突然冷たい感触がして、目が覚めた。気付けば事務室には活気があふれている。私はどれくらい寝ていたんだろう。首を回して時計を見ると、優に十時を過ぎていた。

「まだ死んでねえのかよ」

聞き慣れた声が降ってきて、私は次は上を見た。相変わらず性格の悪い笑顔を浮かべた目蒲さんがコップを片手に立っていた。そこでやっと気付いたが、どうやら寝起きの冷たいのは水だったらしい。

まあ、それはいいや。水なら乾くし。それより、この人は何故疲れた顔をしているんだろうか？

「…もしかして心配してくれてました？」

は。と目蒲さんが声を漏らした。違ったらしい。

「…あ、わかった。立会いがあるんでしょう」

あ？と目蒲さんが睨む。正解みたいだ。

「そんな顔するくらいなら降りるべきなんですよ。貴方明らかに向いてないじゃないですか」

ごぶ、と口から血と変な声が漏れた。一瞬遅れて鳩尾に痛みを感じる。また蹴られたんだな、と理解すると同時に眠気が襲ってきた。さっき起きたばっかりなんだけどな。

重くなる瞼に抗えず、私は意識を手放した。