アマドコロを頼りに
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「あ、やっと決壊しましたね」
伏龍がにこにこ笑いながら言った。予想していましたと言わんばかりのその態度が憎らしく思えて、私はギッと彼女を睨む。彼女は臨戦態勢に入りかけた目蒲の肩にそっと手を置いてから、ティッシュボックスを持って歩み寄ってきた。
「なにがおがじい…」
「おかしくないですよー。むしろやっと正常に戻りましたね」
けらけら笑う彼女の脛に一撃与える。うぐ、と可愛くない呻き声を上げながら蹲るのを見て、目蒲は複雑そうに顔をしかめた。何を思ったか、彼女は痛みでぷるぷるしながらも「使ってください…」とティッシュを掲げた。それを奪うように取り上げて、二枚引き出した。
「お前のそういうとこ、大嫌いだ!」
大声を出す。ちょっとスッキリした。でも彼女はどんな顔をしているか。未だ蹲ったままの彼女を見ると、あろうことか、脛をさすりながら笑っていた。さっきよりももっと楽しそうに。
「だから、何がおかしい!…って、こら!」
ガバッと伏龍が抱きついてくる。柔らかな胸が、腕が優しく頭を包んだ。
「私は泉江さんのこと、大好きですよーっ、だ!」
彼女の嬉しそうな、笑いの混じった声が肌に直接伝わる。「そんなになる前に言えばいいのに、意地っ張りめー」と、凄く凄く嬉しそうな声を出す。それがなんとも言いがたく腹が立って、私は鯖折りせんばかりにぎゅっと抱きしめ返す。彼女は痛い痛い!と悲鳴を上げた。
「そういう所がムカつくんだ!言うような関係じゃないだろ!」
だから泉江さん、痛い痛い!伏龍は嬉しそうに痛みを訴える。
どんなに言葉に込めた棘も、彼女には無力なのだ。こいつはそれさえも受け入れてくれるから。どんなに鋭い棘だって、彼女はその柔らかい指でそれをそっと折り取って、咲いた花の美しさを愛でる。今だってそう。私がどんなに刺々しい言葉を放っても、彼女に届いているのはその裏にある安心とか感謝とかであり、それが分かるから彼女はこんなに穏やかなんだろう。そして、私たちだってそれに参っちゃうんだ。分かって貰える居心地の良さに。
「ほら泉江さん、離してくださいよー!」
「…夕湖」
「へ、ああ、夕湖さん?」
「だから、夕湖だって」
「えと、離してください、夕湖」
「敬語も」
「う…離して、夕湖」
「よし」
私は晴乃を解放する。彼女はそっと自分の腰をさすった。
「ところでだ、晴乃」
「なんです…ああ、なあに夕湖」
「泣いたら甘いもの食べたくなったんだけど」
「ああ、それは同感ですねえ。おい、ゼリーあったろ」
目蒲の援護射撃まで受けて、晴乃は憮然とする。
「二人共…私のことお母さんか何かと勘違いしてません?!」
「してないしてない」
「ほら取ってこいって」
もう!とぷりぷり怒りながらも、素直にゼリーを取りに行く彼女に笑いを禁じ得ない。
「誰にでもあんな感じなのか?」
「いつでもどこでも、誰にでも」
目蒲は彼女が消えていったキッチンを眺めながら、そう答えた。
「ふうん…苦手だなぁ」
流石にバレバレだったらしい。目蒲は否定もしてくれず、ただニヤリと笑った。
伏龍がにこにこ笑いながら言った。予想していましたと言わんばかりのその態度が憎らしく思えて、私はギッと彼女を睨む。彼女は臨戦態勢に入りかけた目蒲の肩にそっと手を置いてから、ティッシュボックスを持って歩み寄ってきた。
「なにがおがじい…」
「おかしくないですよー。むしろやっと正常に戻りましたね」
けらけら笑う彼女の脛に一撃与える。うぐ、と可愛くない呻き声を上げながら蹲るのを見て、目蒲は複雑そうに顔をしかめた。何を思ったか、彼女は痛みでぷるぷるしながらも「使ってください…」とティッシュを掲げた。それを奪うように取り上げて、二枚引き出した。
「お前のそういうとこ、大嫌いだ!」
大声を出す。ちょっとスッキリした。でも彼女はどんな顔をしているか。未だ蹲ったままの彼女を見ると、あろうことか、脛をさすりながら笑っていた。さっきよりももっと楽しそうに。
「だから、何がおかしい!…って、こら!」
ガバッと伏龍が抱きついてくる。柔らかな胸が、腕が優しく頭を包んだ。
「私は泉江さんのこと、大好きですよーっ、だ!」
彼女の嬉しそうな、笑いの混じった声が肌に直接伝わる。「そんなになる前に言えばいいのに、意地っ張りめー」と、凄く凄く嬉しそうな声を出す。それがなんとも言いがたく腹が立って、私は鯖折りせんばかりにぎゅっと抱きしめ返す。彼女は痛い痛い!と悲鳴を上げた。
「そういう所がムカつくんだ!言うような関係じゃないだろ!」
だから泉江さん、痛い痛い!伏龍は嬉しそうに痛みを訴える。
どんなに言葉に込めた棘も、彼女には無力なのだ。こいつはそれさえも受け入れてくれるから。どんなに鋭い棘だって、彼女はその柔らかい指でそれをそっと折り取って、咲いた花の美しさを愛でる。今だってそう。私がどんなに刺々しい言葉を放っても、彼女に届いているのはその裏にある安心とか感謝とかであり、それが分かるから彼女はこんなに穏やかなんだろう。そして、私たちだってそれに参っちゃうんだ。分かって貰える居心地の良さに。
「ほら泉江さん、離してくださいよー!」
「…夕湖」
「へ、ああ、夕湖さん?」
「だから、夕湖だって」
「えと、離してください、夕湖」
「敬語も」
「う…離して、夕湖」
「よし」
私は晴乃を解放する。彼女はそっと自分の腰をさすった。
「ところでだ、晴乃」
「なんです…ああ、なあに夕湖」
「泣いたら甘いもの食べたくなったんだけど」
「ああ、それは同感ですねえ。おい、ゼリーあったろ」
目蒲の援護射撃まで受けて、晴乃は憮然とする。
「二人共…私のことお母さんか何かと勘違いしてません?!」
「してないしてない」
「ほら取ってこいって」
もう!とぷりぷり怒りながらも、素直にゼリーを取りに行く彼女に笑いを禁じ得ない。
「誰にでもあんな感じなのか?」
「いつでもどこでも、誰にでも」
目蒲は彼女が消えていったキッチンを眺めながら、そう答えた。
「ふうん…苦手だなぁ」
流石にバレバレだったらしい。目蒲は否定もしてくれず、ただニヤリと笑った。