ギリアの元へ
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彼女がせっせと紅茶を淹れるのを眺める。慣れた光景が、今ばかりは気恥ずかしい。
自分にとっては'ついで'のほうが気楽だった。しかし、彼女はどうにも違うらしい。
「どうして、ついでが嫌だった?」
俺は改めて聞いた。彼女は顔を上げ、微笑む。
「だって、ホントに話したくて仕方がなくなった時、もしついでの用事が思い浮かばなかったらどうするんですか?」
「人生においてホントに話したくて仕方がなくなる時がなかった。これからも無い」
「2日と空けずに押しかけておいて何を言いますか」
「2日に一回来てるんだからいいじゃねえか」
「その頻度でネクタイ忘れる自分をもっと恥じてください」
彼女は紅茶を俺の前に置いて、自分は俺の横に座った。珍しい位置取りだな、と思ったところで、彼女はぽそっと「ジミニークリケットポジション。相手に自分を意識させずに話したいときはここなんですよ」と注釈を入れた。なるほどと思ったが、正直に言うのはどうかとも思った。
「あのね目蒲さん、私は、あなたの心には時限爆弾が仕掛けられてるって思ってるんです。正直に言うと」
「佐田国様のことか」
「はい。あんなに必死になった相手に先立たれたら、大体の人は心にずしっと来るもんです。でも、目蒲さんにはそれがまだ来てないじゃないですか。そりゃ、もしかしたら不発弾だったってこともあるかもしれない。でも、起爆するかもしれない。そんな時にあなたが一番に思い出すのは私であって欲しいって思ってますし、その時にたまたま'ついでの用事'が思い浮かばなかったからって我慢されたくないです」
彼女は紅茶に口をつけて、「あつっ」とすぐに口を離した。締まらないな、と思う。
「どうなんだろうな」
「どう、っていうのは?」
「時限爆弾」
「どうなんでしょうね。何事もないのが一番なんですけど」
俺は紅茶を啜る。ニルギリの柔らかい苦味が口に広がった。
多分、それが爆発する日は一生こないだろう。全力で俺を守ろうとしたお前がいる限りは。勿体無いくらいに、俺はとっくに報われているんだ。
この日々のように穏やかに、佐田国様のことも過去になってゆくのだろう。そう思いながら、俺はまた紅茶を啜った。
自分にとっては'ついで'のほうが気楽だった。しかし、彼女はどうにも違うらしい。
「どうして、ついでが嫌だった?」
俺は改めて聞いた。彼女は顔を上げ、微笑む。
「だって、ホントに話したくて仕方がなくなった時、もしついでの用事が思い浮かばなかったらどうするんですか?」
「人生においてホントに話したくて仕方がなくなる時がなかった。これからも無い」
「2日と空けずに押しかけておいて何を言いますか」
「2日に一回来てるんだからいいじゃねえか」
「その頻度でネクタイ忘れる自分をもっと恥じてください」
彼女は紅茶を俺の前に置いて、自分は俺の横に座った。珍しい位置取りだな、と思ったところで、彼女はぽそっと「ジミニークリケットポジション。相手に自分を意識させずに話したいときはここなんですよ」と注釈を入れた。なるほどと思ったが、正直に言うのはどうかとも思った。
「あのね目蒲さん、私は、あなたの心には時限爆弾が仕掛けられてるって思ってるんです。正直に言うと」
「佐田国様のことか」
「はい。あんなに必死になった相手に先立たれたら、大体の人は心にずしっと来るもんです。でも、目蒲さんにはそれがまだ来てないじゃないですか。そりゃ、もしかしたら不発弾だったってこともあるかもしれない。でも、起爆するかもしれない。そんな時にあなたが一番に思い出すのは私であって欲しいって思ってますし、その時にたまたま'ついでの用事'が思い浮かばなかったからって我慢されたくないです」
彼女は紅茶に口をつけて、「あつっ」とすぐに口を離した。締まらないな、と思う。
「どうなんだろうな」
「どう、っていうのは?」
「時限爆弾」
「どうなんでしょうね。何事もないのが一番なんですけど」
俺は紅茶を啜る。ニルギリの柔らかい苦味が口に広がった。
多分、それが爆発する日は一生こないだろう。全力で俺を守ろうとしたお前がいる限りは。勿体無いくらいに、俺はとっくに報われているんだ。
この日々のように穏やかに、佐田国様のことも過去になってゆくのだろう。そう思いながら、俺はまた紅茶を啜った。