ギリアの元へ
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「ありがとうございます亜面さん、わざわざこっちまで来て頂いて…」
「いえ、晴乃さんこそ時間外なの…に…」
部屋の中に気付いた亜面さんの台詞が目に見えて減速する。もちろん中の二人は御構い無しだ。相手から目を離したらこの二人には受け入れ難い最下位が待っている。
「…どういう繋がりの三人ですか?」
「え、会社の友達です。ババ抜きが白熱しちゃって、私に構ってくれないんです。亜面さん構ってくださいよう」
亜面さんの服の袖を軽く引っ張ると、亜面さんはまだ状況に唖然としつつも素直に部屋に入ってきてくれる。彼女にクッションを用意して、賞品のプリンも彼女にあげた。目蒲さんが「おい、お前が食べないならこっちに寄越せ」とその行動を咎めるが、私が勝ち取ったものをどうしようが私の自由である。その事を告げると彼は苦い顔でゲームに戻った。
「その…本当に食べていいんですか?」
「亜面、食べないなら私が食べてやる」
「夕湖まで…うん、食べてください亜面さん。それ私の分なので」
「それってやっぱり…」
亜面さんが非常に言いづらそうに口ごもる。多分、私がこのプリンを手に入れた経緯を確認したいけど、口に出した瞬間このこわーい先輩方からこわーい目にあわされるのが目に見えて分かるのだろう。私の方から教えてあげる。
「亜面さん、正解ですよ。私がプリンを賭けたババ抜きで一抜けしたん嫌あぁぁぁー!!」
「うわ晴乃さん?!」
思わず亜面さんに抱きついた。トランプが手裏剣のように私の耳を掠めて飛んでいったのだ。壁に突き刺さっているそれを確認してブルリと震える。亜面さんは私の背をそっと撫でながら、呆れたように犯人の名前を呼んだ。
「目蒲立会人…」
「はて、それは一体何を驚いているんですかねえ?」
「どうした晴乃、ゴキブリでも出たか?」
「泉江外務卿まで…」
というか、晴乃さんってそんなに強かったんですか。そう尋ねてくる亜面さんに、「特定のゲームと特定の状況ならイケます」と返す。亜面さんは首を傾げた。私は笑う。
「四人でやります?」
「え、この四人でですか?」
「そうそう。もうあの二人もババを50往復以上させてますしね。そろそろ飽きたでしょ」
渡りに船と言わんばかりに、二人はトランプをまとめ始め、目蒲さんは次の試合に備えてネクタイを外した。私は亜面さんを一番分かりやすい隣に誘導してあげる。夕湖がシャッフルして、全員に配り始める。
その隙を見て、目蒲さんが一本メールを打った。どうしたのかと尋ねると、門倉さんを呼んだのだという。「もしかして、気まずかったりするんですか?」と聞いてみると、「まあな」と返ってきた。直後、私と目蒲さんの携帯が同時に鳴る。
「門っち来るってよ」
「銅寺さんが、僕も行っていいですかーって聞いてきました。いいですよね?」
私は聞きながらも三人の返事を待たずに許可を出してしまう。意外な組み合わせだけど、あの二人は何を話すんだろう。機会があったら聞いてみようっと。私は銅寺さんと門倉さんを思い浮かべながらぼんやりそう思った。
さて、夕湖がカードを配り終えて、ゲーム開始。私は亜面さんから引き、夕湖に引かれることになった。目蒲さんと夕湖の瞳が楽しげに細まる。全く同感だった。数少ない特技を披露させて頂こうじゃないか。
1周目、夕湖が手札を減らす。
2周目、夕湖の口元が緩んだ。ババの所在を確認。亜面さんと私が手札を減らす。
3周目、ババ動かず。目蒲さんと私が手札を減らす。
4周目、亜面さんの目元がひきつる。ついにババが亜面さんに渡った。亜面さんがカードをシャッフルして、私に差し出す。私は一番右のカードの上に人差し指を置くと、それをすーっと右から左へ滑らせた。亜面さんが緊張したのは右から三番目のカードに指が触れた時。読みやすい子で良かった。私はそれを避けて、左端のカードを抜き取る。ハートの2。よしよし。
