芍薬の意地
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彼女はずっと上機嫌だった。たかが名前を呼んだ位で、と呆れてしまうほどに。キッチンからは鼻歌が漏れ聞こえてくる。
部屋に押し掛けた事は数多くあれど、連れ込まれるのは初めてだった。それほど嬉しがるのなら、もっと早くに呼んでやればよかった。そう考えてから、ナチュラルに人を慮った事を考えている自分に衝撃を受けた。
「おい晴乃、ビール」
「はーい!」
照れを隠すような気持ちでビールを頼めば、彼女は語尾に音符でも付きそうな返事を一つして、冷蔵庫を開けた。
丁度夕食も出来上がったらしい。ビールの直後、彼女はどんどん夕飯を運びごんでくる。いつもより一品多い。
「そんなに嬉しかったか」
つい、聞いてしまう。彼女ははにかんで、「なんででしょうね」と笑った。
「なんでか分からないんですけど、すごく嬉しいです。名前呼ばれただけなのに」
俺もなんと返したらいいかいまいち掴めず、「そうか」とだけ返す。その返事にさえも彼女は嬉しそうに笑う。
「どういう風の吹きまわしだったんですか?」
「さあな」
俺はビールを一口飲んで、「呼んだこと無いなと思っただけだ。他意はない」と付け足した。きっかけも過程もあったが、わざわざ説明することでもないだろう。彼女も根掘り葉掘り聞く気は無いらしく、追撃は来なかった。
ノックの音がして、彼女は首をかしげながら立ち上がる。誰かが来る予定はなかったらしい。それでも応対せねばとドアを開けると、門っちと泉江が仲良く立っていた。
「ケーキは四つで正解だったのう、泉江」
「ああ、ちゃんと居たな」
「どうしたんですか?二人共」
「今日はお前のお陰で助かったからな。礼にと思って」
泉江が「ありがとうな」と晴乃にケーキの箱を手渡す。晴乃の喜び様から察するに、どこか有名どころのケーキなのだろう。
「あ、でもごめんなさい、私達さっきお夕飯食べ始めたところで」
「問題無い。飲み物だけ貰えるか?」
「それはもちろん」
晴乃は二人を部屋に上げ、そそくさと飲み物を取りに行った。
「お、ビールええの」
「まだ冷蔵庫にあったんじゃないか?」
「どうじゃろ、頼んでええんかのう」
「なんで今日そんな控えめなんだよ」
どことなくうきうきした二人を横目に、仕方がなく俺は「おい晴乃、門っちにもビール」と声を掛けた。刹那大騒ぎを始める二人を見て、俺は遅ればせながら彼らの狙いを察したのだった。
部屋に押し掛けた事は数多くあれど、連れ込まれるのは初めてだった。それほど嬉しがるのなら、もっと早くに呼んでやればよかった。そう考えてから、ナチュラルに人を慮った事を考えている自分に衝撃を受けた。
「おい晴乃、ビール」
「はーい!」
照れを隠すような気持ちでビールを頼めば、彼女は語尾に音符でも付きそうな返事を一つして、冷蔵庫を開けた。
丁度夕食も出来上がったらしい。ビールの直後、彼女はどんどん夕飯を運びごんでくる。いつもより一品多い。
「そんなに嬉しかったか」
つい、聞いてしまう。彼女ははにかんで、「なんででしょうね」と笑った。
「なんでか分からないんですけど、すごく嬉しいです。名前呼ばれただけなのに」
俺もなんと返したらいいかいまいち掴めず、「そうか」とだけ返す。その返事にさえも彼女は嬉しそうに笑う。
「どういう風の吹きまわしだったんですか?」
「さあな」
俺はビールを一口飲んで、「呼んだこと無いなと思っただけだ。他意はない」と付け足した。きっかけも過程もあったが、わざわざ説明することでもないだろう。彼女も根掘り葉掘り聞く気は無いらしく、追撃は来なかった。
ノックの音がして、彼女は首をかしげながら立ち上がる。誰かが来る予定はなかったらしい。それでも応対せねばとドアを開けると、門っちと泉江が仲良く立っていた。
「ケーキは四つで正解だったのう、泉江」
「ああ、ちゃんと居たな」
「どうしたんですか?二人共」
「今日はお前のお陰で助かったからな。礼にと思って」
泉江が「ありがとうな」と晴乃にケーキの箱を手渡す。晴乃の喜び様から察するに、どこか有名どころのケーキなのだろう。
「あ、でもごめんなさい、私達さっきお夕飯食べ始めたところで」
「問題無い。飲み物だけ貰えるか?」
「それはもちろん」
晴乃は二人を部屋に上げ、そそくさと飲み物を取りに行った。
「お、ビールええの」
「まだ冷蔵庫にあったんじゃないか?」
「どうじゃろ、頼んでええんかのう」
「なんで今日そんな控えめなんだよ」
どことなくうきうきした二人を横目に、仕方がなく俺は「おい晴乃、門っちにもビール」と声を掛けた。刹那大騒ぎを始める二人を見て、俺は遅ればせながら彼らの狙いを察したのだった。