂名君!君の熱意に報いようじゃあないか!」
がはは、と大きな声で笑うその政治家に、晴乃君は「流石です」と微笑む。最早何が流石なのか私にはよく掴めないが、彼はまた気分を良くしたようで、より大声で笑いだした。とにかく、関係が持ち直せたようで、なによりである。
「蜂名様!これで全員終了です!」
彼女は人がはけたタイミングで、そう小声で報告してくる。私は頷いた。
「多分もう任務完了です!」
多分、という言葉の響きにがっくりくるが、詳しく聞けば彼女は嘘発見器として気軽に召喚されただけで、本来私の記憶喪失に付き合うような立場ではなかったそうだ。そう思えば、事務ながら頑張ったと言えよう。ワイングラスを両手に持ってきた彼女を、心中で褒めておく。
「さ、おやか…蜂名様、もう酔えますよ、私達」
いや本当に、よく何のぼろも出さずやってくれたものだ。此の期に及んで呼び間違えを起こす彼女を、心中で絶賛する。
ワイングラスを受け取り、乾杯する。
「蜂名様、右手真っ黒」
「うん、君のせいだよね」
けらけらと笑い、彼女は葡萄を口に放り込む。その大胆な仕草に苦笑しつつ、私も負けじと一つ、放り込んだ。
「この後どうする?」
「仰せのままに」
試しに問いかければ、彼女はそう言って肩をすくめる。しかし、それだけでは流石に足りないと思ってくれたのか、少しの後で言葉を付け足した。
「棟耶さんに掛けて、撤収します?それとも会場に戻ります?」
「その、警察や政治家の説得は終わってるの?」
「いえ…まだ、ちょっと」
「ふうん」
私はネクタイを整える。それにつられるように、晴乃君も膝についた芝を払った。
「じゃ、それを終わらせようか」
「へ?」
「君が何とかするんでしょ?」
「へえ?!」
彼女は仰天して、すぐに口を噤んで、じっと私を見て、ため息をついた。
「分かりました。そうでした。あなたのお役に立たないといけませんね、私」
彼女はにっこりと笑う。その瞳には、似合わない炎が灯っていた。
未だかつて私は、会話のさしすせそだけでここまで相手をのぼせ上がらせた人を見たことがない。というのが彼女の交渉術を目の当たりにした感想である。
「よし分かった蜂名君!君の熱意に報いようじゃあないか!」
がはは、と大きな声で笑うその政治家に、晴乃君は「流石です」と微笑む。最早何が流石なのか私にはよく掴めないが、彼はまた気分を良くしたようで、より大声で笑いだした。とにかく、関係が持ち直せたようで、なによりである。
「蜂名様!これで全員終了です!」
彼女は人がはけたタイミングで、そう小声で報告してくる。私は頷いた。
「多分もう任務完了です!」
多分、という言葉の響きにがっくりくるが、詳しく聞けば彼女は嘘発見器として気軽に召喚されただけで、本来私の記憶喪失に付き合うような立場ではなかったそうだ。そう思えば、事務ながら頑張ったと言えよう。ワイングラスを両手に持ってきた彼女を、心中で褒めておく。
「さ、おやか…蜂名様、もう酔えますよ、私達」
いや本当に、よく何のぼろも出さずやってくれたものだ。此の期に及んで呼び間違えを起こす彼女を、心中で絶賛する。
ワイングラスを受け取り、乾杯する。
「蜂名様、右手真っ黒」
「うん、君のせいだよね」
けらけらと笑い、彼女は葡萄を口に放り込む。その大胆な仕草に苦笑しつつ、私も負けじと一つ、放り込んだ。