しばらく後の7周目、夕湖が上がってしまう。ババ抜きで負けるのはほとんどないのでびっくり。残りの手札は目蒲さんが一枚、私と亜面さんが二枚だ。ついに亜面さんが焦れて、勝負に出ようと構えた。
「やーだ亜面さん、ずっこいことはダメですよう」
彼女の体は分かりやすくこわばった。私と夕湖はにやりとする。目蒲さんは私の手札から一枚抜き取り、上がり。私も次のターンに亜面さんからペアになるカードを受け取った。
「やー、悔しい!私3位じゃないですかー!」
「晴乃のは一回見たら怖くないからな」
「もう!頭のいい人はだから嫌!」
傷つくなあと笑う夕湖の反対側、打ちひしがれる亜面さんを目蒲さんが笑う。
「慢心でしたねえ?亜面立会人」
「いえ…その、侮っていた訳では」
「どうでしょうなあ。まさかあれにこんな芸当ができるとは思っていなかったでしょう」
「えー、亜面さん、酷いですよー」
「いえ、いえ!ただ、こういう勝ち方をされるのは予想外だっただけです…」
ああ、と納得の声をあげたのは先のゲームで私に引かれる側だった夕湖だった。
「ずっ…と、ババが手元に残っただろう」
「はい」
「焦るよな」
「はい」
「しかもイカサマしようとしてもバレるんだよな」
「はい」
「焦るよな」
「はい。どういうカラクリだったんでしょうか?」
亜面さんが私を見たのにつられるように、二人も私を見る。私がなんといったものかと考えてる内に、夕湖は私に説明させるのを諦めたように口を開いた。
「晴乃は心が読めるんだ」
「いや、そんな大層な事は出来ませんってば」
じゃああれは何なんだ?と夕湖が首をかしげる。亜面さんもわくわくこちらを見ている。私はため息をついた。
「人より表情とか動作とかから察するのが上手なだけです。考えてる事は分かりません」
それだけで目蒲さんと夕湖は今までの色々が納得いったようで、各々頷く。亜面さんは付き合いが浅いだけあって、いくつか疑問が浮かぶらしい。わくわくした瞳で質問してきた。私はそれに快く答えてやる。別に隠し立てするような事はないのだ。
「いえ、晴乃さんこそ時間外なの…に…」
部屋の中に気付いた亜面さんの台詞が目に見えて減速する。もちろん中の二人は御構い無しだ。相手から目を離したらこの二人には受け入れ難い最下位が待っている。
「…どういう繋がりの三人ですか?」
「え、会社の友達です。ババ抜きが白熱しちゃって、私に構ってくれないんです。亜面さん構ってくださいよう」
亜面さんの服の袖を軽く引っ張ると、亜面さんはまだ状況に唖然としつつも素直に部屋に入ってきてくれる。彼女にクッションを用意して、賞品のプリンも彼女にあげた。目蒲さんが「おい、お前が食べないならこっちに寄越せ」とその行動を咎めるが、私が勝ち取ったものをどうしようが私の自由である。その事を告げると彼は苦い顔でゲームに戻った。
「その…本当に食べていいんですか?」
「亜面、食べないなら私が食べてやる」
「夕湖まで…うん、食べてください亜面さん。それ私の分なので」
「それってやっぱり…」
亜面さんが非常に言いづらそうに口ごもる。多分、私がこのプリンを手に入れた経緯を確認したいけど、口に出した瞬間このこわーい先輩方からこわーい目にあわされるのが目に見えて分かるのだろう。私の方から教えてあげる。
「亜面さん、正解ですよ。私がプリンを賭けたババ抜きで一抜けしたん嫌あぁぁぁー!!」
「うわ晴乃さん?!」
思わず亜面さんに抱きついた。トランプが手裏剣のように私の耳を掠めて飛んでいったのだ。壁に突き刺さっているそれを確認してブルリと震える。亜面さんは私の背をそっと撫でながら、呆れたように犯人の名前を呼んだ。
「目蒲立会人…」
「はて、それは一体何を驚いているんですかねえ?」
「どうした晴乃、ゴキブリでも出たか?」
「泉江外務卿まで…」
というか、晴乃さんってそんなに強かったんですか。そう尋ねてくる亜面さんに、「特定のゲームと特定の状況ならイケます」と返す。亜面さんは首を傾げた。私は笑う。
