芍薬の意地
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「さあ滝さん、一つ選んで下さい。特別ですよ」
そう言いながら伏龍が差し出す箱の中から適当に一つ、ゼリーを取り出す。次に権田の所へ駆け寄っていった彼女の背中に、「こんな上等なゼリー、どうしたんだ」と声を掛ける。彼女は権田の所から「外務卿に頼られ隊の皆さんから頂きましたー!」と答えてきた。衝撃の答えを、一瞬頭が拒否する。
「す、すまねえ伏龍、もう一回言っちゃくれねえか」
「へ、ですから、外務卿に頼られ隊の皆さんからです」
聞き間違いじゃなかったことに大きくショックを受けた。
「伏龍さん、滝さんは立会人上がりですので、立会人を愛でる会のことは知りませんよ」
首をかしげる伏龍に、権田が声を掛ける。彼女は「やべっ!」という顔をした。
「おいちょっと待て、なんなんだその立会人を愛でる会っていうのは」
「黒服の労働組合みたいなもんです。100年までは記録を辿れる由緒ある会です」
「嘘だろ…。労働組合っつーのはこう、賃上げ要求とかするもんじゃねえのか。なんで泉江に頼られる事を目的としちまってんだ。どこで間違えた」
「それは分会で勝手にやっている事です。本会は黒服の資質向上を目的としているそうですので、ご安心を」
「お、おう…」
権田の説明に一応納得するが、直後の伏龍の「なんか、目蒲立会人の鉄面皮を温かく見守る会とかー、銅寺立会人にNOと言わせる会とかー…色々あるみたいですよ」との補足に頭を抱えた。
「お前らももしかして入ってんじゃねえだろうなぁ…」
「いえ、私は贔屓の立会人がおりませんので」
「資質向上はどこいったんだよ」
おい伏龍、お前は…と聞きかけて、彼女がひらひらさせている熨斗に目をやる。
「まさかとは思うが、そこに書いてある名誉顧問っつーのはお前のことじゃねえだろうな」
「そのまさかですよー!いいですか滝さん。私はもはやただの事務さんじゃなくて、立会人を愛でる会名誉顧問の事務さんなんです!立会人さん大好き!」
「馬鹿の事務さんだよ、お前は」
あーもー嫌だ。俺はゼリーの蓋を開けた。甘ったるい匂いが鼻腔をつく。流石は高級品だ。俺はスプーンを差し入れた。そこにそそくさと権田が寄ってきて、「口止め料です。会の事は御内密に」ともう一つゼリーを置いていった。誰が食うか馬鹿野郎。
心中はさておき、伏龍と権田も各々のゼリーを開け、まったりと食べ始める。
他には誰の分会があるんだ?とは、口が避けても聞けなかった。
「戻りました」
事務室の扉を開けて、目蒲が帰ってくる。伏龍がすかさずゼリーを置いて駆け寄っていく。
「あ、おかえりなさい目蒲さん。大丈夫でした?」
「ああ。報告書の事が分かった。伽羅に負けて、立会い自体をなかった事にされていたそうだ」
「伽羅…」
「元零號の男だ。今また嘘喰いについてる」
「あら、廃ビルの悪魔だけじゃ飽き足らずですか。獏様大所帯ですね」
「お前の感想はそれなのか…」
「すまねえな、ウチの事務員のオツムが足りねえせいで」
むう、とふくれっ面をつくる伏龍に、目蒲がわざとらしくため息をついた。
「…怪我、それだけで済んで良かったです」
怪我?伏龍の言葉を不思議に思い目蒲を見ると、彼は「やっぱりお前にはバレるか」と右肩を撫でた。
「すぐ治る。心配するな、晴乃」
途端、いつもの気さくで優しくて馬鹿な彼女はどこへやら。はにかみながら俯いて、見る間に頬を上気させていく乙女がいた。
そう言いながら伏龍が差し出す箱の中から適当に一つ、ゼリーを取り出す。次に権田の所へ駆け寄っていった彼女の背中に、「こんな上等なゼリー、どうしたんだ」と声を掛ける。彼女は権田の所から「外務卿に頼られ隊の皆さんから頂きましたー!」と答えてきた。衝撃の答えを、一瞬頭が拒否する。
「す、すまねえ伏龍、もう一回言っちゃくれねえか」
「へ、ですから、外務卿に頼られ隊の皆さんからです」
聞き間違いじゃなかったことに大きくショックを受けた。
「伏龍さん、滝さんは立会人上がりですので、立会人を愛でる会のことは知りませんよ」
首をかしげる伏龍に、権田が声を掛ける。彼女は「やべっ!」という顔をした。
「おいちょっと待て、なんなんだその立会人を愛でる会っていうのは」
「黒服の労働組合みたいなもんです。100年までは記録を辿れる由緒ある会です」
「嘘だろ…。労働組合っつーのはこう、賃上げ要求とかするもんじゃねえのか。なんで泉江に頼られる事を目的としちまってんだ。どこで間違えた」
「それは分会で勝手にやっている事です。本会は黒服の資質向上を目的としているそうですので、ご安心を」
「お、おう…」
権田の説明に一応納得するが、直後の伏龍の「なんか、目蒲立会人の鉄面皮を温かく見守る会とかー、銅寺立会人にNOと言わせる会とかー…色々あるみたいですよ」との補足に頭を抱えた。
「お前らももしかして入ってんじゃねえだろうなぁ…」
「いえ、私は贔屓の立会人がおりませんので」
「資質向上はどこいったんだよ」
おい伏龍、お前は…と聞きかけて、彼女がひらひらさせている熨斗に目をやる。
「まさかとは思うが、そこに書いてある名誉顧問っつーのはお前のことじゃねえだろうな」
「そのまさかですよー!いいですか滝さん。私はもはやただの事務さんじゃなくて、立会人を愛でる会名誉顧問の事務さんなんです!立会人さん大好き!」
「馬鹿の事務さんだよ、お前は」
あーもー嫌だ。俺はゼリーの蓋を開けた。甘ったるい匂いが鼻腔をつく。流石は高級品だ。俺はスプーンを差し入れた。そこにそそくさと権田が寄ってきて、「口止め料です。会の事は御内密に」ともう一つゼリーを置いていった。誰が食うか馬鹿野郎。
心中はさておき、伏龍と権田も各々のゼリーを開け、まったりと食べ始める。
他には誰の分会があるんだ?とは、口が避けても聞けなかった。
「戻りました」
事務室の扉を開けて、目蒲が帰ってくる。伏龍がすかさずゼリーを置いて駆け寄っていく。
「あ、おかえりなさい目蒲さん。大丈夫でした?」
「ああ。報告書の事が分かった。伽羅に負けて、立会い自体をなかった事にされていたそうだ」
「伽羅…」
「元零號の男だ。今また嘘喰いについてる」
「あら、廃ビルの悪魔だけじゃ飽き足らずですか。獏様大所帯ですね」
「お前の感想はそれなのか…」
「すまねえな、ウチの事務員のオツムが足りねえせいで」
むう、とふくれっ面をつくる伏龍に、目蒲がわざとらしくため息をついた。
「…怪我、それだけで済んで良かったです」
怪我?伏龍の言葉を不思議に思い目蒲を見ると、彼は「やっぱりお前にはバレるか」と右肩を撫でた。
「すぐ治る。心配するな、晴乃」
途端、いつもの気さくで優しくて馬鹿な彼女はどこへやら。はにかみながら俯いて、見る間に頬を上気させていく乙女がいた。