ギリアの元へ
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「これ、もしかせんでも、チビ助が抜けんとワシも抜けられんやつやんけ…!」
「門倉立会人、それ、正解です」
亜面さんが自分の手札を睨んだままそう答える。「流石ですね先生」と褒めてくれるのは銅寺さん。既に手札を空にしている目蒲さんと夕湖は余裕綽々でそんな私たちを眺めていた。
「仕方がない、門倉さん。一緒に下からワンツー狙いましょ」
「アホか!頑張れやチビ助!」
立会人さんたちの例に漏れず、門倉さんは負けず嫌いだ。ちょっと笑えた。
「負けないだけ、っていうのがイマイチ惜しいな」
「イカサマ仕込むか?」
夕湖と目蒲さんは私に何を求めているのか、そんなことを話し合う。私は揃った二枚を墓地に捨て、上がりを告げる。門倉さんはとても喜んでくれたが、彼にとっての本当の地獄がここからだということをまだ知らない。
三人の手をぐるぐる回り続けるババを想像してほくそ笑みながら、私は上がった組に合流する。
「時間区切ってあげるべきですかね」
「お前がイカサマ指摘してやれば?」
「えー、私あのぐるぐる見るの好きなんですよー。皆さんイカサマ思いついてむっちゃ悪どい顔するでしょ?」
「どこ見てるんだよ…?」
そう言いかけた目蒲さんはちょっと眉間にしわを寄せて、「お前、見るのは顔なのか?」と聞いてきた。頷くと夕湖も何を察したのか「げっ」という顔をした。その表情のまま、おっかなびっくり夕湖は尋ねる。
「なあ晴乃、お前もしかして、分かるのは相手がイカサマをしたタイミングだけで、どんなイカサマが成されたかは分からないんじゃないのか…?」
「そうですけど…」
夕湖が、亜面さんが、門倉さんが頭を抱えた。私が何があったのか聞く前に、門倉さんが呻く。
「そのまま貫き通せばよかったんか…!」
何を?私だけがまだ事態を掴めず、目蒲さんを見上げる。
「'今イカサマをされた気がする'はイカサマの指摘にならないんだよ。ブラフと同じだから、あの三人は'してない'とブラフで返しさえすればお前の指摘を凌げた」
そんなもんなのか。賭け事って難しいなぁ。私は目蒲さんの言葉が分かったような分からなかったような気持ちで頷いた。目蒲さんはため息をつく。
案の定三人の手を順番に旅行し始めたババと、悔しがったりにやけたりを繰り返す三人を眺める。多分、次はこの三人もばっちり私への対策を練ってくるんだろうな。こんなに負けず嫌いで、しかも勝ちをおびき寄せられるくらい賢い人たちだから。
群雄割拠。群れなす英雄が拠を割つ。
本来、正道を歩んでいさえすれば、この人たちはその道の英雄になれたのだと思う。集められてしまったからいけない。完璧な人たちの中で、自分一人だけ劣る訳にはいかないから。持たなくていい劣等感を持って、張らなくていい意地を張らなければいけなくなってしまった、憐れな人たち。でも、仕方がないのだ。それを選んだのは他ならぬ自分たち。決めたなら、やりぬかないと。
でも、せめて。
私は思う。せめて、この部屋の中でだけは泣き言を、ふざけを、甘えを受け入れてやりたい。明日また過酷なその場所で、完璧であれるように。
「門倉立会人、それ、正解です」
亜面さんが自分の手札を睨んだままそう答える。「流石ですね先生」と褒めてくれるのは銅寺さん。既に手札を空にしている目蒲さんと夕湖は余裕綽々でそんな私たちを眺めていた。
「仕方がない、門倉さん。一緒に下からワンツー狙いましょ」
「アホか!頑張れやチビ助!」
立会人さんたちの例に漏れず、門倉さんは負けず嫌いだ。ちょっと笑えた。
「負けないだけ、っていうのがイマイチ惜しいな」
「イカサマ仕込むか?」
夕湖と目蒲さんは私に何を求めているのか、そんなことを話し合う。私は揃った二枚を墓地に捨て、上がりを告げる。門倉さんはとても喜んでくれたが、彼にとっての本当の地獄がここからだということをまだ知らない。
三人の手をぐるぐる回り続けるババを想像してほくそ笑みながら、私は上がった組に合流する。
「時間区切ってあげるべきですかね」
「お前がイカサマ指摘してやれば?」
「えー、私あのぐるぐる見るの好きなんですよー。皆さんイカサマ思いついてむっちゃ悪どい顔するでしょ?」
「どこ見てるんだよ…?」
そう言いかけた目蒲さんはちょっと眉間にしわを寄せて、「お前、見るのは顔なのか?」と聞いてきた。頷くと夕湖も何を察したのか「げっ」という顔をした。その表情のまま、おっかなびっくり夕湖は尋ねる。
「なあ晴乃、お前もしかして、分かるのは相手がイカサマをしたタイミングだけで、どんなイカサマが成されたかは分からないんじゃないのか…?」
「そうですけど…」
夕湖が、亜面さんが、門倉さんが頭を抱えた。私が何があったのか聞く前に、門倉さんが呻く。
「そのまま貫き通せばよかったんか…!」
何を?私だけがまだ事態を掴めず、目蒲さんを見上げる。
「'今イカサマをされた気がする'はイカサマの指摘にならないんだよ。ブラフと同じだから、あの三人は'してない'とブラフで返しさえすればお前の指摘を凌げた」
そんなもんなのか。賭け事って難しいなぁ。私は目蒲さんの言葉が分かったような分からなかったような気持ちで頷いた。目蒲さんはため息をつく。
案の定三人の手を順番に旅行し始めたババと、悔しがったりにやけたりを繰り返す三人を眺める。多分、次はこの三人もばっちり私への対策を練ってくるんだろうな。こんなに負けず嫌いで、しかも勝ちをおびき寄せられるくらい賢い人たちだから。
群雄割拠。群れなす英雄が拠を割つ。
本来、正道を歩んでいさえすれば、この人たちはその道の英雄になれたのだと思う。集められてしまったからいけない。完璧な人たちの中で、自分一人だけ劣る訳にはいかないから。持たなくていい劣等感を持って、張らなくていい意地を張らなければいけなくなってしまった、憐れな人たち。でも、仕方がないのだ。それを選んだのは他ならぬ自分たち。決めたなら、やりぬかないと。
でも、せめて。
私は思う。せめて、この部屋の中でだけは泣き言を、ふざけを、甘えを受け入れてやりたい。明日また過酷なその場所で、完璧であれるように。