「四人でやります?」
「え、この四人でですか?」
「そうそう。もうあの二人もババを50往復以上させてますしね。そろそろ飽きたでしょ」
渡りに船と言わんばかりに、二人はトランプをまとめ始め、目蒲さんは次の試合に備えてネクタイを外した。私は亜面さんを一番分かりやすい隣に誘導してあげる。夕湖がシャッフルして、全員に配り始める。
その隙を見て、目蒲さんが一本メールを打った。どうしたのかと尋ねると、門倉さんを呼んだのだという。「もしかして、気まずかったりするんですか?」と聞いてみると、「まあな」と返ってきた。直後、私と目蒲さんの携帯が同時に鳴る。
「門っち来るってよ」
「銅寺さんが、僕も行っていいですかーって聞いてきました。いいですよね?」
私は聞きながらも三人の返事を待たずに許可を出してしまう。意外な組み合わせだけど、あの二人は何を話すんだろう。機会があったら聞いてみようっと。私は銅寺さんと門倉さんを思い浮かべながらぼんやりそう思った。
さて、夕湖がカードを配り終えて、ゲーム開始。私は亜面さんから引き、夕湖に引かれることになった。目蒲さんと夕湖の瞳が楽しげに細まる。全く同感だった。数少ない特技を披露させて頂こうじゃないか。
1周目、夕湖が手札を減らす。
2周目、夕湖の口元が緩んだ。ババの所在を確認。亜面さんと私が手札を減らす。
3周目、ババ動かず。目蒲さんと私が手札を減らす。
4周目、亜面さんの目元がひきつる。ついにババが亜面さんに渡った。亜面さんがカードをシャッフルして、私に差し出す。私は一番右のカードの上に人差し指を置くと、それをすーっと右から左へ滑らせた。亜面さんが緊張したのは右から三番目のカードに指が触れた時。読みやすい子で良かった。私はそれを避けて、左端のカードを抜き取る。ハートの2。よしよし。
しばらく後の7周目、夕湖が上がってしまう。ババ抜きで負けるのはほとんどないのでびっくり。残りの手札は目蒲さんが一枚、私と亜面さんが二枚だ。ついに亜面さんが焦れて、勝負に出ようと構えた。
「やーだ亜面さん、ずっこいことはダメですよう」
彼女の体は分かりやすくこわばった。私と夕湖はにやりとする。目蒲さんは私の手札から一枚抜き取り、上がり。私も次のターンに亜面さんからペアになるカードを受け取った。
「やー、悔しい!私3位じゃないですかー!」
「晴乃のは一回見たら怖くないからな」
「もう!頭のいい人はだから嫌!」
傷つくなあと笑う夕湖の反対側、打ちひしがれる亜面さんを目蒲さんが笑う。
「慢心でしたねえ?亜面立会人」
「いえ…その、侮っていた訳では」
「どうでしょうなあ。まさかあれにこんな芸当ができるとは思っていなかったでしょう」
「えー、亜面さん、酷いですよー」
「いえ、いえ!ただ、こういう勝ち方をされるのは予想外だっただけです…」
ああ、と納得の声をあげたのは先のゲームで私に引かれる側だった夕湖だった。
「ずっ…と、ババが手元に残っただろう」
「はい」
「焦るよな」
「はい」
「しかもイカサマしようとしてもバレるんだよな」
「はい」
「焦るよな」
「はい。どういうカラクリだったんでしょうか?」
亜面さんが私を見たのにつられるように、二人も私を見る。私がなんといったものかと考えてる内に、夕湖は私に説明させるのを諦めたように口を開いた。
「晴乃は心が読めるんだ」
「いや、そんな大層な事は出来ませんってば」
じゃああれは何なんだ?と夕湖が首をかしげる。亜面さんもわくわくこちらを見ている。私はため息をついた。
「人より表情とか動作とかから察するのが上手なだけです。考えてる事は分かりません」
それだけで目蒲さんと夕湖は今までの色々が納得いったようで、各々頷く。亜面さんは付き合いが浅いだけあって、いくつか疑問が浮かぶらしい。わくわくした瞳で質問してきた。私はそれに快く答えてやる。別に隠し立てするような事はないのだ。